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2016.10.01

広岡達朗が考える、名門・巨人の敗因

広岡 達朗

広岡達朗が考える、名門・巨人の敗因


 エース・菅野頼みの投手陣

 球界の盟主を看板とする巨人が最悪のペナントレースを終えた。
 巨人の敗因は数えきれない。投手陣ではエース・菅野智之に頼り切りだった。菅野はよく投げた。速球も変化球もコントロールも完成度が高く、好投しても報われないときも切れずによく耐えた。
 しかしエースに続く先発組が高木勇人、田口麗斗、今村信貴では乗り切れなかった。3年目の小さな左腕・田口だけが頑張って2ケタ勝利を飾ったが、勝負所の終盤戦ではスタミナがに切れた。

 とても巨人とは思えない精彩を欠いた投手陣で、私が心配したのは内海哲也と山口鉄也の姿だった。左の先発要員・内海は不調のため二軍スタート。5月から戦列に復帰したが打ち込まれることが多く、好不調の波が激しかった。
 私が注目したのは、踏み出すステップが狭いことだ。球速は130㌔台で、スピードより球のキレとコントロールが持ち味だが、キレとコントロールが悪いときは簡単に打ち込まれた。
 左のセットアッパー・山口も、今年は別人のように力が落ちた。これもステップが狭くなったのが原因だと私は思う。
 2人とも、もともとステップは狭い。それが加齢で知らないうちにより狭くなり、ヒョイと手先だけで投げているように見える。その結果、弓の弦のように張ったテークバックの力が、解き放たれたときボールに伝わらないのだ。
 だから投手は、年をとって体力が落ちたら若いときより意識的にステップを広げ、下半身に粘りをつけて投げなくてはいけない。そうすれば体全体の力がボールに乗って、球威が落ちない。つまり、楽な投げ方に逃げてはいけないのだ。

覚悟がなかった阿部とベンチ

 攻撃面では、阿部慎之助の罪が大きい。
 昨年、首を痛めて戦線離脱した阿部は今シーズンも右肩痛で開幕から二軍調整を続けた。5月31日の交流戦で「5番・指名打者」として復帰したが、当時、巨人は交流戦が終わったら阿部を捕手で起用する予定だったという。村田真一ヘッドコーチも報道陣に「体調に問題がなければ慎之助は捕手だ」と断言していた。
 しかし、阿部は後半戦もマスクをかぶることはなかった。後半戦には4番に座り、打率・310、ホームラン12本まで数字を上げたが、復帰後の阿部が予定通り捕手に戻っていたら、巨人の戦況は変わっていたかもしれない。ベンチも阿部も、本来の役目に戻る覚悟がなかったのだ。
 

ワースト3の三遊間と守乱

 守備の乱れも目立った。
 数え上げればきりがないが、象徴的だったのは8月31日に富山で行われたヤクルト戦だ。二塁のルイス・クルーズが一、二塁間の挟殺プレーで深追いして失点に直結した。9月2日の中日戦では捕手の小林誠司が本塁送球を受けてからタッチをしない失態。3日の同じカードでは一回無死一、三塁から大竹寛が投ゴロを一塁に悪送球して先制点を許した。
 3戦連続で考えられない凡ミスが続くのも珍しいが、この珍事は巨人に緊張感が足りな
いことを証明した。

 野球にミスはつきものだが、私が危惧するのはミスがあったとき、監督・コーチが厳しく指導したかということだ。こんな凡ミスが起きたときは、監督が厳重注意をし、守備コーチがすぐ指導していれば、3試合も連続で続くはずがない。
 その後も巨人に緊張感のないプレーが多かったことをみると、監督・コーチの指導が甘いのではないかと思わざるを得ない。

 守備といえば、ショート・坂本勇人とサード・村田修一のエラーが多いのも気になる。
 3番でショートの坂本はシーズンを通して好調を維持して首位打者になったが、失策は16でリーグワースト2位。トップは広島・田中広輔の18だが、巨人のショートが守備の悪い田中の次にエラーが多いのは恥ずかしい。
 しかも5番でサードの村田も失策は15で、ワースト3の2位と3位を巨人の三遊間が占めている。他チームの内野手を見てみると、初のCS進出を果たしたDeNAのショート・倉本寿彦の失策は6、ヤクルトのセカンド・山田は5で、坂本や村田よりはるかに締まった守備を見せている。

 ちなみに私が巨人のショートだったころの失策は昭和35年(1960年)が8、昭和40年(1965年)も8だった。しかも当時は土のグラウンドでイレギュラーバウンドするのが当然だったから、いまの選手が人工芝で15も16もエラーするのはおかしい。坂本は打つことばかりに気をとられ、守備の集中力が欠けているのではないか。
 そして三遊間の守備の乱れが、チーム全体の緊張感を緩ませている可能性もある。

動かない監督とベンチ

 私は開幕前に出版した『巨人への遺言~プロ野球生き残りの道』(幻冬舎)で、「高橋由伸新監督の課題」を書いた。スーパースターがコーチ経験もなくいきなり監督になることに反対している私は、高橋にいくつかのアドバイスをした。
 そのなかで、「サインは自分で出せ」「一番難しい投手交代は自分で決めろ」「この1年
はキャンプと思って毎日、試合前に練習を続けろ」と書いた。

 またこの連載コラムでも、「ここ一番のピンチではマウンドに行ってハッパをかけろ」と陣頭指揮を勧めた。いずれも選手たちに1年生監督の本気度と覚悟を示すためだが、広島に突き放されたときも、終盤でDeNAに追い上げられたときも、必勝の気迫と先頭に立って逆境をはねかえそうとする動きは見られなかった。
 試合前後のミーティングや遠征先で選手たちにどんな指示や策を授けたかは分からない。しかし監督やコーチが必死に態勢を立て直そうとすれば、ベンチや試合の動きに現れるはずだが、高橋の采配や言動に変化は見られなかった。

 「選手の自主性を尊重したい」と語ってスタートした高橋・巨人は、最後まで“馬なり”で走ったようにしか見えない。

 

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