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2016.11.09

「長谷川アナの透析患者バッシングに見る、医療の現実」第1回

「自堕落な生活、暴飲暴食、医師の注意を無視。結果、人工透析患者になった人に税金を使うな」という長谷川アナの主張

岩波 明

「自堕落な生活、暴飲暴食、医師の注意を無視。結果、人工透析患者になった人に税金を使うな」という長谷川アナの主張

長谷川アナによる「透析患者バッシング」は、大きく炎上しました。
バッシングするのは簡単ですが、彼の意図はなんだったのか?
『他人を非難してばかりいる人たち ーーバッシング・いじめ・ネット私刑』の著者である精神科医の岩波明さんと、一度冷静に長谷川アナの意図について、考えてみるところから始めてみましょう。

     *   *   *

 「不寛容」という現象の中で、もっとも深刻で根深いものは、病気の人や障害者に対する差別やバッシングである。平成28年6月に、多数の障害者が犠牲となった「津久井やまゆり園」の殺傷事件においては、知的障害者に対する究極的な否定の気持ちが加害者の男性にあったことが、事件の根底に存在していた。
 今回は、フリーアナウンサーである長谷川豊氏のブログ炎上事件について考えてみたい。長谷川氏本人は強く否定するかもしれないが、やまゆり園の加害者にみられた「障害者に対する否定や拒否」と、どこか同じような印象を受けてしまう。
 この炎上事件をご存じない方のためにざっくり説明すると、長谷川氏は、自身のブログの中で、「生活習慣によって透析患者になった人は、自己責任によるものなのだから、これを保険診療で救済する必要はない。死なせても構わない」といった内容の主張をした。
 糖尿病や高血圧などのいわゆる生活習慣病(成人病)は、一部に遺伝的要因の大きい疾患もあるが、かなりの部分は、病名のとおり個人の生活習慣に基づくものである。さらに、こうした生活習慣病に対する医療費は、一回一回の額は少ないとはいえ、数百万人という膨大な数の患者がいるため、相当な額になる。そこで、長谷川氏はこのように言ったわけだ。
 しかし、長谷川氏の持論に従うなら、不摂生な生活習慣による「病」はすべて「自己責任」で対応しなければならなくなる。
 精神科領域でも、同じような問題が存在している。とりわけ、アルコール依存症の問題が大きいだろう。
 アルコール依存症は、長年にわたり多量の飲酒を続けることが原因で発症する。これは明らかに本人の意思で飲酒をしているわけであり、長谷川氏の意見に従うと、国内に少なくても100万人以上存在するアルコール依存症は、税金をかけて医療で救うべき疾患ではないこととなる。飲酒による肝障害や食道静脈瘤などが生じても、保険診療では対応すべきではないという話になる。
 このように、治療すべき患者を“選別”することに、いくらかでも妥当性はあるのだろうか。あるいは現実的に、医療の現場において、治療すべき患者とスルーする患者を区別することは可能なのであろうか?

 平成28年9月19日、長谷川氏は自らのブログに、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」という過激なタイトルで、腎透析患者に関する記事を掲載した。
 長谷川氏によれば、人工透析患者のほとんどは「自業自得」の生活習慣が発病の原因であり、さらに、腎透析患者の「8~9割」は「『自業自得』の食生活と生活習慣が原因」だという。「バカみたいに暴飲暴食を繰り返す」「腹は出る、腰は痛める」ということの末に、糖尿病を発症し、その結果として透析患者になるというパターンが「かなりの割合に上る」と批判している。
 さらに、人工透析患者の多くは「身体障害者1級」に認定されることから、「公共交通機関の利用料の半額」「タクシーの初乗運賃の無料チケットが貰える」「高速道路の利用料金の半額」といった優遇措置も受けられる。加えて、透析治療を通じて医療機関に流れ込む医療費は「金の成る木」であり、透析を中心にやっている病院は「大変なもうけ」を毎月出していると切り捨てた。
 この長谷川氏の発言に対して多くの批判的な声があがったが、長谷川氏はひるむことなく、翌日のブログで、以下のように、同様の主張を繰り返した。
「自堕落な生活を送り、暴飲暴食を繰り返し、身体検査でも引っかかり、医師から繰り返し注意されているにもかかわらず、何一つ改善せずに、何一つ真剣に聞き入れずに、繰り返し更なる暴飲暴食を繰り返し、さらに医師たちから厳重に注意されても、運動一つほとんどせずに...挙句に、人工透析患者になったハナクソ同然のバカ患者」に「税金なんて使うな!」
 さらに、同日放送の情報番組「バラいろダンディ」(TOKYO MX)でもこのブログに言及して、次のようにコメントしている。
「日本の保険料の払い方がずさんでしょっていうことで、自堕落な生活で人工透析やってる連中なんか全員殺せって言ったら燃えた」


ネット上では、強い文言によって拡散が狙える。しかしやりすぎると……

 長谷川氏のこの記事に対して、「怒りで手が震えている」「ヘイトクライム思想」など、ネットで非難が集中した。けれども、長谷川氏は怯むことなく、批判するネットユーザーに対して「頭スカスカのコメントも届いています」などと応戦、挑発した。
 ここから長谷川氏の主張は、腎透析に留まらずに、次のように、医療や福祉政策全般に及ぶものとなった。

日本人、もっと怒れよ!
霞が関の連中、もっと叩けよ!
永田町のバカボンたちをもっと責めるべきです。
「どうせタダだし~」といって、お茶のみに病院に行ってるボケ老人になんて医療費全額負担させるべきです。そして、その分のお金を、頼むから子育て世代に回してやってほしい。

 長谷川氏の発言に対して、敏感に反応したのが、彼が出演していたテレビ番組だった。このブログ炎上事件の直後、テレビ大阪「ニュースリアルFRIDAY」、読売テレビ「上沼・高田のクギズケ!」の降板が決まり、その後本人は謝罪の弁を述べたのだが、その他の番組もすべて同様の扱いとなった。つまり長谷川氏は、マスコミから切られたのである。
 いったん謝罪はしたものの、実際のところ、長谷川氏は確信犯であった。「あのタイトルの付け方をしたらイタズラに悪用される可能性はある。で、それを散々利用されてゲームにされた」と述べており、被害者であるかのような物言いをしている。大きな騒動になっても、自らの発言内容にさほど問題があったとは感じていないように感じる。

 長谷川氏は、JCASTのインタビューにおいて、「殺せ」という過激な言葉を使用した真意について、いくらかの反省とともに次のように述べている。

ネット上では強い文言によって広める手法があり、僕は表現の1つとして全て否定されるわけではないと思っている」
「殺していいとは当然誰も思っていない。でも、それくらい怒りと強い思いを持って臨もうという考えで付けた」
「一人でも多くの人に拡散してほしくて付けたのですが、やはりこれは非難が来て当然。タイトルだけ見て誤読されることも、悪用されることも予測しきれなかったのは完全に僕のミスです。いつもどおり『長谷川またふざけたこと言ってるよ』って拡散してもらおうと思ったら、多くの人に迷惑をかけてしまった

 
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こちらのテーマは、全3回で、3日連続掲載します。明日、明後日をお待ちください。

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