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2016.10.03

作家・中山七里(前編)

30分で人生の半分を決めるとは?

中山 七里

30分で人生の半分を決めるとは?

「さよならドビュッシー」シリーズをはじめ数々のヒット作を出し、“どんでん返しの名手”と呼ばれる中山七里さん。忙しい会社員生活を送りながらも、48歳の時に文壇デビューを果たすと、たちまち人気作家に。現在、月10本の連載を掛け持つ中山さんは、3日でプロットを仕上げ、1ヶ月に500枚の原稿を書くといいます。順風満帆に思える作家生活を送る中山さんの、挫折の経験はいつだったのでしょうか?
(構成:四戸咲子 撮影:小嶋淑子)

◆「もっと落ち込め」と言われた◆

中山 すいません。「挫折したとき」がテーマなのに、昔から私は、ほかの人が絶望するようなことを楽しむ癖があるんですよ。遡れば高校3年の時、私は就職組だったんですが、今のJT(当時:専売公社)の就職試験で、よせばいいのに「たばこの害」っていう論文を書いて落とされたんです(笑)。僕落ちたって聞いた時に、「よし、大学に行こう」ってすぐに進路を変えたので、クラスの連中から、「もっと落ち込め」って怒られたんです。

――小さい頃からずっとそんな感じなのでしょうか、なりたい職業とかはなかったんですか?

中山 ない!僕、何者かになりたいとかなかったんですよ。ただ、好きな本を読んで、好きな映画を観て、暮らせたらいいなっていうだけだった。

――そうですか(笑)。憧れや夢って現実に気づいて諦めてしまう方も多いので、そんなエピソードがあれば、お伺いしようかと思ったのですが…。

中山 たぶん僕はおかしいんでしょうね(笑)。悔しかったり、落ち込んだりっていう記憶が基本的にないんです。考え方だと思うのですが、絶えず思考がポジティブな方向にしかいかないんですよ。大学で就職する会社を決める時も、分厚いリクルートブックっていうのが送られてきたので、ずっと見ていって、一番初任給の高い会社を選んだんです。そうしたら好きなだけ本も読めるし、映画も観れるなって。会社員になった頃も、ちょうどバブル経済突入の頃で、イケイケドンドンの時代でしたから、落ち込む暇もなかったですし、自分を否定するネタもなかったんです。

――会社勤めをしながら「このミステリーがすごい」大賞を獲られてるまでの25年くらいの間に、葛藤や紆余曲折はなかったのでしょうか?

中山 全然。要は何かを書こうって思うときってたぶん自分の中で溜まるものがあって、それ吐き出す時でしょうね。仕事は楽しいわ、結婚して子供ができて家庭も楽しいわ、で、吐き出すものがないから(笑)。僕の場合、島田荘司さんとお会いして、衝動的に書こうと思っただけで、作家になろうというよりは、小説が書きたかっただけなんですよ。実際に書いてみたら170枚しかなくて、その枚数で受け付けてくれるところがなかった。そんな時に、ちょうど締め切りがあるところが第6回(07年)の「このミス」大賞で、170枚に何本か書き足して送ったんです。最終選考まで残ってあっけなく落とされた時には、さすがにガクッと来ました。でも正確に言うと、10時間しかもたなかったんですよ。

――たった10時間ですか(笑)。その2年後に、「このミス」大賞を受賞されているんですよね。

10時間経ったら、次に応募するための傾向と対策を考えていました。どうして僕がわりと
簡単に賞を獲れたかっていうと、最初に落ちた時に、分析したからです。「ここをこうすればいい」という選評が出ているので、そのとおりに書けば受賞するのは当たり前です。負けたら敗因を分析しなければ次は勝てないのに、ほとんどの人は、別の理由を考えて、自分で傾向と対策を立てないから、次も勝てないんです。
 

◆3週間で決めた結婚◆

――デビューされてから毎年、新作を約4冊という驚きのペースで刊行されています。中山さんはご自身の順調な執筆活動の秘訣は何だと思われますか。

中山 今まで本を読んできたから、それだけです。デビューして、いろんな作家さんとお話をするんですけど、やはり皆さん例外なく本をたくさんお読みになってらっしゃいます。インタビューで、「いやぁ、僕本読んでいません」っていう人に限って読んでいます(笑)。僕が考える作家になる最短距離は、本を読むことなんですよ。その蓄積が多ければ多いほど、いろんなものを書けるし、読めば文章が自然と出てきますよ。僕はこういう商売になってからあんまり読んでいないんですけど、それでも1日に1冊読み、映画を1本は観ますからね。「シン・ゴジラ」は、アイマックスシアターに5回も観に行きました(笑)。

――これまで読んだり観たりしてきた本と映画、2つともが今の創作活動を支える礎になっていらっしゃるのですね。

中山 インプットと言えばインプットなんですけど、本当のことを言えば趣味です(笑)。本も映画も基本は一緒ですよ。シナリオの作り方だとか、話の持っていき方だとか、このストーリーに必要な要素はどのくらいか、というのがわかりますから。ただ、これを言うと怒られるかもしれませんが、少なくとも物書きでいるのであれば、ほかのことをするよりは本を読んだほうがいいなって思うんですよ。……やっぱり全然、挫折の話にならないですね(笑)。

――小説を書かれる際は、いつも編集者のオーダーを聞いてから書かれていらっしゃるそうですね。

中山 ええ。僕は書きたいものほど、書きたくないものはないからです(笑)。なぜかって言うと、僕の言いたいことなんか聞きたい人なんか一人もいないと思ってるから。要は、なんで皆自分の言いたいことを小説に書きたいかって言うと、一つの承認欲求でしてね、まぁ承認欲求が悪いとは言いませんけども、商業行動の中で、承認欲求なんか、一円の得にもならない。

――編集者からのオーダーが難しくて挫折したことはないですか?

中山 ないです。それはやっぱり本を読んできたからっていうのはありますよ。引き出しがありますからね。新人って何かの賞を獲ったら、出版社からはシリーズものを書くように言われることが多いわけです。シリーズものっておそらく同じカラーじゃないですか。引き出しがないと、シリーズが終わったら、終わってしまいますよ。僕は、常に一応30個のネタが頭の中にはありますよ。そこから編集者のオーダーに応じて書くだけです。

――執筆中に締め切りに間に合わないとかピンチに陥るということもないんですか?

中山 人生でピンチになったことがないです(笑)。要はピンチっていうのは考え方だけなんですよ。だって、ピンチの時ほど自分を売り込める時ってないですもん。ピンチの時にうまいこと切り替えられたら、全部自分の勲章になるんですよ? 落ち込む前に、まず逆転することを考えないと。

――すべてポジティブに切り替えるんですね。ただ、失敗や悪いことが続くと弱気になってしまって、なかなか自力で気持ちを切り替えるのが難しいこともあります。もし、そういう挫折している人から相談されたとき、中山さんはどうアドバイスされますか。

中山 簡単。どうせ死ぬんだ(笑)。

――なるほど、結果は一緒だからということですか?

中山 どうせ死ぬんだから、落ち込んだまま一生過ごしたほうがいいのか、もっと違う希望があるほうがいいのかってもう結果は決まってるじゃないですか。もっと言うと、人が何かを得る時っていうのは、失敗した時ですけど、それは失敗して落ち込んだんじゃなくて、失敗して、なにくそと思った時にそれが生きるだけであって、落ち込んでる期間っていうのは単なる時間の無駄遣いです。だって落ち込んでる時に食べる飯はまずい、体が悪くなる、思考能力働かない、自分を卑下する、何一ついいことないですもん。だから、僕は悩んだことないんですよ。結婚する時も3週間で決めちゃったしね。3回目のデートの時に、悪いけど印鑑と戸籍謄本持ってきて、って言って、で、彼女が持ってきたから、そのまま市役所に行って、印鑑押して終わり。で、ちょうど市役所の向かい側に、厚生年金会館があって、行ってみたら、1月の何日ちょうどあいてるから、じゃあこの日に結婚式。パッと横見たら、不動産屋さんがあったんで、1月にこういうマンションが新しく建ちますとあったので、じゃあこの部屋お願いしますって言って、30分で一生の半分は決まりました!


挫折知らずの中山さんが送る誰にも真似できない生活の秘密が、次回明かされます。後篇は、10月10日公開予定。

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