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2016.10.15

「防犯」にまつわるメモ

山田 マチ

「防犯」にまつわるメモ

 娘や女子と呼ばれる時代をすぎ、中年になって楽だなぁと感じるのは、チカンやボウカンの心配がなくなったことです。女子でもない、熟女と呼ぶほどの艶もない、かよわき老女でもない現在の中年期は、女の人生のなかでいちばん安全な気がします。

 心配性の母の血を受け継ぎ、若いころからチカンの心配をして暮してきたものの、実際に被害にあったことは、幸か不幸か、一度もありません。ここから先は、私がチカンから見ても女として魅力的ではないという事実はいったん横に置いて、筆を進めさせていただきます。

 夜中にひとりで出かけなければいけないときは、自転車に乗るようにしていました。立ちこぎで全速力。そんな女をわざわざ狙うチカンやひったくりはいないと信じ、夜道をキコキコとこいでいました。

 傘は、武器です。 人通りの少ない夜道を歩くときは、傘があると安心です。持っていることをアピールするためにも、ぶんぶん振って大股で歩きましょう。シミュレーションもぬかりなく。後ろからきたらこう、横からきたらこう、前から走ってきたらこう。侍の精神で夜道を歩きます。

 シミュレーションをしている人間と、していない人間。ヘンタイはそれを見分けるのではないでしょうか。向こうもリスクをせおってくるわけですから、なるべく失敗したくないはず。もし私がヘンタイであっても、できるだけ油断してそうな人を狙うでしょう。「どっからでもかかってこい」という強い覚悟を持ち、もしものときに備えましょう。

 若いころから、女として「スキ」がないと言われ続けていました。「スキってどうやってつくるものなの?」と聞いても、皆苦笑いするばかりで、誰も何も教えてくれません。その正体が判明しないまま、中年になってしまいました。モテなかったというのは残念ですが、チカンに合わなかったことは幸いでした。

 私がどんな満員電車に乗ろうともチカンに狙われなかったのは、まゆげのせいではないかと思っています。こどものころから、勉強も運動もたいしてできるわけではないのに、「しっかりしている」と言われていました。これは、黒々と濃いまゆげの印象がそうさせるだけではないかと、常々疑っていました。チカンにあいがち、という人は、試しにまゆげをしっかり描いてみてください。

 女のひとり暮しとわからないように、ベランダに男もののパンツを干しておく、なんて話を聞くことがありますが、そもそも洗濯物を外に干さないようにしています。干すとしても持ち主が男か女かわからない、タオルやバスマットや変な柄のTシャツなどに限定しています。

 女のひとり暮しとわからないように、カーテンはかわいいものを吊るしていません。窓辺にも、ぬいぐるみや花などの飾りを置かず、なるべく殺風景にして、男の部屋か女の部屋かわからないようにしています。……おわびして訂正します。防犯のためではなく、そもそもかわいいものを持っていないのでした。失礼しました。

 わずらわしいと思う人も多いようですが、私はなるべく、大家さんがすぐ近くに住んでいる物件を選ぶようにしています。遠くの友人より近くの大家。愛想なんてタダなのですから、どんどん振りまいて、仲良くなっておきましょう。融通がききやすくなりますし、もしものときはきっと助けになってくれることでしょう。

 着物が好きで、ときどき着ます。和装のときは、夜道を歩いていても、おそわれる気がぜんぜんしません。帯をくるくるとほどくような古風なヘンタイが、この21世紀の世に、そういるとは思えません。

 夏場、窓辺にすだれをかけて安心してはいけません。夜道を歩き、生活があらわになっている部屋をどれだけ目にするでしょうか。夏の夜、すだれは、ほぼ透明なものと考えましょう。

 玄関先には、富士山に登ったときに山小屋で買った木の杖が置いてあります。山頂まで一緒に登った相棒です。ワルモノがやってきたら、「やぁっ!」と突き刺そうと思っています。これが我が家の用心棒。その棒は、洗濯機の裏に落ちた洗濯物をすくいあげたり、風で飛んでよその庭に落ちた洗濯物を柵ごしに拾ったりと、なかなか役に立っています。長い棒、1本あると便利ですよ。

 我が家にドロボウが来ても、喜ぶようなものは何もありません。現金ナシ宝石ナシ高価なブランド物もナシ。唯一ある金目のものといえば、500円玉貯金くらいでしょうか。透明なガラスの容器に貯めたはいいのですが、重たくてほったらかしになっています。ドロボウも嫌がるであろう重量です。クセになってしまい、なんとなく貯めつづけていますが、私はこれをいったいどうするつもりなのでしょうか。

 最近、我が家に不法侵入者が現れます。家に帰ると、ひょこひょこと、1センチくらいのイモムシがカーペットを渡ろうとしているのです。ティッシュですくいあげ、窓の下に見える木に向かって放りました。また別の日も。また別の日も。同じ行動を繰り返しています。イモムシは何に向かっているのでしょうか。我が家には観葉植物も一輪の花もありませんのに。侵入経路は不明ですが、かわいいから、まぁいいです。

 友達が、下着ドロボウにあいました。ベランダに干してあったパンツをごっそり盗られたそうです。その友達は、男です。負けた気がします。

 ひとりで夜道を歩くときは「とぼとぼ」「ふらふら」「てろてろ」と歩いていてはキケンです。擬音にするならば、「きびきび」「しゃきしゃき」「ちゃっちゃか」。キケンを察知したら迷わずに「すたこらさっさ」です。

 これまで生きてきて、キケンな目にあったことは、ただの一度もありません。たまたまなのか、気をつけていたからなのかはわかりませんが、どちらにせよ、ラッキーです。贅沢は言いませんから、この平穏な状態のまま人生の最後まで逃げ切らせてお願い神様!と、賽銭を投げ込むたびにお祈りしています。

500円玉貯金。唯一の金目のものだけれど、すごく重いので、ドロボウに持っていかれる気がしません。

 

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