毎日を1%ずつ新しく生きる! 刺激と感動のマガジン&ストア

★がついた記事は無料会員限定

2016.11.11

なんだか面白いので、まだ続けるよエッセイ27

こんな人畜無害な顔した僕が、機上ではキケンな男――!?

歌う旅人・香川 裕光

こんな人畜無害な顔した僕が、機上ではキケンな男――!?

飛行機に乗るのが苦手な人はたくさんいますね。
でもそういう人に限って、仕事で飛行機の移動が必要なことが多いもの。
機上の困ったエピソードは、結構みなさんお持ちのようで・・・。

*   *   *
エッセイ
テロリスト

 飛行機に乗るのはあまり得意ではない。
 もちろんすごく速いし、意外と格安で乗れちゃうし、機内もなかなか快適だ。
 このエッセイを書きながら、なんと僕は、上空11000メートルを時速700キロくらいで移動し続けている。
 現在は、バンドでハワイツアー真っ最中。
 成田からホノルル空港へ、ひとっとびだ。
 しかし、どれだけ頭で理解していても、この大きな鉄の塊が、この窓から見える、あの小さな羽だけで宙に浮くということが信じられない。
 これまで生きてきた30年の経験から想像すると、これだけの塊を飛ばすためにはこの5倍くらいのサイズがないと不可能なはずなのだ。
 現に鳥だって、体の何倍もある羽を広げて飛んでいるじゃないか。
 無論、僕は飛行機を作ろうと思ったことなんて一瞬もないし、ものすごく賢い方々が命懸けで設計しているのだから、飛ぶもんは飛ぶのである。
 結局、「文明ってすごい!」ってことなのである。
 それでも僕はとても小心者で、飛行機に乗っている間は心配事が尽きず、急にテロリストでも現れて、ハイジャックされたらどうしよう……。なんて、常にハラハラしていたりもするのである。

 沖縄へ移動する際、僕は必ず飛行機で行くことにしている。バーゲンの時期にうまく買うと、片道3000円くらいで関西→沖縄までいけちゃったりするのだからお得だ。広島から向かうときも、わざわざ関西空港まで遠回りしてから、格安の飛行機で沖縄へ飛ぶくらい、徹底している。
 いったん沖縄から遠ざかって飛行機に乗るというのに、通常の半額以下で乗ることができるというのは、非常にありがたい。
 しかし、格安の航空券だと、荷物の制限が厳しかったりもする。楽器、旅の荷物、物販用のCDやグッズをトランクケースに詰め込むと、すぐに重量オーバーしてしまうのだ。
あるツアーでのこと。案の定、重さ制限を超過してしまった。
 追加料金を払うと、結局そこそこの金額になってしまうので、「ほんの少しの超過ですし、カバンから荷物を取り出して、もう少し軽くできませんか?」とCAさんが提案してくれた。
 なるほど、手荷物で分散すればいいのか!
 とりあえずトランクケースの中から、重そうな荷物を探してみる。
 すると、ギターを演奏する際に使用する、"プリアンプ"という機材をしまいこんでいることに気がついた。
 これは、小さ目のお弁当箱くらいのサイズで、鉄でできている。重さも1キロちょっとくらいある。「これだ!」と思って取り出すと、ちょうど規定内の重さに収まってくれた。
 よかったよかった。これで追加料金を払わらなくていいようだ。
 しかしプリアンプを取り出したはいいが、さすがにポケットには入らない。適当な大きさのカバンもないし、仕方なく、そのまま小脇に抱えて搭乗した。

 皆さんご存知のとおり、手荷物は頭上のBOXにしまえるけれど、プリアンプは精密機械だし、壊れてもいけないので、膝の上に抱えたまま離陸を待つことにした。
 それにしても、随分座席が狭い。隣の人と肩と肩が触れ合うほどだ。
 しかも、僕の隣に座ったのは、大柄な外国人の方だった。
 黒人で、まるでボビーオロゴンのようにがっちりしている。ずいぶん強そうだ。
 僕とボビー(仮)を乗せた飛行機は、轟音とともに離陸し、あっというまに雲の上に出た。
 真っ青な空は、まるでCGで描かれたのようにクリアで、果てし無く続いている。
 ふと気づくと、さっきからボビーの様子がなんだかおかしい。
 明らかに僕のことを警戒している態度なのだ。
 なんなのだろう。ずっとこちらを睨むように見ている。

 なんだかドキドキしてきた、緊張して、脂汗が出る。
 もしかしたらこの人、テロリストではなかろうか。

 ボビーの視線は、僕の膝上に注がれていた。
 そこには僕の"プリアンプ"がある。

 "プリアンプ"は、小さなツマミとスイッチがたくさんついており、様々な音域を細かく調整しつつ音作りができるという優れものだ。茶色い四角形で、重厚な精密機械感もある。ぱっと見はそう、"時限爆弾の起爆装置"のようだ。
 きっとボビーは、僕のことを起爆装置をもったテロリストじゃないかと疑っているのだ!

 NO! NO! NO‼︎ 
 ボビーよ、それは誤解だよ。これはとても安全な装置だし、テロどころか、むしろ世界を平和にするためのものだよ。
 だって、音楽は世界を変えることができるんだ。
 さぁ! 言語も文化も国境も超えて、ハグでもしようよ。ラブアンドピース。
 ……と英語で説明したかったが、無理だったので諦めた。

 うっかり下手に動くと、取り押さえられることになりそうなので、お行儀よくじっとしていることに決めた。
 僕はボビーにしっかり見張られたまま、沖縄へたどり着いた。“プリアンプ”という名のオシャレな起爆装置も無事だ。
 結果、快適な旅だったが、次回から気をつけなければならない。

 余談だが、僕の先輩ミュージシャンは、同じような場面に出くわした際、トランクケースの中に詰めている服を取り出し、限界まで重ね着して、機内にたくさんの衣類を持ち込むことにしているんだそうだ。
「パンツは7枚までは重ねて履けるよ」
 とのこと。
 格安に飛行機に乗りたい方に、是非推奨したい裏ワザだ。テロリストと警戒されるよりは、いいんじゃないか。
 

★がついた記事は無料会員限定

記事へのコメント コメントする

コメントを書く

コメントの書き込みは、会員登録とログインをされてからご利用ください

おすすめの商品
  • ピクシブ文芸、はじまりました!
  • 文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作!
  • 無理しないけど、諦めない、自分の磨き方
  • 時短、シンプル、ナチュラルでハッピーになれる!
  • ビジネスパーソンのためのマーケティング・バイブル。
  • 有名料理ブロガー4名が同じテーマでお弁当を競作!
  • ドラマこそ、今を映すジャーナリズム!
  • 砂の塔 ~知りすぎた隣人[上]
  • 小林賢太郎作品一挙電子化!
  • あなたがたった一人のヒーローになるためには?
文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作!
ピクシブ文芸、はじまりました!
エキサイトeブックス
今だけ!プレゼント情報
かけこみ人生相談 お悩み募集中!