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2016.11.27

膀胱の全摘手術を拒んだ小倉アナは正しい選択をした

近藤 誠

膀胱の全摘手術を拒んだ小倉アナは正しい選択をした

 今回は、アナウンサーの小倉智昭さんが手術を拒否したという膀胱がんについて検討します。

 膀胱がんの進行度(ステージ)は、大きく3段階に分かれます。(1)肺や肝臓など他の臓器への転移がないと断言できるケース (2)他の臓器に転移している可能性があるケース (3)他の臓器への転移が明白なケース の3つです。

 小倉アナの膀胱がんは、(2)「他臓器に転移している可能性があるケース」になりますが、まずは膀胱がんの症状など一般的なことからお話ししましょう。

 膀胱がんは通常、血尿をきっかけに発見されますが、血の混ざり具合は、便器が真っ赤に染まる、尿を顕微鏡で検査しないとわからない、などまちまちです。

 泌尿器科へ行くと、尿道から内視鏡を入れて検査することになり、イソギンチャクのような“腫瘤”(しゅりゅう)が見つかれば、多くは膀胱がんです。

 ただ膀胱の壁は、上皮を含む“表層”“筋層”“腹膜”の3層に分かれていて、腫瘤がどの層に達しているかで、がんの性質が異なります。

 そこで内視鏡の先端から器具をくりだして腫瘤を切除し、顕微鏡で調べます。

 このとき、がん細胞が表層にとどまっていれば、“表在がん”です。臓器に転移しているケースはなく、“がん”と診断されても、実質は“がんもどき”です。

 これに対して、がん細胞が筋層に入っていれば“筋層浸潤がん”で、転移しているケースがあります。小倉アナは、この筋層浸潤がんになります。

 他方、がんが筋層を超えて、腹膜にまで達していると、ほとんどのケースで他の臓器に転移しています。

 がんが腹膜に達していなくても筋層に入っていれば、日本では、ほぼ全員が“膀胱全摘の手術(膀胱全摘術)”をすすめられます。

 膀胱全摘術では、排尿のための新たな道をつくる“尿路再建術”を同時に実施します。お腹に開けた穴から尿をだす方法が代表的で、穴の周囲の皮膚にはりつけた“集尿袋“に尿を貯め、2時間おきに袋を空にします。

 尿もれが気になるし、袋をはりつける接着剤で皮膚がかぶれて、痛がゆいけれども掻くこともならず……等々、大変なストレスになります。

 小腸を切り取って代用膀胱とする再建法などもありますが、いずれにせよ患者さんの不満は大きく、日常生活の質はいちじるしく低下します。

 また全摘術では、膀胱の周辺にある神経を切断するため、男性は勃起と射精の機能を失います。

 むかし、僕が診た中年男性は、膀胱全摘術をうけたあと、若い愛人がいたためか、10センチほどのプラスチック(?)でできた補強用の棒をペニスに埋め込んでいました。愛人がいるのも大変だなあと同情するとともに、手術の前に僕を訪ねてくれていたら……、と残念でたまりませんでした。

 しかも彼は、まもなく臓器転移が見つかり、結果的に亡くなったので、踏んだり蹴ったりだったといえます。

 

※第40回へ続く。12月4日(日)公開予定です。

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