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2016.09.17

なんだか面白いので、まだ続けるよエッセイ21

広島カープ優勝おめでとう!…から、なぜか、モンゴルの寝台列車で、リアル「世界の車窓から」をした話。

歌う旅人・香川 裕光

広島カープ優勝おめでとう!…から、なぜか、モンゴルの寝台列車で、リアル「世界の車窓から」をした話。

広島カープ優勝しましたね。
25年ぶり。どれだけ嬉しいことでしょう。おめでとうございます!
カープファンの感動と喜びは、広島にいなくても、伝わってきます。
さて、広島出身のミュージシャン香川さんも、その喜びに浸っているようです。そんな喜びに浸りつつ新幹線に乗ったようですが、その車窓から外を見て思い出したのは、モンゴルで乗った、寝台列車での不思議な出来事……。

*   *   *

エッセイ
風の歌を聴け

 電車に乗って最寄駅から広島駅へたどり着くと、すっかりカープ優勝モードに盛り上がっていた。これから新幹線に乗って関西へ向かう。スタッフにお土産でも買っていこうと、真っ赤なお饅頭を片手にレジに並ぶ。
 そこらじゅうに、"カープ坊や"が貼り付いている。お菓子のパッケージも当然のごとく。あっちこっちまっ赤っか。まさにお祭り騒ぎだ。
 25年間、貯めに貯めて弾けた広島の願いは、町中を喜びで満たした。
 ここ最近は、なんだかよくわからないけど、幸福感がそこらじゅうに舞っているようで、なんだか心地良い。
 見知らぬおじさんとハイタッチしたくなるような空気感が確かに漂っている。

 おめでたいムードの中、僕はというと、今朝、鼻を「スン。」とすすったら、何故か首が「グキッ。」っていって動かなくなった。
 連日、深夜までレコーディング作業やライブの準備で疲れが溜まったのか、“ギックリ首”のようなものになってしまったのである。
幸い、今回の移動は新幹線で(マジでよかった)。
 座ってれば、京都へ着く。
 ラクさせてもらおじゃないか。
 席に座って、座席を少し倒して、耳にイヤフォンをつせて、リラックスした姿勢で出発を待つ。
 間もなく、のぞみ130号は「ピリリリー!」と甲高い声を上げて、駅を発った。

 イヤフォンから流れる音楽は、いつでも自分を映画の主人公にしてくれる。
 まるでショートムービーのように、音楽に合わせて車窓を流れてゆく景色。
 いつもは5時間くらいかけて車で移動するが、これに座ってれば2時間弱で京都へ辿り着けるらしい。まったくもって、文明って素晴らしいじゃないか。

 そういえば、3年前のモンゴル旅でも、僕は一人で「『世界の車窓から』ごっこ」をした。
 ウランバートルから電車で一晩かかる街――"シャインサンダ"という砂漠の街まで、寝台列車で向かったのだ。
 まさにそれは「世界の車窓から」そのものだった。

 まずはモンゴルの首都、ウランバートルの駅で、切符を買わなければならない。
 モンゴル語は喋れない僕は、お世話になった"ヤスさん“(※本連載の第3~5話参照)に、モンゴル語で
『シャインサンダまでの切符を下さい!』
 と紙に書いてもらい、それを窓口で出した。
 無愛想なお姉さんが淡々と処理して、切符を発行してくれた。切符には、自分の座席となる列車の番号が書いてある。お弁当代わりのパンと水を買って、改札をくぐった。
 駅員らしき人に切符を見せると、親切に席まで案内してくれた。切符にも何種類かあるらしい。約11時間に及ぶ道のりだというのに、立って乗る格安の切符もあり、そこから、寝台のある部屋に乗れる切符まで、徐々に値段が高くなっているらしい。僕はリッチに一番高い切符にしたので、憧れの寝台列車に堂々と乗り込むことがでした(それでも日本円で4000円くらいだった)。

 案内された部屋は4畳程の大きさで、壁に長い羽根椅子のようなものがあり、それを倒すとベッドとして寝そべることができる。毛布等もおいてあった。
 大きな窓が一つついており、外を眺めることができる。
 まさに理想的な「世界の車窓から」だった。
 ほどなくして列車が動き出すと、窓の外で見渡す限りに広がる大草原が、ゆるやかに流れていく。
 想像していたより乗り心地も快適で、スイスイと草原を進む。空でも飛んでいるような気分だ。
 低空飛行する羊雲の下には、本物の羊の群れが見える。なんてのどかなのだろう。
窓からはたまらない景色が、車窓の隙間からは乾いた風が、車内に入り込み泳ぎ回っていた。

 さてと……。僕はおもむろに持ってきたギターを取り出し、あのメロディーを爪弾く。
『テレッテッテッテテッテレ〜テッテ〜、テレッテレッテ〜』
 そう。「世界の車窓から」のテーマ曲である。
 モンゴルの大草原を横目に、僕は静かにギターを弾いた。

 テレッテッテッテテッテレ〜テッテ〜、テレッテレッテ〜
 テレッテッテッテテッテレ〜テッテ〜、テレッテレッテ〜

 テレッテッテッテテッテレ〜テッテ〜、テレッテレッテ〜

「・・・・・・。」

 正直、その続きがまったくわからない。
 とりあえず、スマホで動画を撮影しながら、テレテレとメロディーを奏でることに注力してみたが、僕の「『世界の車窓から』ごっこ」は、雰囲気だけ味わって、5分くらいで幕を閉じた。

 実に満足である。
 しかし、まだまだ10時間以上もこの列車に乗らねばならない。
 ヤスさんからもらった村上春樹の小説でも読んでみる。『風の歌を聴け』。1作目の長編小説だそうだ。
 この本を読んだ人は何十万、何百万人といるかもしれないが、モンゴルの寝台列車で読んだというのは、ひょっとすると僕だけじゃないだろうか。
 なんとも贅沢だ。

 さぁ、そろそろトイレへ行きたくなってきた(忙しいな)。
 ドアを開けて部屋から出ようとすると、なにやらおかしい。
 ビクともしない。
 モンゴル特有の開け方でもあるんだろうか?
 押しても引いても開かない。
 え? 閉じ込められた!?
 一瞬焦った僕は、ガチャガチャとドアノブを強く回した。すると、外側から従業員のおばさんが怪訝そうな顔ですっと開けてくれた。
 開いた……。
 故障してるのかもしれない。ジェスチャーで「ドアが開かない!」と伝えると、おばさんは不思議そうな顔をするばかりで、とっととどこかへ行ってしまった。
 なんなんだろう。
 とりあえずトイレまで行き、用を足して、部屋に戻った。恐る恐るゆっくりドアを閉める。するとやはり「もう二度と開けませんよ」とでもいうかのように、ガッチリ閉まってしまう。
 こういうもんなんだろうか? モンゴルの寝台列車って、外からカギをかけられちゃうの!?
 一応、もう一度ガチャガチャやってみたものの、もう、おばさんは来てくれない。
目的地に着いたら出られるんだろうか……。

 鍵をかけられてると思うと、さっきまではとても近くに見えていた草原が、急に遠く感じてきた。
 まるで、小さな牢獄から自由な世界を眺めるラプンツェルになったような気分だ。
 でも僕は、王子様をよじ登らせるほどの美しく長い髪の毛なんて持ち合わせてない。
 なんてこった。

 とりあえず一眠りしてみる。

 そもそも、僕たちが見ている“自由な世界”など、本当は存在していないんじゃないだろうか。
 本当は僕たちは、この現代社会という名の牢獄に閉じ込められているのかもしれない……。カギのかかった寝台列車の個室から眺める幻想に、ひとり浮き沈みしながら、そんなことを考えた。

 目を覚ますと、普通にすっとドアが空いた。
 救い出してくれたのは王子様……ではなく、怪訝そうなおばさん従業員。
 そそくさと降車させられ、無事にシャインサンダに到着した。

 いやーよく寝た。
「『世界の車窓から』ごっこ」は、列車に乗ってすぐの間だけで、結局、ほぼ車窓なんか見ていなかった。
 さて、今夜はどこに泊まるも自由。物価も安いし、高級ホテルにでも泊まりますかな。
 選んだホテルは、丸型にデザインされたオシャレな高級ホテルで、1泊2500円だった。

 やっす!笑
 今夜はラプンツェルごっこだな。今度の王子様は、誰かな。

   *   *   *
結局、車窓から見た景色のほとんどが、夢の中だったようです!
 

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