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斜陽産業でも売上を伸ばす最強の営業術

2016.09.03 公開 ツイート

「経営者は孤独」であってはいけない 青木慶哉

経営者こそ、仲間を増やそう!

  10代から新聞販売の世界に飛び込み、30分500円で高齢者の困りごとを解決する「まごころサポート」というサービスを導入して大ヒットさせた青木慶哉さん。青木さん流のローカルビジネスを成功に導くヒントをまとめた『感謝される営業』から、2回目は同じ志を持つ仲間の増やし方について紹介します。

 

(2) 地域全体の「営業マン」を増やそう

「経営者は孤独」と言う人は多いけれど、経営者なら仲間をつくることに真剣になるべきです。「同業者の中には、近くのエリアには、同じような考え方の人がいない」と感じることがあるかもしれませんが、積極的に出かけていきましょう。

 また、SNSも活用しましょう。自分から発信することを意識すると、共感してくれたり、同じ志を持つ人たちが増えていきます。ローカルビジネスだからといって、ローカルエリアに閉じこもっている必要はありません。

 どれだけ人並み外れたスキルや能力を持っていたとしても、一人でできることには限界があります。だからやっぱり、何かを成し遂げる上で、「仲間を増やしていくこと」はとても大切。スタッフも、さらにはお客さんも仲間になってくれれば、口コミはどんどん大きくなり、地域全体にお店の「営業マン」が増えていくようなものですから。

 そのために必要なのは「伝える」という行為だと、僕はこれまでの経験から常々感じています。

 残念ながら、人間には「テレパシー」という能力が備わっていないので、「言わなくてもわかってくれるだろう」という考えは厳禁。言葉を発信しなければ、誰にも何も伝わりません。

 僕は印刷機を使って毎日お手紙やミニコミ紙を書き、自分の想いを伝えていました。読者は、お客さんだけではありません。スタッフも、僕の手紙の大切な読者でした。

 例えば毎月、給料日には、給料袋の中に直筆の手紙を入れていました(これは当時、給料袋の中身がペラペラだったので、できるだけ給料袋を分厚くする方法はないかな……という苦肉の策でもありましたが……)。最初はみんな、とても驚いていました。

 なんで僕が、新聞販売店のオーナーをやっているのか。なんで今度、お祭りをやろうと思ったのか。なんでこの前の会議で、あんな話をしたのか。最近、どんなお客さんの声が僕に届いたか……。毎月、自分の想いを手紙を通して伝えていました。

 長年働いてくれているスタッフの中には、給料袋に入れていた手紙のほとんどを大切に保管してくれている方もいます。彼女は以前、当時の手紙についてこんな風に話していました。

「スタッフはみんな、袋を開けて最初に社長のお手紙を読んでいました。営業スタッフだけでなく、集金や配達を担当しているスタッフの人にもお手紙を入れていたので、なかなか顔を合わせる機会がなくても、全員が社長の性格や考え方、ビジョンを完璧にではないにしても理解しようとしていました。だから、店舗ごとに急遽(きゆうきよ)お祭りを開催するという話になっても、反発する人はいなかったですね。『ウチの社長らしいね』と笑えるくらい耐性がついたのも、常日頃から社長が想いを伝え続けてくれていたからだと思います」 

 しかし、このような話をすると、「スタッフへの気遣いが大切で、スタッフを励まし、元気づけ、やる気にさせることが社長の仕事なのか」と感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、決してそうではありません。社長の仕事は、お客さんからの信頼を勝ち得て、会社を成長させることです。その目的を果たすためには、スタッフが快く思わないような意思決定をしなければならない時もあります。

 時々、スタッフに気を遣い過ぎるあまり、スタッフが納得しないと何も始まらないという、まさにスタッフが「意思決定権者」になっている会社がありますが、これは会社の成長を阻む大きな原因になるため、気をつけたいポイントです。

 それと、もうひとつ、僕が仲間を増やすために大切にし続けていることがあります。

 それは、どんなに大変なことでも、「お祭り」のような演出を意識して、楽しみながら取り組んでいれば自然と仲間が集まる、という想いです。

 ずいぶん昔の話にさかのぼってしまうのですが、僕は4人兄弟の3番目で、ランドセルやリコーダー、自転車はすべて兄弟や親戚のお下がりでした。一番嫌だったのは、小学校1年生の時に、いとこのサヤカちゃんからもらった自転車。『リボンの騎士』のイラストがプリントされた、見るからに女の子用のピンク色の自転車だったのです。

 僕、その自転車に乗るのがどうしても嫌で。どうしたら青い自転車が買えるか悩んだんです。それで思いついたのが、「アルミ缶回収」でした。

 当時は古新聞やアルミ缶を回収する業者さんがいて、アルミ缶を高い値段で買ってもらえたので、「そうだ、学校帰りにアルミ缶を集めよう」と思ったのです。でも、普通にそれをやったら絶対にいじめられますよね。

 想像してみてください。『リボンの騎士』の自転車にまたがり、一人寂しくアルミ缶集めをする少年の姿を……。もう、悲壮感しかありません。

 そこで、当時7歳の僕は、一生懸命知恵を絞ったわけです。そして、「アルミ缶集めをゲームにしてしまおう」という妙案を思いつきました。

 アルミ缶を両手に1缶ずつ持ち、残り1缶は足で蹴る。蹴った缶を溝に落としたりしたら、アウト。手持ちの3缶を失くさずにゴール(僕の家の前)まで蹴って帰ってこられたら、今日のステージはクリア……というルールを考えて、ゲームの主人公になったつもりでごっこ遊びをするわけです。

 そうすると、僕の家の前がゴールでしたから、ゲームの参加者は毎回アルミ缶を3缶ずつ置いていってくれる……というシステムです。

 それを僕がすごく楽しそうにやっていると、瞬く間に友達が集まって、毎日10人くらいが缶蹴りゲームに参加してくれるようになりました。

 近所の方から騒音で怒られたこともあるくらい、みんなで揃ってガラガラ蹴って。それで、みんなが帰って見えなくなった瞬間に、転がっているアルミ缶を集めて、袋に詰めて、車庫にしまって……というのを数十袋分続けました。そしてついに、6000円を貯めて、青い自転車を手に入れることができたんです。

 現状に何か嫌なことがあると、何としてでもその状況を打破しなければ……と、憂鬱(ゆううつ)な気持ちになってしまいますよね。けれど、悲愴(ひそう)な顔をして向き合っていると、仲間が現れないし、打破できたとしても、振り返った時に「とっても辛くて暗い過去」になってしまいます。

 じゃあ諦めるのかというと、そうではなくて。当時の自分のように、楽しみながら現状を打破していくためにはどうしたらいいのかなっていうのを、この話を思い出しながらいつも考えています。

 自分が誰よりも楽しんでいたら、必ず、ついてきてくれる仲間は見つかります。

 

「言わなくてもわかる」は

 誰にも通用しない、大きな勘違い。

「伝える」ことと、

「楽しむ」ことを意識すれば、

 仲間が増えていく。

 

関連書籍

青木慶哉『感謝される営業 超ローカルビジネスの未来』

そんな売り方で誰が買いますか? 任された新聞販売店は崖っぷち。 「まごころ」をサービスにする仕事術とは? 新聞屋さんや牛乳屋さん、電気屋さん――。 町に根を張り、地域の人から長年必要とされてきた 「超ローカルビジネス」の多くは時代のはざまに立っている。 10代から新聞販売の世界に飛び込み、 激しい営業競争に打ち勝った著者が語る 超ローカルビジネスを成功へ導く考え方。 自分自身の5年後、10年後が見えなくて不安な時、 現状が変えられず心がくじけそうな時に、 読むと勇気がわいてくる一冊。 目次 第1章 斜陽の新聞販売業、復活にすべてを賭ける 第2章 シニアと地域に愛される会社をつくろう! 第3章 どん底からのV字回復、迷わずこの道を進め 第4章 僕が夢見る超ローカルビジネスの未来

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青木慶哉

 読売新聞販売店の営業マンとして関西地区コンテスト2年連続優勝。その後、若干23歳で関西の新聞販売店のオーナーを任される。「30分500円で高齢者のちょっとした困りごとをお手伝いする」という「まごころサポートサービス」をスタートしたところ、大ヒット。現在は株式会社GEE&BEEの代表取締役、MIKAWAYA21株式会社の取締役として、シニア向けのサポート事業導入のための講演活動やコンサルティングを行っている。

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