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斜陽産業でも売上を伸ばす最強の営業術

2016.09.14 公開 ツイート

お客様の顔が浮かぶような顧客台帳をつくる 青木慶哉

ローカルビジネスに磨きをかけて、更なるチャンスをつかもう

  10代から新聞販売の世界に飛び込み、30分500円で高齢者の困りごとを解決する「まごころサポート」というサービスを導入して大ヒットさせた青木慶哉さん。青木さん流のローカルビジネスを成功に導くヒントをまとめた『感謝される営業』から、最終回はお客様のニーズを汲み取るために必要な視点について解説します。

 

(5)お客さんを「ひと塊」で見てはいけない

ローカルビジネスの強みは、ローカルに徹底的にこだわることでより一層の磨きがかかります。顧客台帳にはどんな情報が記録されていますか? その情報が、今後のビジネスの成長に大きな影響を与えます。

 今からでも遅くはありません。ぜひ、最高の顧客台帳を目指してください。 

 「感動を生む」ための取り組みがおろそかになっている業界や組織に多いのが、「お客さんをひと塊で見てしまいがち」だということです。

 例えば、新聞屋さんの場合、「読者」というのをひと塊で見ると、「ウチの読者は何を持っていけば喜ぶかな」ということで、「平均」を狙いにいきます。その結果、「洗剤は毎日の生活の中で絶対使うからきっと喜ばれるよね」という、昔から変わらない考え方に至ってしまいます。

 だけど、実際のところは、粉洗剤はほとんど使わないおばあちゃんもいる。化学成分的に、使わない人もいる。にもかかわらず、ひと塊で見てしまう。だから、お客さんを手っ取り早く喜ばせる方法っていうのを安易に考える癖がついてしまうと、いつまでも変化するためのヒントやきっかけを見つけ出すことができないのです。

 お客さんとの絆を太くするための良いアイディアが湧かない人というのは、顧客をひと塊で見る傾向が強いと感じています。そして、良いアイディアが浮かばないからと言って、事業を成長させることを諦めてしまう。それでは、ファンを増やす絶好の機会があったとしても簡単に逃してしまうことになります。

 何か新しい施策を考える時は、その施策を喜ぶ人と喜ばない人がいるということを前提に置き、それぞれがなぜ喜ぶのか、喜ばないのか、理由を考えましょう。さらに、最終的にはバイネーム(名指し)で「個人的感情的つながり」を構築することを考えることで、お客さんにとって必要なこと、僕たちに求められていることが見えてくるのです。

 僕が今取り組んでいる「まごころサポート」も、一人のおばあちゃんが困っている姿を見て生まれたもの。新聞販売店のオーナーとして、そしてローカルビジネスアドバイザーとしての目指すべき方向や存在意義というのは、個人のお客さんから教えてもらったと言っても過言ではありません。

 そういえば、以前、新聞屋さん同様に地域密着型の商売をされているクリーニング屋さんから、ローカルビジネスを成功させるためのアドバイスを求められたことがあります。

 クリーニング屋さんも、今、大変厳しい状況です。家庭用の洗濯機が進化して、家でドライクリーニングもできますし、夏場はクールビズでスーツを着ないサラリーマンも増えていますし……。

「クリーニング屋さんは、どんなターゲットで営業するんですか?」とオーナーさんに尋ねたところ、

「ターゲットは30、40代のサラリーマンです。だから、どの店もカッターシャツの料金を下げるんです。そうすれば、その後にスーツもクリーニングに出してもらえるようになります。その世代には子どももいるから、学生服も出してもらえる……という算段です」

 という回答が。「30、40代のサラリーマンを狙え」というのが、クリーニング業界の王道のようです。

 ところが、「新聞に折り込みチラシを入れて、『カッターシャツを安くします』と宣伝しても、ここ数年は売上が伸びないんです」と、その方は悩んでおられました。

 今、新聞を読む方の多くは、会社を定年退職した「シニア世代」なんですね。でも、お客さんをひと塊で見ると、「もっとチラシを入れないと」とか、「チラシがダメならポスティングだ」といった、誤った努力にお金と時間を費やしてしまい、最終的には、「クリーニング業界はもう終わっているんだ」という諦めの言葉を口にしてしまうようになるのです。

 ぜひ、お客さん一人ひとりを見てほしいんです。例えば、カーテンは、カーテンレールからフックをすべて外して、クリーニング屋さんに持っていって、さらにカーテンレールに取り付ける……というのは肩が痛かったり、足腰の弱っているおばあちゃんにとっては重労働です。では、「カーテンレールから外すところから取り付けるところまで全部やりますよ」とか、「家具を移動させてカーペットを巻き上げて、クリーニングして、家具の下に敷き直すところまで全部やります」といった「サポート付きクリーニング」というのをやれば、そこには大きなニーズがあるのでは?……というお話をさせていただきました。

 一人ひとりの生活を見つめていった時に、「カッターシャツを出す人がいなくなった」ではなく、「今までスーツを出しに来てくれていた人たちがリタイアした時に、次はどんな役に立てるのだろう? どうしたら地域の中で、存在感を持てるのだろう?」と考えるためには、ひと塊でくくってしまうのはとても危険です。

「カッターシャツを安くすればお客さんが集まる」という固定観念を捨てましょう。そして、「斜陽ビジネスだから」と、諦めて思考停止状態に陥ることは回避しましょう。

 これらのアイディアは、お客さん一人ひとりの生活に関心を払い、注意深く観察し、頻繁に会話する中から見つけ出すことのできるアイディアです。ぜひ、顧客台帳にはお名前、ご住所、お電話番号はもちろんのこと、年齢や、家族構成、趣味、お困りごとなども記録していきましょう。

 ローカルビジネスに打ち込み、地域ナンバーワンのお客さん想いの会社に成長できれば、みなさんの会社とコラボしたい、事業提携してほしい、といったビジネスチャンスが大手企業からたくさん集まってくるようになります。

 多くの大手企業は、ローカルビジネスに磨きをかけている地域密着企業と提携したいと考えています。みなさんの今後には、大きなチャンスが拡がっています。諦めたり、愚痴をこぼしている暇はありません。今すぐ、顧客接点を増やす活動を始めましょう。

 

ひと塊でお客さんを見ると、

 より良いアイディアは生まれない。

「個人的感情的つながり」を突き詰めれば、

 自ずとビジネスチャンスは見えてくる。

 

関連書籍

青木慶哉『感謝される営業 超ローカルビジネスの未来』

そんな売り方で誰が買いますか? 任された新聞販売店は崖っぷち。 「まごころ」をサービスにする仕事術とは? 新聞屋さんや牛乳屋さん、電気屋さん――。 町に根を張り、地域の人から長年必要とされてきた 「超ローカルビジネス」の多くは時代のはざまに立っている。 10代から新聞販売の世界に飛び込み、 激しい営業競争に打ち勝った著者が語る 超ローカルビジネスを成功へ導く考え方。 自分自身の5年後、10年後が見えなくて不安な時、 現状が変えられず心がくじけそうな時に、 読むと勇気がわいてくる一冊。 目次 第1章 斜陽の新聞販売業、復活にすべてを賭ける 第2章 シニアと地域に愛される会社をつくろう! 第3章 どん底からのV字回復、迷わずこの道を進め 第4章 僕が夢見る超ローカルビジネスの未来

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斜陽産業でも売上を伸ばす最強の営業術

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青木慶哉

 読売新聞販売店の営業マンとして関西地区コンテスト2年連続優勝。その後、若干23歳で関西の新聞販売店のオーナーを任される。「30分500円で高齢者のちょっとした困りごとをお手伝いする」という「まごころサポートサービス」をスタートしたところ、大ヒット。現在は株式会社GEE&BEEの代表取締役、MIKAWAYA21株式会社の取締役として、シニア向けのサポート事業導入のための講演活動やコンサルティングを行っている。

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