毎日を1%ずつ新しく生きる! 刺激と感動のマガジン&ストア

★がついた記事は無料会員限定

2016.09.05

哲学とは一種の観光である

東 浩紀

哲学とは一種の観光である

ネットは、階級を固定し、人間関係を縛り、そこから逃げ出せなくなる道具だーー。グーグルの予測検索で、Facebookで、そう実感する人も多いでしょう。そんなネットの世界からもはや逃れられない私たちはどうすればいいのか? 単行本発売時から、SNS時代の人生論として話題をさらった『弱いつながり 検索ワードを探す旅』が文庫になりました。ネットの統制から逃れるために何が必要なのか? 巻末に掲載された「紀伊國屋じんぶん大賞2015」受賞コメントによると、そのヒントは、「哲学」と「観光」にあるようです。


哲学者と観光客は似ている

 紀伊國屋じんぶん大賞に選ばれたとの報を聞き、光栄に思っています。

 本書でぼくが訴えたかったのは、ひとことで言えば、「哲学とは一種の観光である」ということです。観光客は無責任にさまざまなところに出かけます。好奇心に導かれ、生半可な知識を手に入れ、好き勝手なことを言っては去っていきます。哲学者はそのような観光客に似ています。哲学に専門知はありません。哲学はどのジャンルにも属しません。それは、さまざまな専門をもつ人々に対して、常識外の視点からぎょっとするような視点を一瞬なげかける、そのような不思議な営みです。ソクラテスの対話編には、哲学のそんな本質がすでに明確に刻まれています。

 しかし、そのような観光客的な知のありかたは、現実の観光産業の隆盛とは対照的に、いまの日本ではもっとも蔑まれ、憎まれるものになってしまっています。メディアは専門家に支配されています。そして大衆はつねに答えを求めています。日本をよくするのはどうすればいいのか、いつ結婚しいつ子どもをつくればいいのか、格差社会で生き抜くにはいくら貯金すればいいのか、無数の専門家が無数の答えを提供しています。けれどそのような答えに疑問を投げかけ、立ち止まらせる言説は必要とされない。ぼくとしては、この本では、そんな風潮に小さな一石を投じたつもりでした。

 本書は、哲学や思想にまったく親しみのない一般読者に向けた、一種の啓蒙書というか自己啓発書です。気軽に、観光ガイドのように読める本です。この受賞をきっかけに、より広い読者が手にとってくれることを望んでいます。

 哲学は役に立つものではありません。哲学はなにも答えを与えてくれません。哲学は、みなさんの人生を少しも豊かにしてくれないし、この社会も少しもよくはしてくれない。そうではなく、哲学は、答えを追い求める日常から、ぼくたちを少しだけ自由にしてくれるものなのです。観光の旅がそうであるように。 
(「紀伊國屋じんぶん大賞2015」大賞「受賞コメント)
**

『弱いつながり 検索ワードを探す旅』目次

0 はじめに     強いネットと弱いリアル
1 旅に出る     台湾/インド
2 観光客になる   福島
3 モノに触れる   アウシュヴィッツ
4 欲望を作る    チェルノブイリ
5 憐れみを感じる  韓国
6 コピーを怖れない バンコク
7 老いに抵抗する  東京
8 ボーナストラック 観光客の五つの心得
9 おわりに     旅とイメージ

◆哲学とは一種の観光である
◆文庫版あとがき
◆解説 杉田俊介

 

★がついた記事は無料会員限定

記事へのコメント コメントする

コメントを書く

コメントの書き込みは、会員登録とログインをされてからご利用ください

この記事を読んだ人にはこんな記事もおすすめです
  • 相手の力を利用すれば、実力以上の仕事ができる。
  • 専門知識不要、伸び続ける投資法のしくみがわかる
  • 神仏のご加護をもらうコツを全編書き下ろし
  • 山本周五郎賞受賞作『後悔と真実の色』続編
  • 麻生幾、浦賀和宏、小路幸也らによる書き下ろしミステリー小説が100円で発売!
  • 結果を出すため0のカギを握るのは、「余裕=ゆとり」
  • どうしたら女性であることを楽しめるのでしょうか?
  • 俺はまだ、神に愛されているだろうか?
  • あの子は、私の子だ。 血の繋がりなんて、 なんだというのだろう。
  • 我欲にまみれた20兆円産業の闇を突く。
相手の力を利用すれば、実力以上の仕事ができる。
専門知識不要、伸び続ける投資法のしくみがわかる
エキサイトeブックス
今だけ!プレゼント情報
かけこみ人生相談 お悩み募集中!