毎日を1%ずつ新しく生きる! 刺激と感動のマガジン&ストア

★がついた記事は無料会員限定

2016.11.12

巨人・大田のトレードはコーチの責任

広岡 達朗

巨人・大田のトレードはコーチの責任

 巨人が外野手・大田泰示を日本ハムとトレードした。
 巨人は大田と公文克彦投手、日ハムからは吉川光夫投手と石川慎吾外野手の、2対2のトレードである。
 大田は平成20年(2008年)のドラフト1位で東海大相模高校から入団した。毎年「将来の4番候補」と期待されたが、今季も62試合に出場して打率.202、4本塁打に終わった。

 私はこのトレードのニュースに愕然とした。歴代の監督・コーチに「大田を大成させるために、あらゆる努力をしたか」と問えば、口をそろえて「した」というだろう。しかし、私はそうは思わない。

 私は前から「大田は化ける」と思っていた。なぜかというと、背丈があって顔もいい。肩もよくて、走れて、全部そろっているが、バッティングのタイミングというものを知らない。それだけだった。
 当たればホームランになるということは、打てるということだ。これほどの逸材をものにするだけの根気が、巨人のコーチ陣にない。私はヤクルトと西武で監督を務めた経験から、選手を育てるには「選手のやる気とコーチの根気」が不可欠だと思っている。この持論からいえば、大田の努力も足りないが、ドラフト1位の大器を8年かけても育てられなかった監督・コーチの責任は大きい。


大田の欠陥はタイミングの取り方

 大田の欠陥は分かっている。馬鹿正直に、「球が来たら左足を踏み出し、バックスイングしてから打つ」という理論どおりにバットを振っている。これでは一度構えたバットを、球が来てから引いて打つことになるから間に合わない。私が「タイミングの取り方を知らない」というのはこのことだ。

 例えば外野手は、打球を捕ったらすぐ投げなければ間に合わないが、分解写真で見ると、前足を踏み出してからテークバックして投げている。しかしこれを一連の動きのなかで素早くやるから、流れるようなスローイングになっている。
 打者もスロー映像で見れば同じで「前足を踏み出してから打ちに行く」のだが、コーチが動きを分解して教えるから、選手は分解写真のように打とうとしてタイミングが遅れてしまう。
 イチローは、投手がモーションを起こすとバットを高く構え、ボールが来たらそのまま、バックスイングをしないで打っている。そうでないと、メジャーの速くて重い球を打てないからだ。
 あの王貞治も同じだ。右足を上げてバットを耳のあたりで構えて待ち、ボールが来たら無駄な動きをしないで打った。
 大田の場合も、コーチが「それではだめだ。こうしなさい。そうすれば打てる」と教えればいいのに、その自信も説得力もない。
 

ホームベースに寄って立て

 私だったら、まず大田が縛られている分解写真理論を忘れさせる。そのために打席の一番前(ベース寄り)に立たせ、バックスイングをしないで打たせる。
 そうすればボールに差し込まれることがないし、投手が勝負球を投げる外角が真ん中になる。そのかわり内角が打ちにくくなるから、ファウルでかわすか、内角球も打てるように練習すればいい。もっとも、打者がベース寄りに立てば投手も死球が怖いから、内角には投げにくくなる。

 大田が打撃理論に縛られているように、野球には理論がある。理論を理解するだけでうまくなるなら東大の選手が一番だ。しかし頭で覚えた理論を実践するために練習がある。
それが理解できなければ、大田も壁を乗り越えられないだろう。
 日ハムが大田を獲ったのは「まだ化ける」と見たからだ。大田が日ハムで打てるようになったら、いいコーチがいたということになる。そして巨人には、将来の大砲候補を8年かけても育てるコーチがいなかったことになる。
 

巨人はトレードやFAより育てて勝て 

 トレードといえば私がヤクルトの監督のとき、松園オーナーから「私はトレードは嫌いだ。縁あってドラフトでうちに来た選手を育ててくれ」といわれた。
 ついでに「巨人には勝たなくていい。ヤクルトの商品を買ってくれるお客さんには巨人ファンが多いから、巨人を負かすとヤクルトが売れなくなる」といわれたのにはまいったが、「トレードで強くなるより、ドラフトで獲った選手を育てろ」という松園オーナーの考えは正しい。
 巨人は高橋新監督でリーグ優勝を逃し、V奪回を目指して再建を急いでいる。大田のトレードを皮切りに、日ハム・陽、オリックス・糸井、西武・岸、DeNA・山口ら大物ぞろいのFA市場にも手を出すだろう。
 しかし「育てて勝つ」広島と日ハムの教訓に学ぶことを忘れてはならない。

 

★がついた記事は無料会員限定

関連書籍

広岡達朗『巨人への遺言 プロ野球 生き残りの道』
→電子書籍はこちら
→書籍の購入はこちら(Amazon)


電子書籍のみ!
読みどころ9章を抜粋した、ダイジェスト版を100円で発売中
→購入はこちら


生原伸久『東京オリンピック野球復活・陰の立役者 アイク生原の知られざる生涯』
→試し読み・電子書籍の購入はこちら(幻冬舎plus)
→電子書籍の購入はこちら(Amazon)

2020年の東京オリンピックで、3大会ぶりに野球が追加種目として復活する。
野球が初めて国同士の対戦として五輪種目に採用されたのは1984年、ロサンゼルス大会のことである。
その2年前、ロス五輪での野球競技実現に情熱を燃やした一人の男がいた。
27歳で単身渡米、大リーグ・ドジャースの雑用係からオーナー補佐に登りつめた日本人、“IKE”とはいったい何者だったのか? 55年間の人生すべてを野球に捧げた、その知られざる生涯に迫る。

記事へのコメント コメントする

コメントを書く

コメントの書き込みは、会員登録とログインをされてからご利用ください

この記事を読んだ人にはこんな記事もおすすめです
  • 俺はまだ、神に愛されているだろうか?
  • 二人の“ハル”が、あの3月11日、東京で出会った——。
  • 希望が芽吹く傑作長編
  • 「上から目線」の憲法を、思わず笑い転げそうになる口語訳にしてみました。
  • 数字の苦手な人でも飛躍的な成果を上げられるノウハウを開陳!
  • 矢三郎の「阿呆の血」が騒ぐ!
  • 麻生幾、浦賀和宏、小路幸也らによる書き下ろしミステリー小説が100円で発売!
  • 「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」
  • 夫との最後の日々が教えてくれた、人生の真実。
  • あの子は、私の子だ。 血の繋がりなんて、 なんだというのだろう。
麻生幾、浦賀和宏、小路幸也らによる書き下ろしミステリー小説が100円で発売!
希望が芽吹く傑作長編
エキサイトeブックス
今だけ!プレゼント情報
かけこみ人生相談 お悩み募集中!