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2016.11.12

第27回

練習スタジオは怖くない 前編

コミック:たかしま てつを/文:納富 廉邦

練習スタジオは怖くない 前編

エレキギターを弾いていて一番気持ちいい瞬間は、大きな音でギャーンとコードをならす時だ。これはもう、誰がなんと言おうと譲れない。実際、ロックミュージックに於いては、ギャーンから始まる曲がやたら多いわけで、それはプロも聞き手も、ギャーンとディストーションが効いて歪んだ音のコードが鳴るのがカッコいいと思っている証拠ではないかと思うのだ。ビートルズの「ハード・デイズ・ナイト」、T REXの「20th Century Boy」、キッスの「ロックンロール・オールナイト」、キンクスの「Till The End of The Day」などなど、ギャーンと言って始まる名曲はいくらでもあるのだ。

しかも、コード一発だから簡単だ。だから、頻繁に「ギャーン」とやって快楽に浸りたいのだけど、これを実際にやろうとすると、意外に困難なことに気がつく。目の前に現実の壁が立ちはだかるのだ。まず、この気持ちよさを味わうには、大きな音を鳴らす必要がある。ヘッドフォンでは、体が震える感覚が味わえないのだ。それは「シン・ゴジラ」を試写室で見るのと、IMAX 4DXのスクリーンで見るくらいの違いがある。さらに、ギターを抱えて立って、思いっきり腕を振り下ろして鳴らす必要がある。この。ギターが持つ「エモーションとフィジカルが一致する感じ」が味わえるからこそ、「ギャーン」が気持ちいいのだ。この肉体的な快感が得られやすいのもエレキギターの魅力の一つ。個人的に、ハードロックの快感の多くは、結構演奏者が味わう快感だったりして、だからジャンルとして廃れてるんじゃないかと思っているけれど、怒られそうなので内緒にしといてね。

デカい音をオーバーアクションで鳴らすなんて事は、普通、自宅では難しい。サックス吹きのように、河原に出て思いっきりブローするなんて真似も、電気が必須なエレクトリックギターには出来ない。ということで、その快感を味わうためにも、一度、スタジオに入ってギターを鳴らしてみてはどうか、というのが、今回の本題。バンドを組んでなくても、一人や二人でも、ふらっとスタジオに入っても良いというのは、意外に知られてはいないけれど本当の事なのだ。

しかし、なぜかスタジオは初心者にとって敷居が高い。たかしま君など、怖い人の溜まり場だと思っていたらしい。中学や高校の頃にバンドを囓っていた人は、そういう事は思わないようだけど、そういう人はそういう人で、若い人が行くところに、年食った自分たちが行くのは恥ずかしいと思うらしい。どっちも誤解だが、どっちも気持ちは分かる。私にしても。未だに初めて行くスタジオは微妙に怖かったりするのだ。何故か。

よく考えれば、練習スタジオもカラオケボックスも大して違いはないのだ。個室に入って、大きな音を出す。時間単位でお金を払う。機械を操作しなければならないのも同じようなもの。違うのは、中で飯が食えないことと、片付けが多少面倒なことくらい。あと、スタジオに行く場合は楽器を抱えていることが多いので、予約が必須だということくらい。では何故、スタジオは怖いのだろう。

間違いなく言えるのは、演奏技術に自信がないということなのだ。楽器が上手い人でスタジオが怖いという人はあまり聞いたことがない。「私程度の腕で、こんな立派なスタジオの時間と空間を占有してしまって良いのでしょうか?」ということなのだ、多分、きっと。このあたりは、楽器屋で試し弾きするのが怖いとか、人前で喋るのが怖いとか、そういうのに近いのだけど、そこはそれ、年を取るというのは、そういうのが平気になることのはずなのだから乗り切ろう。競馬の競走馬が年を取ると「ズブくなる」と言われる。あれ、要するに図々しくなって、ジョッキーの指示に俊敏には従わなくなることなのだけど、それこそが年を取るメリットじゃないかと私は思うのだ。人の言うこととか、一応気にはしつつも、過敏には反応しなくなること。人目とかが段々気にならなくなること。年取ってからギターを弾くにあたって、このズブさこそ、大きな武器になるはずだと私は思っている。

ということで、勇気とズブさでスタジオに立ち向かおう。ただ徒手空拳ではやられてしまうので(誰に?)、予備知識は入れておく。まずは、スタジオに行くのに必要なこと。それは、どのスタジオに行くか決めること。とりあえず、これは「行きやすいところ」が一番いい。バンドをやるならメンバーが住んでいる場所を考慮する必要があるが、個人練習なら、せいぜい相方(いれば)と相談するくらいでいい。ただ、ギターを抱えて歩くのが恥ずかしいなら、なるべく近所で駅から近くて、あまり都心じゃない方がいいかもしれない。実際、渋谷とか新宿とかのスタジオは予約も取りにくいし、他のバンドの人とかと顔を合わせることも多いけれど、阿佐ヶ谷とか宮前平とかのスタジオは、いつでも空いているし、何だか気分も楽なのだ。

スタジオは通常、いくつかの部屋があって広さで料金や機材などが決まっている。個人練習の場合は、狭い部屋で構わないけれど、大きな部屋で大きな音を出すのは気持ちいいので、2人以上の場合は大きな部屋を取ってみるのも面白い。この辺の感じは実はカラオケボックスと同じだから想像がつくのではないかと思う。個人練習、カラオケで言えばヒトカラの場合、スタジオは当日しか予約できない場合が多い。空きがあれば、一人または二人なら安価で貸すよ、というサービスなのだ。だから、多少お金がかかっても良いなら、普通に予約すれば良いが、料金がかなり違うので、個人練習で入る方が良いと思う。大体1時間2000円くらいのところ、500円で入れるのだから、随分違う。通常、バンド4人で入れば、1時間2000円でも一人500円で済むけれど、それを一人で払うのは何となく馬鹿馬鹿しいし。

個人練習の場合、当日か前日予約が普通だが、時々、1週間前から予約できるスタジオもある。そのあたりは、スタジオのWebサイトなどに書かれているのでチェック。私が気に入っている阿佐ケ谷のstudio zotは、個人練習が1週間前から予約できるのが有り難い。料金は1時間1人500円、2人950円だ。中央線沿線というか、中野高円寺阿佐ケ谷は、おっさんがギター抱えて歩いていても、特に違和感のない風土だから気も楽だし、駅からスタジオに向かう途中にピスタチオのジェラートが食える店があるのも嬉しいのだ。

かつて、練習スタジオは何だか、とてつもなく汚いところとかもあって、スタジオ内で煙草吸い放題だったり、飲食も自由だったりして、それはそれで慣れると楽しい場所だったのだけど、今では、スタジオ内禁煙は当たり前だし、掃除も行き届いていて、スタジオスタッフの方々も若い人が多くて爽やかだ。バンドやってる人たちも、昔みたいな、いかにも不良です風は本当にいなくなった。ロビーも明るかったり、エントランスがちょっとしたカフェみたいになってたり。出来れば、誰か誘って二人で行ければベストだけれど、もちろん一人でも怖くはないはず。

何か忘れものしても、大体の機材や道具は借りられるし、弦が切れて自分で張れなければ、言えば張ってくれたりもするのだ。ケーブルもカポタストも借りられるし、有料でギターやエフェクターだって借りられるから、実は手ぶらで行くことさえできる。飲んだ帰りに、ちょっと弾いていくか、なんて、昔のバッティングセンターみたいな使い方だってできるのだ。

最後の難問は、予約が基本、電話でしか受け付けてもらえないことで、これも敷居の高さになっているけれど、そこも大人の経験で乗り切ろう。食事の予約をするのと同じだから。時間と個人練習であることを告げれば大丈夫。ほら、レストランの予約と何も変わらない、と、自分に言い聞かせて電話すればきっと大丈夫。しかしレストランの予約もそうだけど、あれ、何故、いつまで経っても慣れないというか、どうしても緊張してしまうのだろうか? メールやWeb予約に慣れ過ぎているからというより、電話予約がみんな苦手だったからWeb予約が流行したというのが正解なのだろう。不思議だが、不思議がっていても仕方ないので、思い切って電話するのだ。

そして次回、いよいよスタジオに入る。怖くないから付いてきてねー。

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