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2016.10.12

第4回

1995年7月6日 ロフトプラスワン開店

平野 悠

1995年7月6日 ロフトプラスワン開店

 かくして1995年7月6日、まさに新宿の片隅から生まれた隠れ家的「新宿情報発信基地・トークライブ小屋」(キャパ50人)がオープンした。

 居酒屋をイメージしていたので、ステージはつくらず、店の中心の一段高い場所に掘りごたつ式テーブルを置いた。ここにマイクを置き、当日のゲスト(一日店長)が陣取って酒を酌み交わし、面白そうなお客さんをその横に座らせるというイメージだった。

 しかし、この仕掛はあまりうまくいかなかった。居酒屋である以上しかたがないのだが、酒を飲み始めると誰もステージの話を聞かない。ゲストがしゃべっているときは私語、雑談を禁止するルールを設けるしかなかった。ステージの上に古びた鐘を吊るした。

 1日店長がこの鐘を鳴らしたときは皆さん、ぜひ耳を傾けてください。それでもダメな場合、1日店長には、嫌いな客を実力で追い出せる、という権利があります。店側は手伝いませんが、私たちはそういった立ち回りもショーとして楽しんでもらおうと思っていますと、前もって説明した。

 

(オープンセレモニー16日間のすべて)

7/6(木)「一度カウンターに入ってみたかった」【出演】1日店長(※以下同)キース(ARBドラマー)ゲスト、生江有二(ジャーナリスト)

 /7(金)「東京ロッカーズから雑誌EATERまで」【出演】地引雄一(カメラマン)、清水靖(建築家)

 /8(土)「取材記者の現場から~結局オウムってなんだったのか?」【出演】二木啓孝(日刊ゲンダイ)

 /9(日)シリーズ:私のコレクション「野球カード」【出演】JOJO広重(スポーツカード店経営)、パンクバンド非常階段

 /10(月)「華のパリ・愛のパリ」【出演】佐川一政、根本敬他

 /11(火)「ひょうきんプロレス」【出演】ドン荒川(現役プロレスラー)

 /14(金)「新宿ゴールデン街」【出演】渡辺英綱(ゴールデン街なべさん店主)

 /15(土)「西表山猫からワニの保護まで考える」【出演】山瀬一裕(自然環境センター理事)

 /16(日)「ウルトラマンに取り憑かれた人生(ウルトラマン語伝授)」【出演】今井朝幸(円谷プロダクションプロデューサー)

 /19「へびほど素敵な奴はいない」【出演】千石正一(自然環境センター理事)

 /21(金)「勝手にツナイト~あなたもBAKAなレポーターになれる」【出演】せがわきり/生江有二

8/4(木)「パ、パンがパン−パンこそわが人生」【出演】渡辺政子(愛パン家)

 /11(木)「インディーズ音源試聴会−ニフティrock forum」【出演】東佐和子

 /12(金)「待ち合わせ−自作詩、その他作品持参歓迎」【出演】北園信一(月刊漫画ガロ編集室)、園子温(映画監督)

 /19(金)「へびほど素敵な奴はいない」【出演】千石正一(自然環境センター)

 /20(土)「粋な江戸祭を伝承するために」【出演】山親父店主(祭職人)

 

左翼も右翼もオタクもトーク

 なんて凄かったんだ!この1年……1月に未曽有の阪神淡路大震災が神戸を襲い、3月にはオウム真理教の地下鉄サリン事件が起きた。ワイドショーから流される映像は大震災とオウム事件一色。社会は騒然としていた。

 オタクはまだどこか差別的な愛称で呼ばれ、隠れた存在だった。

 一通りの開店お祝い客が来なくなると、出演者が連れてくる身内ばかりがお客さんだった。まだ店の成り立ちが理解されず、宣伝も行き届いていなかった。

 だがこの年の開店は、サブカル的にはどこかラッキーだった気がする。オウム事件のイベントも沢山やった。ちまたでは高校生ギャルがヘソ出しルックで街を歩く。テレクラやAVも元気だ。左翼と違って右翼も元気だ。面白そうな人を見つけると「ねえ、何かやって下さいな」と至る所でお願いした。

 お客さんが数人~ゼロで、イベントが開始できない日が何度もあった。そんな時は店員を客席に座らせ、ロフト事務所に応援を頼んだりした。幸い、(株)ロフトプロジェクトが経営するロックのライブハウス「新宿ロフト」「下北シェルター」は好調だった。

「お客さんが来ないから始められない」「客より出演者の数が多い」なんてことは、過去のライブハウスロフト経営で何度も味わっていることだから、めげることはなかった。

 営業は電車の始発時間までやり、イベントが終わってからも深夜のお客さんが来てくれるようになったが、赤字経営は1年以上続いた。

「新宿に一風変わった面白い店があるらしい。そこは誰でも思いの丈をしゃべらせてくれる。ギャラは安いが、出演者のノルマなどのリスクはない。酒もただで飲ませてくれるそうだ」という噂が広まった。

 オタクもAV野郎も特撮も、作家も評論家も元犯罪者も政治や社会問題に異議を唱える人もやって来てしゃべり始めた。半年間のスケジューリングで、プラスワンの“雑食性”の主軸が決まった気がする。

 やはりどこか社会が拡散しているのか、サブカル軍団はこの巨大都市・東京の至る所に生息していたのだ。ロック音楽を長年築いてきた「ライブハウスロフト」の信用も大きかった。

 数か月たってみて「ひょっとしたら1、2年は維持出来そうだ」と予感した。人から人への噂は広がって行く。テレビ各局や雑誌の取材も来るようになった。早くも開店1年目後半で、プラスワンは不思議な化学変化を見せ、増殖し始めていた。

 いち早くこの空間に興味を示してくれた文化人がいた。「B級サブカルが一番面白い」という唐沢俊一さん、新右翼で一水会の鈴木邦男さん、ガロ文化人の杉作J太郎(独立系漫画家)、幻の名盤解放同盟の根本敬、岩浅学、船橋英雄。バクシーシ山下(AV監督)の初の単行本「セックス障害者」の出版記念イベントも賑わった。「ラブソングなんか歌わない」とパンクバンド・アナーキーの仲野茂(ミュージシャン)「WHO ARE THE PANTA?」はロック業界の裏話を、「今、インデペンデント映画が最高におもしろい」武藤起一(プロデューサー)では多くの映画関係の俳優や監督を連れて来てくれた。

「レズ&ゲイHEART WARM PARADE」という初めてのゲイイベントでは、ゲイパレードの後始末をめぐって論争が起きた。会場に主催者に反対する人たちが来ていたのだ。これはうれしかった。

 ワハハ本舗の喰始(くいめ)さんが毎月、事務所のタレントを沢山引き連れ、自らステージに上がって司会もやってくれた。

 トークの制限時間を無制限とした。「必要だったら朝までやればいい」と出演者をあおった。議論が終わらず朝まで続けたイベント「ライターズ・デン」「オタクアミーゴス」「女子高校生討論会」「全共闘世代VS若者世代」などが沢山出てきた。

 月間スケジュールに載らない、日々起こる社会問題には、店を臨時に開けて積極的に対応した。トークの「生と死、善と悪との現在・オウムが明るみに出したもの」は山崎哲(劇作家)/三上治(評論家)、プロレスイベントもやってみた。「徹底解剖!平成のカルト王・高野拳磁」では、多くのプロレスファンから高野拳磁に店を壊されるぞと忠告を受けた。このように多彩な企画が催されるようになり、これはトーク文化の素晴らしい夜明けだった。

 

※次回から出演者列伝スタート!

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