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2016.11.10

「長谷川アナの透析患者バッシングに見る、医療の現実」第2回

日本において医療費削減がうまく進まない、驚くべき理由

岩波 明

日本において医療費削減がうまく進まない、驚くべき理由

日本の医療費や介護関連のコストは急増しており、大きな財政負担になっていますから、本来、すぐにでも見直さなければいけないものです。
しかしここで、精神科医・岩波明先生は「行政の努力は、焼け石に水」と言っています。いったいどういうことになっているのでしょうか?

*   *   *

 長谷川氏のブログについて、どういう点が問題だったのだろうか。あらためてここで振り返ってみたい。
 近年、わが国において、医療費や介護関連のコストが急増しているのは確かな事実である。これが国家財政の大きな負担となっているのもその通りで、現状では解決策は見いだせていない。
 この点については、長谷川氏の主張に、ある程度はもっともな点があるわけである。事実、行政は医療および福祉のコストを削減しようと、さまざまな方策を苦心して行っている。たとえば、医療機関における電子カルテの導入を義務づけたのはその一つである。
 実を言えば、カルテの電子化は、保存・管理がしやすいということが除けば、医療機関にとってほとんどメリットはない。それどころから、さまざまな医療関係の文書をスキャナーで読み込む必要があり、かえって手間のかかることも多い。
 大病院では、電子カルテの導入に数10億のコストがかかる金食い虫のシステムなのである。保守点検の費用も莫大なものだ。パソコンの操作ができないと言って、診療所を廃業した年配の医師も存在している。
 それにもかかわらず、行政が積極的に「カルテの電子化」を促したのは、医療内容の管理が、紙媒体のものと比べて、はるかに容易になるからである。たとえば、重複して複数の病院を受診している患者について、電子カルテのデータがあれば、同種の薬剤が処方されていないかチェックすることにより、過剰な処方の規制が可能となる。臨床検査の回数制限なども容易になる。
 現在、すでに行政は、個別の患者に処方された薬について、毎月審査を行ない、彼らの基準で処方量が多いとみなした薬物に対して、保険診療を認めない通達を医療機関に出している。たとえば、睡眠薬の量や種類が多い場合、その一部が強制的にカットされる。この通達は一方的なものであり、多剤を併用する正当な理由を主張しても受け付けてくれることはない。
 けれども、こうした行政の「努力」は、ある意味「焼石に水」のところがある。医療費の増加は一向にとどまるところがない。というのは、一方では、行政自身が医療費のコストを吊りあげる役割を担っているからである。
 どういうことかと言えば、医療行為の保険点数も、薬の価格も、すべて決定しているのは厚生労働省なのである。つまり行政当局は、新薬を含めた先進的な医療を可能とするために、高額の保険点数を定めているのもまた事実なのである。
 矛盾しているようにも見えるが、一部に高い保険点数を認めつつも、彼らは医療費を抑えるために、前述したカルテの電子化を含めてさまざまな医療費の削減策を展開している。
 厚生労働省の地域事務所による、病院やクリニックに対する保険診療に関する「指導」や「監査」も激烈である。
 保険診療上、適正でない医療行為に対して返還金を求めることに加えて、さらに彼らが「悪質」と判断した場合、医業停止というペナルティが下ることもある。実際、数年前には、ある大学病院の分院が業務停止となっている。個人経営のクリニックでは、この指導の後に院長が自殺したケースさえもあるが、医療費の抑制という点には焼け石に水なのである。
 こうした点について、元ライブドア代表の堀江貴文氏は、医療費の問題は現在の保険制度にあるのではないかと指摘している。

 日本では突然がんの治療費を二倍にしても許されたりする。患者は一部しか負担していないし、もちろん医師も損をするわけではない。治療費が上がったぶんは、結局、国民の税金で賄われる。でも、あまり「払っている感覚」を持っていないんじゃないだろうか(『むだ死にしない技術』堀江貴文 マガジンハウス)。 

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ブラックボックスのような医療費問題。次回でこのテーマは最終回です。

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