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インカメ越しのネット世界

2016.10.24 公開 ツイート

第1回

自撮り女子が見る、インカメ越しのネット世界 りょかち

はじめまして、りょかちです!

東京に来て、7ヶ月。働き始めて、7ヶ月。

ただでさえ環境が大きく変わる期間に、たくさんの稀有な体験をした。

WEBの記事にたくさん掲載された。ネットラジオに出演した。Twitterのフォロワーが1000人単位で増えた。時々見知らぬ人から、「自撮りの人!」「いつもTwitter見ています!」と言われるようになった。

自撮りをはじめたのは去年11月。たまたまうまく撮れた自撮りをTwitterにアップしたら反応がよかったので、定期的にあげるようになり、いつのまにかWEBの記事などに載せてもらえるようになっていた。

自撮りの自分は「アバター」だ

私にとって自撮りは、「アバター遊び」だといつも言っている。

ゲームなどで最初に設定する、自分を表すキャラクターである「アバター」。自分に似ているけれど、自分じゃない。自分の理想を着せているけれど、自分じゃない。仮想の世界を自分として生きてくれているけれど自分じゃない。

自撮りで撮れた自分はまさに私にとって、そんな「自分みたいで自分じゃない」存在なのだ。

2008年にTwitterが日本に上陸してから8年。SNSのある生活が体に馴染みきった生活になったといえども、SNSはリアルライフに程近い仮想現実だ。みんな自分の情報を制限して、仮想現実の中の自分を生きている。

「自撮りの人」として少しだけ知られている私もまた、仮想現実を生きる「アバター」である。本当はただの、新卒でIT企業に入ったひとりのOLなのだ。

分かり合えない「新しい世代」の私

「りょかちって新世代って感じするよね」
「僕らの時代とはちょっと違うタイプがIT企業に入ってるんですよ」

酔うと半分くらい言われた言葉を忘れてしまう人間だけど、最近呑み会で言われてはっきりと覚えている言葉たち。私が自撮りに関する記事を出し始めた頃に言われたことを記憶している。

インターネットはまだまだ「新しくて難しいもの」扱いだけれど、意外とその歴史は長い。初期のWEBサイトやインターネット上のコミュニティでの青春を語れる人達はもう30歳を超えたおじさんになっているのだ。

私はその言葉をかけてくれた人たちが大好きだから、少々拗ねてしまった。懐古主義は強烈なコミュニケーション。一緒に「懐かしい」と声を揃えれば、なんか仲良くなった気がする。だからこそ、新しくてわかりにくいものには線を引かれがちなのかもしれない。わかりにくいものを理解しようとするよりも、わからないままわからない同士達と昔話を語り合っていたほうがずっと簡単に楽しい時間が手に入れられるもんね。

私は「新世代」で、「僕らの時代とは違う」。私を蚊帳の外にして、昔のインターネットを語って仲良くしている人たちを見ながら、「安易に懐古主義してればいいじゃん、ばーかばーか」と思っていた。

だけど。

最近、私の自撮りへの考え方に関する記事がたくさん世の中に出るようになってから、心に残ったことがある。それは、「なんかわかる気がする」「共感できる」「理解できる」と、たくさんの人が言ってくれたこと。その中には、もちろん私と同世代の女の子も多かったけれど、私が生きている世界からは遠く離れた人も多かった。

自分から遠く離れているのは、SNSで知られているなどといったソーシャル上での距離だけでなく、年齢も住んでいる場所も、生活スタイルも含んでいる。

全く違う世界で生きてきた人が、私の考え方に共感してくれている。そしてそれを声にして世の中に発信してくれている。私はそれだけで感動してしまった。

世代を超えて、共感できる「懐かしインターネット」

なぜ、私が「新時代」「僕達とは違う」と言われて寂しい思いをしたか。それはきっと、なんとなく昔のインターネットに私が「共感できる」からだ。

夜中にこっそりつないだ重すぎる回線の話。ヒヤヒヤしながらリンクを踏んだ話。遠く離れた好きな人と連絡をとっているだけで幸せに眠れた日の話。顔も見えない人のネット上の集まりが心のどこかで救いになっていた話。

自分もどこかで体験したような気がする。とても共感する。テクノロジーが進んでも、それと生きる私たちの体験は、本当はどこかでつながっているのだ、きっと。知っているのに、なんとなくわかるのに、「この人は別物だからきっと理解できない」と思われたのが寂しかったのである。

92年生まれ、新卒IT企業女子がインターネットについて呟きます

1992年生まれ、24歳って、インターネットの世界ではとっても微妙だと思う。デジタルネイティブよりも少し年をとっているかもしれない。ネットが生まれたばかりの盛り上がりを知っている世代としては、若すぎるかもしれない。

私が物心ついた頃には、生活の中にインターネットがあった。だけど、新しいテクノロジーに生活や身体が完全に慣れきっていたとも断言できない。

だけどだからこそ、2つの世代の真ん中でインターネットの海で泳ぎながら、インターネットに身体が慣れきらない気持ちを届けていきたいと思う。なぜならその中間地点で、どちらとも分かり合えることを、私は確信しているから。

どれだけ遠くに情報が飛んでいっても、どこかで遠くの誰かが共感し、おもしろがってくれることを信じて、インターネットに触れている感情を素直に書き残していきたい。それによって少しでも、「分かり合える気がするのに」と寂しくなる気持ちが、ゆっくりとほどけていきますように。

※みなさん、連載これからよろしくお願いいたします! 次回は10月31日の公開予定です! あと連載の最後に自撮りテクや裏話を紹介するミニコーナもありますので(↓したのやつです)、こちらもお楽しみに!

■■■ひとこと自撮り奥義! ■■■

【今日の奥義:必殺覗き魔テク】

今日は超!初心者でもできる自撮り奥義を伝授。「必殺覗き魔テク」の方法は、ただ、「見切れる」だけ。自撮りのコツは「どこを映さないか」なので、輪郭が気に入らないなら見切れちゃえばいいのです。初心者は、まるで「覗き魔か?!?!?!」というくらいにカメラに近づいて、どんどんいらない部分を切っちゃいましょう。

 

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某IT企業で働きながら、自撮ラー(自撮り女子)としてネットで人気急上昇中の「りょかち」が真面目にネット世界について語ります!

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りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒でIT企業に入社し、WEBサービスの企画開発・マーケティングに従事した後、独立。コラムのみならず、エッセイ・脚本・コピー制作も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。その他、幻冬舎、宣伝会議(アドタイ)などで連載。

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