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2016.09.20

主治医に「心付け」は渡すべきか?

高山知朗

主治医に「心付け」は渡すべきか?

30歳でIT企業を興して経営者となった高山知朗さん。ところが猛烈に働いていた40歳の時に脳腫瘍、さらに42歳の時に白血病と、2回の異なるがんを経験します。5年生存率はそれぞれ25%と40%、かけ合わせると10%という低い確率です。しかし高山さんは手術、放射線治療、抗がん剤治療の西洋医学のみで寛解し、45歳の今日まで生き延びているのです。
『治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ』では高山さんが2度の闘病経験から学んだ、病を生き抜くヒントを丁寧に解説しています。今回は「入院生活の心得」の一部を試し読みとして公開します。医師への「心付け」は渡すのがマナー? 入院生活での思わぬストレスとは? どんな病で入院する場合でも知っておくと役立つあれこれをお教えします。

*  *  *

☆主治医に「心付け」は渡すべきか?
 がんのような病気で手術を受ける際、医師に心付け、つまり謝礼金を渡した方がいいのではないか、ということを心配される患者さんもいるかもしれません。私自身もどうすべきかと迷い、幼なじみの医師・T君に相談してみました。
 彼の話を総合すると、基本的に渡す必要はない、とのことでした。昔はそういう慣習もあったようですが、最近はあまりないようです。

 国公立大学の場合は勤務医は公務員となり、金品を受け取るのは法律で禁じられています。だから私立の病院であっても、特に国公立大出身の医師は受け取らない方が多いようです。また病院として謝礼受け取り禁止を打ち出しているケースもあります。
 仮に謝礼金を渡すにしてもどの範囲にまで渡すのかという問題もあります。手術に当たるのは執刀医1人だけではありません。主治医、麻酔医、看護師さんなど、多くのスタッフが手術に参加します。また手術が終われば治療は終わりではなく、その後も入院生活は続き、多くの医師や看護師さんのお世話になります。
 じゃあ看護師さんにはお菓子でも……と考えても、謝礼禁止の病院では、ナースステーションに菓子折りを持って行っても、頑(かたく)なに受け取ってもらえないというケースもあります。
 以上のような背景から、私は謝礼金は全く渡していません。謝礼金の有無では医療の質は変わらないと思います。

 なお、私は退院後の定期診察の際には、先生たちにちょっとしたお菓子をお持ちすることがあります。コンビニで買った100円のチョコなどです。「診察で疲れたときにでも食べてください」とお渡しすると、みなさん「ありがとうございます!」と笑顔で受け取ってくれます。
 謝礼金よりも、こうしたちょっとした気遣いと、何よりも元気な姿をお見せし続けることが、先生たちにも看護師さんたちにも一番喜んでもらえるように私は思います。
 

☆入院生活のストレス
 入院生活では様々なストレスを感じるものです。私が感じたストレスをいくつか挙げてみます。

 ・音のストレス
 同室の患者さんの咳、いびき、食事を食べるときの音などが気になることがありました。またお見舞いに来たご家族との会話の声が大きくて気になったこともあります。

 点滴ポンプの警告音や、ナースステーションの電子機器の警告音などにもよく悩まされました。夜中に目が覚めてしまうこともありました。
 私はこうした音のストレスは、昼間はノイズキャンセリングヘッドホン、夜は耳栓などでしのいでいました。

 ・プライバシーがないストレス
 病室ではほとんどプライバシーがないということも、ときにはストレスに感じました。ベッドの周りはカーテンで囲まれていますが、いつでも突然看護師さんが「高山さん、点滴交換に来ました」「検温に来ました」とカーテンを開けて入ってきます。もちろんカーテンを開ける前に声をかけてはくれますが、それでも突然の来訪には変わりありません。本を読んだり映画を見たりしているときに突然カーテンが開いて「うわ、びっくりした!」ということが何度もありました。

・共有施設の順番待ちのストレス 
 シャワーやトイレ、洗面所などの共有施設の順番待ちにストレスを感じることもありました。シャワーは予約をとって浴びますが、前の人が遅れることもありますし、逆に自分の時間がかかってギリギリの時間になってしまうこともありました。
 トイレや洗面所は、「隣の◯◯さんが今出て行ったのは歯磨きだから、もう少し後で行ったほうがいいな」などと考えてしまいました。

・点滴のストレス 
 血液がんの治療中は点滴をしている時間が非常に長くなります。点滴でも副作用とは別にいろいろなストレスが発生します。
 例えば、点滴を入れるための注射の痛さや、首に挿入したCVカテーテルの違和感。体に強い薬を流し込んでいるという気持ちの悪さを感じる人もいるかもしれません。
 また点滴中にシャワーを浴びたりトイレに行ったりするときには、点滴スタンドを持ち込む必要があります。そのスタンドやライン(管)の取りまわしに煩わしさを感じることもあるでしょう。

 こうしたストレスの感じ方は、自分の体調や入院する病棟(診療科)に大きく依存するように思います。
 グリオーマの治療で入院している間は、術後の回復が順調で、放射線治療や抗がん剤治療の副作用もなかったため、ストレスなく快適に過ごせました。
 逆に悪性リンパ腫の治療で入院しているときは、ここに書いたような様々なストレスを感じました。抗がん剤治療の副作用に苦しんだことも影響しています。体調が悪いときは、余裕がなくなり、通常であれば気にならないことでも、過剰にストレスに感じられてしまいます。

 でもこうしたストレスは永遠に続くわけではありません。次第に慣れてきて気にならなくなるものもあります。また外泊すればリセットされます。そして退院すれば根本的になくなります。

 次の外泊や退院を目標に乗り切りましょう。

(高山知朗『治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ』「第三章 がん闘病から学んだ患者学」に続く)

次回『代替医療に期待しすぎると取り返しがつかない』は、9月24日公開予定です。

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関連書籍

『治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ』
 高山 知朗 著
 
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