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2016.09.06

理解できないことばかり

田辺 青蛙

理解できないことばかり

 ■指定図書:『ソラリス』スタニスワフ・レム (著)、 沼野充義 (翻訳)

 いよいよ、残りあと1回のみとなりましたね。
 夫からの最後の課題本は……SFです!
 物理や数学本でなくてホッとしました。そして、料理作らなきゃなあと思っているんですが、出張のタイミング等で、なかなか夫と食事のタイミングが合わず……。本になる時に料理を作る様子をおまけにするっていうのはどうでしょうか? いや、別に料理が嫌で避けてるわけじゃあないですよ!

 ■課題本
『ソラリス』スタニスワフ・レム (著)、 沼野充義 (翻訳)

【あらすじ】
赤いゼリー状の海に覆われた、謎多き惑星「ソラリス」。
「ソラリス」は、赤青の2つの太陽の周囲を回っているのだが、計算上ではどう考えても、どちらかの太陽に衝突してしまう。しかし「ソラリス」の大半を占めている、赤い海が、軌道を修正しているおかげで安定した軌道を守っており、太陽に衝突しないで済んでいるのだ。ソラリスの赤いゼリー状の海は生きており、思考する生物だったのだ。
多くの研究者が色んな手法を用いて、さまざまな仮説を立てたが赤い惑星の謎は全く明かされず、糸口すら分からない状態がもうずっと続いている。
そんな惑星「ソラリス」の宇宙ステーションに、心理学者のケルヴィンが降り立った。そこで、彼は思いがけない出来事に次々と遭遇することになるのだが……。

タイトルの「ソラリス」ってどんな意味なんだろうと調べてみたところ、ラテン語で「太陽」を表す単語だそうです。

 20世紀最大級のSF作品とも評されている「ソラリス」ですが、実は映画も見ていなければ、本もこの連載で勧められてはじめて手にとりました。

 夫はレビューを別に競いあっている訳ではないと言っていましたが、総合理解の為に、相手がどんな感想を本を読んで抱くのだろうと想像するのは自然なことではないでしょうか?

 予備知識ほぼゼロで読み始めた「ソラリス」は不気味な雰囲気を私が行間から感じとってしまったせいか、それともあれは宇宙でなく、南極の基地が舞台の作品ですが「遊星からの物体X」を連想してしまったからか、SFではなくホラー小説のような印象を受けてしまいました。
 いや、でも考えてみればSFとホラーの定義とか差って何なんでしょうか……私の周りには恒川光太郎さんに、北野勇作さんや、牧野修さんや、小林泰三さん、田中啓文さんに、朱川湊人さん等、SFとホラーを両方書いている人が多いなあ……等と関係ないことがポンポン頭の中に浮かんで来ましたよ。
 過去の連載で課題図書で読んだ、『本を読むときに何が起きているのか』(ピーター・メンデルサンド・著)にあったように、文章を追いながら人は何を考え、何を感じ取るんでしょうか? ってことを追体験出来るように文章に出来ないかと考えながら今回はレビューにチャレンジしてみたんですけれど、お粗末な私の文章力だと無理っぽさそうですね。

 さて、未知の惑星「ソラリス」に降り立った主人公のケルヴィンは、ステーションの照明が点いただけでも怯えています。何か不穏な空気とこれからただ事ではない何かが起こるのだろうか? という不安と期待が綯交ぜになりながらページを捲ります。
 レトロ・フューチャーな雰囲気の漂う宇宙船の中を何かがおかしいと感じながら、進むケルヴィン。
 ああ! 何だかじれったい! そして怖い!

>洋服箪笥の内側につけられた細い鏡が、部屋の一部を映し出している。そこに何か動くものがあることを目の片隅で捉え、私は跳び上がるほど驚いたが、自分の姿が鏡に映っているだけだった。(28ページ13行目~、引用)

 ホラーゲームの「ALIEN: ISOLATION」をプレイしているような気分にだんだんなってきましたよ。
 あのゲームはエイリアンが出て来た時よりも、出てこないで気配だけを感じる時の方が物凄く怖いんですよ。もうね、宇宙船をいるかな? 出てくるのかな? と思いながらただ歩き彷徨っている間は冷や汗だらだらでして、もうね、こんなに怖いんだから早くエイリアンおそって来ないかなあ~みたいな気持ちにだんだんなってきちゃいまして、ブス! と尾で刺し貫かれた時なんか、逆にほっとしちゃったりします。
 もし、この世でゾンビがあふれ出たりなんかしたら、私はきっともう逃げたりするのが嫌でさっさと諦めて、ゾンビ側に行きますね。ああ、もう痛くない範囲で噛まれたい! と思いますよ。

 さてさて、シャワーを浴びて、ナイフを見つけたおかげか、ステーションの中で少し冷静さを取り戻したケルヴィンは「ソラリス」の歴史と「ソラリス」を覆っている海が一個体の生き物らしいというSF的なギミックについて説明をはじめました。
 作品がこれはホラーではありません。SF作品ですと語りかけてくれているようです。おかげでさっきまで感じていた恐怖心が薄らいできました。
 と、思いきやまたもやホラーな展開に。何だよ、油断させておいて、これですか!? 全くもう!
 宇宙船の中で見つかる自殺死体、何か確実に隠し事をしている同僚。いる筈のない人物の影。何かがおかしいというより、何もかもがおかしいのではないかと思いたくなるような状況の最中、ケルヴィンの元に生きた海から「お客様」がやって来ました。
 お客様の名前は「ハリー」
 死んだ筈のケルヴィンの恋人そっくりで、彼女の記憶や癖まで同じ。ですが、全て何もかもがまるっきり同じというわけではなく、彼女は不死で、ケルヴィンから片時も離れたがりません。
 かつて、海に機械を沈めた時に部品をそっくり作り出したことがあったというから、これは「ソラリス」の赤い海の戯れなのでしょうか? それとも実験? 贈り物?
 答えのないまま、死者と同じ姿かたちの生きた海から齎された人物との奇妙な共同生活を過ごすケルヴィン。

 ふと、ハリーって男性名じゃなかったっけ? と思って調べてみたら、ポーランドでは女性名のようでした。
 ドミニクが英語だと女性名前なのに、フランスだと男性名みたいなもんでしょうか?
 クルーの中に女性が含まれていて、自分の過去の恋人や肉親が現れたとしたら、男性と感じ方は違ったのだろうか……それとも死者との遭遇は、性差によっての対応の変化は現れないのだろうか? 死者そっくりの海からの使者に戸惑うクルーの様子を読みながら、そんな疑問が浮かび上がってきました。

 死んだ筈の人がやって来る話はホラージャンルでも、よくあります。
 怪談話でも、死んだ筈の○○が戻って来て……というエピソードは幾つもあり、実際、私自身が怪談を収集している間にもその手の話を語り手から聞くことがあります。
 ただ、「ソラリス」が怪談やホラーと違う点は、登場人物達がそれぞれが専門ジャンルの知識や過去の資料を基に、現在の状況を観測し、比較的冷静に分析しているところでしょうか。

 SF作品は読みにくい翻訳ものが多く、ただでさえ専門用語や独特の言い回しがあるというのに、直訳調で、日本語なのに何が書いてあるのかさえ、分からないような作品があります。
「ソラリス」の文章はどこまでも真っ直ぐで、静かで、読みやすく、普段SFを読まず嫌いしていた私でもスッとその世界に入っていくことが出来ました。

 ケルヴィンが赤い生きた海から送られて来たハリーとどのような結末を迎えたのか、ハリーが何者だったのかというのは、もしこのレビューを読んで疑問に思った人がいれば本書を読んでみて下さい。「ソラリス」は電子書籍版も出ています。

 ケルヴィンの苦悩、戸惑い、恐怖。その傍らに常にいるかつて自分が愛していた女性と同じ姿の海からのやって来た客人。
 夫は何を求めて、この本を課題図書に選んだのでしょう。
 この本のテーマの1つが、異類とのコンタクトと理解への試みだからでしょうか?
 私も夫もハリーのように、赤い海から生み出された生物ではないけれど、相手のことがよく分かりません。 
 例えば、夫のどういったところに私自身、惹かれ始めたのかすら、いまいちよく分かっていません。
 何となく、この人とやっていけるんじゃないかと思ったのは、茶屋でくずもちを食べていた時に、夫が真剣な顔で黄な粉の上で黒蜜を繋げて遊んでいるのを見た時でした。

 私はよく話題に困ると、作家同士でジャンル毎に分けてチーム戦の「バトル・ロワイアル」をやってみた場合、どうなるかという話をするんですが、まあ正直言って不謹慎な内容なのでそれをどこかに書いたりはしませんでした。
『文豪ストレイドッグス』がヒットしているので、今なら問題はないかも知れませんが、辻村深月さんなら「バトル・ロワイアル」をやって中盤まで生き残る、というようなことをどこかで夫が書いていたように覚えているのだけれど、ハッキリ見たわけではないから、もしかすると違うかも知れません。
 まあ、夫が既読なのは知っていますが、個人的には色んな意味で思い出深い一冊「バトル・ロワイアル」を最後の課題本にします。
「バトル・ロワイアル」英語版の翻訳を手がけたNateさんは、数年前のワールドコンの通訳でお世話になったことがあります。

 私がホラー小説大賞の公募を学生時代に知ったのは、この小説がきっかけでした。
 もし、あの時短編賞を受賞していなかったら、きっと夫とは出会う事はなく、今もおそらく独身だったことでしょう。
 夫はそれなりに器用で何でもそつなく熟し、人付き合いも悪くないので、何となく私がいなくっても誰かと結婚は出来ていたと思うんですよね。でも、私は夫以外の人と結婚した状態をイメージすら出来ないので、他の人では無理なんじゃないかなあと……。
 と、締まりのないラストになってしまいましたが、次号は円城塔による最終回です!!

●妻から夫へ
『バトル・ロワイアル』高見広春

 

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