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障害者にとっての<性>と<生>を考える

2016.08.21 公開 ツイート

後編

「関係欲」は商品化できるか? 上野千鶴子/坂爪真吾

障害のある人たちは、どのように自分や他人の性と向き合っているのでしょうか。それらの喜びや悩みは、障害の無い人たちと同じものか、それとも違うものなのでしょうか。

重度身体障害者の射精介助など障害者の性の支援に長年携わり、去年から今年にかけて『はじめての不倫学』『性風俗のいびつな現場』とベストセラーを連発した坂爪真吾さんの最新刊が、『セックスと障害者』(イースト新書)です。

今回、坂爪さんの東大時代の師匠・上野千鶴子さんをゲストに招き、フェミニズムの立場から見た障害者の<性>と<生>について、また弟子の言論活動についての評価など、縦横無尽に語ってもらいました。

<後編>では、会場の参加者との質疑応答まで収録。AV監督の二村ヒトシさんも加わり、刺激的な議論が交わされました。(2016年6月9日、八重洲ブックセンター本店)

あなたにはあまり期待してなかったかも(笑)

上野 今日はここを引用しようと思って、付箋つけて持ってきたの。『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書 2016)のあとがきを読み上げます。
『「ルポルタージュでいいんじゃないのか?」二〇〇三年のゼミで風俗研究の中間発表をした際、指導教官の上野千鶴子からこう言われた』。
これ、私が言ったの?

坂爪 言いましたよ。しっかり覚えていますから(笑)。

上野 記憶にありません。「私は『ルポじゃダメなんです!』と心の中で叫んだ」と続くけど、この時、言葉にしなかったの?

坂爪 ちゃんと反論はしたと思うんですよね。単にルポを書いて終わりじゃなく、もうちょっと理論的なものを出したい、みたいなことは言いましたけど。

上野 だいたい自分が言ったことは忘れているんだけど(笑)、「私としたことが、なんでこんなことを言ったんだろう」って、ちょっと反省しました。私は今も大学院生を教えていますけど、つね日頃、「来た、見た、書いた」は許さない、と言っているの。「来た、見た、書いた」ってルポですよね。ルポを書きたいなら社会学に来るな、と言っているんです。でも、それを言ってる私が、坂爪君にこんなこと言ったのか、ドキッ。

坂爪 ドキッ(笑)。

上野 理由は二つぐらい考えられるのよね。一つは、もしあなたがプロの研究者を目指していたとしたら、たぶんそんなことは言わなかったと思う。もう一つ、「しょせん、学部生の卒論なんて」という気持ちが私のどこかにあったかも。学部生の卒論に対しては期待水準が全般に低いから。

坂爪 まあ、全般に低いですね(笑)。

上野 上野ゼミで学生の噂話が耳に入る。「上野さん、○○君にとても優しかった。あれって彼に期待していないからじゃない?」って。……これ事実なのよ。甘いとか優しいとかっていうのは、期待水準が低いから。期待水準の高い学生には私は容赦なかったと思う。だから、あんまり期待してなかったかも(笑)。

坂爪 なるほど、そういうオチですか(笑)。

上野 学部ゼミの時は、あなたは風俗業の研究をやっていたんだよね。同じゼミの女子学生に評判が悪かったよねえ。

坂爪 ですね。ひんしゅくを買っていたんじゃないかと。

上野 うん、私、「調査費、いくらかかってるの?」とか嫌がらせを言ったよね?

坂爪 言いましたね(笑)。

上野 でも、やめろとはひと言も言わなかった。

坂爪 そこは素晴らしいところだと思います。

上野 上野ゼミは抑圧しないから。それで、のびのび、思う存分おやりになった。
続けて、読み上げます。
「ゼミ合宿の発表の場で、猛者揃いの院生の先輩方と上野先生から完膚なきまでにこき下ろされるという惨劇の主人公になった。それにしても、いたいけな学部生の微笑ましい失敗を、教授と修士と博士がよってたかって叩きまくるとは、血も涙もないゼミである」(笑)。

坂爪 いや、事実なんで(笑)。

上野 「それから一二年の歳月を経て本書を世に問うことができ、個人的には感無量である。タイムマシーンがもしあるならば、あのゼミ合宿の日にタイムスリップして、拙い論文の代わりに本稿の原稿をドヤ顔で発表し、院生と先生にギャフンと言わせてやりたい」。はい、本日のご感想は?

坂爪 じゃあ、ぜひ今日、「ギャフン」と言っていただけると(笑)。

上野 「ギャフン」とは言わないけど(笑)。ちょっと学位論文には届かないけど、十分に修士論文級の優れた研究だと思います。

坂爪 あ、そう言っていただければ。ありがとうございます!
 

いまのところキミの仕事は、賞味期限の短い「消費財」

坂爪 個人的な質問になるんですが、自分もいっぱい本を出してすごく思うのが、出版業界ってけっこう才能を消費するというか、若手の才能を消費しちゃう部分があると思っていて……。

上野 そうなのよ、ハイエナみたいな人たちが多いから。

坂爪 そうした中で、コンスタントに本を出し続けていくコツ、書き続けていくコツみたいなものがあればお伺いしたいです。

上野 キミ自身は、どう思う? 「新書」は賞味期限が短期間の消費財だから、キミが出してきたのは、その連続だと思う?

坂爪 いや、自分としては、やっぱりできるだけ古典になりうるようなものを書こうと思って頑張ってはいるので、寿命は延びてほしいなあと思います。

上野 いまのところ、キミの仕事は賞味期限の比較的短い消費財。性風俗の現場だって、変化が早いでしょ? 

坂爪 グルグル変わっちゃいますからね。

上野 たぶん5年後に読んだら、「えっ、そんな時代があったの?」みたいな。

坂爪 うーん、たしかになりえますよね。

上野 だから、時流に乗っかった消費財をどんどん出していくと、やたらと新刊書の数は増えるがマーケットのパイ全体は小さくなる悪循環が起きている。でも、この分野の研究をしようと思えば、ここを通過しなければ先に行けないマイルストーン(里程標)みたいな仕事もある。だから、あなたにもそういう仕事をやってほしい。

坂爪 自分も学者じゃないですけど、マイルストーン的な、この分野ではコレというものを書ければと、それはすごく意識しています。

上野 うん、それは新書じゃダメなのよ(笑)。新書はやっぱり、消費財だから。
 今日入れ知恵しようと思ったのは、あなたの強みは実践現場を持っているということ。ただの研究者やノンフィクションライターやルポライターじゃない。目の前の課題を解決するための研究を、私たちの業界では「アクションリサーチ」って呼んでいます。

坂爪 アクションリサーチ。か、かっこいいですね!

上野 かっこいいでしょ。「問題解決型参与観察」。現場におけるさまざまな問題を実践的に解決していくのに役立つ研究のことをいうんです。しかも、坂爪君は実践を事業にしてしまった。

坂爪 アクションリサーチ……。すごくキラキラした言葉ですね(笑)。

上野 今、私が教えている大学(立命館大学先端総合学術研究科)でもそうだけど、何十年間、現場を持っていた人たちが「経験をちゃんと言語化したい」という意欲を持って来る人たちがいる。学位論文ってアメリカ流ではアカデミックキャリアの出発点だけど、昔はドイツ式で到達点でもあった。あなただって今の社団法人の活動を5年間もやってきたら、変化を肌で感じるでしょ?

坂爪 かなり感じますね。

上野 さらに5年やったら、また変化を感じる。男も変わるし、女も変わるし、障害者も変わってくる、制度も変わる。仮にこの事業を20、30年蓄積したら、現場を体感してきたのは世の中でキミしかいないという、貴重な資源が生まれる。それを言語化するスキルがキミにはある。あのね、経験があるということと、書くスキルがあるということとは別なことだからね。

坂爪 たしかに。経験があっても書けない人もいますし。現場と、書く場所ですね。

上野 そう。でも、現場というのはそんな簡単にはゲットできないのよね。だから現場を持っている人が、後から理論や書き方を覚えるというのは簡単だけど、単に理論や書き方を知っている人に論文が書けるかといったら、そんなことはない。現場を持っている人が、確実に強いんです。

坂爪 そこの強みをうまく活かしていけるように頑張れればとは思います。

上野 だから、「ボク、アクションリサーチをやってます」って言って、社会学には便利な道具がいろいろあるから使えるものは使ったらいいと思います。出版業界とかジャーナリズムとかは、ハイエナの集団ですから。

坂爪 あ、ハイエナばかりなんですね(笑)。

上野 ハイエナって、編集者に対するほめ言葉です。いちばん腐った美味しいところに飛びつく人たちなので。消費財にならないように注意しなさいね、とは言っておきたいです。
 

コミュニケーションスキルを磨け、さもなくば死ぬまでマスターベーションしてろ

坂爪 質問応答に移りましょう。

(質問者女性)先ほど射精介助は皆さん女性を希望しているという話がありましたが、突き詰めて「関係欲」のほうまでいくと、ジェンダーが関係なくなるイメージが少しあります。関係欲を満たすセックスワーク、商品化とは何になるとお考えでしょうか。

上野 マスターベーションなら、身体が若干不自由でもロボットやアンドロイドみたいなものが補助具になれば、どのようにでもなります。

坂爪 ですね、はい。

上野 肩こりをほぐしてもらうようなもので、緊張がほぐれたらすっきりして、よく眠れます、みたいに、マスターベーションした後もよく眠れますし(笑)。その程度の欲望充足は簡単にロボット化もできるだろうし、商品化もできるでしょう。でも私は、「関係欲」って商品化できるのか、という根本的な疑問があります。例えば、坂爪さんが学部時代にやった恋人風俗の研究は……。

坂爪 恋人プレイの風俗ですね。

上野 マニュアル通りの恋人モードで、妄想系のシナリオの共演者をやってあげると。これを本人は「関係欲」というかもしれないけども、そうやって成立したものを「関係」と呼ぶのかという根本的な問題があります。関係欲や関係願望は商品化できるのか。「関係に対する欲望っていったい何なの?」と言ったら、「愛し愛されたい」でしょ? 「ボクを理解して」、「キミを理解したい」なのでは?

坂爪 承認と承認ですね、はい。

上野 承認と承認の交換であって、妄想と妄想のすり合わせじゃないよね? だとしたら、関係欲の商品化って、どう考えても論理矛盾だと思う。

坂爪 ま、不可能ですね。

上野 だとしたら、やっぱりそれぞれ関係のスキルを磨いてもらうしか仕方ないじゃない。大昔、宮台真司さんと対談した時に、「他人と関係したければコミュニケーションスキルを磨け、それができなきゃ死ぬまでマスターべーションしてろ」と言ってひんしゅくを買った(笑)。死ぬまでマスターベーションしている方が、他人の肉体を巻き込む必要がないから、平和です。それで、ずいぶんご批判を受けたんですけど、なぜでしょう?

坂爪 たぶん、コミュニケーションスキルを磨きたくても磨けない人とか、どうしようもない人とかはいっぱいいて……。

上野 そういう人は関係を諦めたらいいじゃないですか。

坂爪 いや、そこで諦められないのが、人間の性(さが)ってものじゃないんですかね。

上野 誰だって、ほしいものは努力して手に入れるものでしょ。努力もしていないのに、ゲットできないからって、怒ってもしょうがないよね。
ソウルで私の『女ぎらい ニッポンのミソジー』(紀伊國屋書店、2010年)の韓国語訳がバカ売れしているんだそうです。なぜかと言うと、ソウルの江南というところでミソジニー殺人、ウーマンヘイト殺人があって、30歳の独身男性が、20代の面識のない女性を公衆トイレで刺した。殺す前に残した男性の言葉が、「女から相手にされない、女が憎い」。私は、即座に秋葉原の加藤智大君を思い出しました。承認がほしけりゃ、承認が得られるようなふるまいをせえよ、って。当たり前じゃん。これ以上何を言ったらいい?

坂爪 でも、それもけっこうネオリベ的な発想になるなあって……。

上野 ネオリベじゃないよ。これって、対人関係の基本のキ。坂爪君の『男子の貞操』(ちくま新書 2014)にも、そう書いてあるじゃない。ちゃんと愛し愛される、尊重し尊重される関係を作るというのが大事だよって。すべての男子中高生に読ませたい本だよね、これ。

坂爪 ああ、ありがとうございます(笑)。

上野 学校の性教育の教科書にしてもいいぐらい。今の質問者の問いに、坂爪さんならどう答える?

坂爪 『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書 2016)でも書いたんですけど、自助努力ができない女性を、じゃあそのままほっといていいのかというと、違うと思うんですよね。いちばん底辺の激安風俗店に集まってくるような女性は、自分の力で頑張れないからそこに来るわけで、でも頑張れないからって……。

上野 女性じゃなくて、男はどうするの?

坂爪 その辺のことは、次の本で書こうとは思っているんです。30半ば過ぎて、彼女がいなくて、ずっと非正規雇用みたいな感じの方が、どういうふうに性と折り合いをつけていくのか、というのを。

上野 その彼女がいない、というのが何を意味するかということなんだけど...。

坂爪 自分だけで満たされる人もいるとは思うんですけれども、やっぱりパートナーがいないと苦しいという人がいっぱいいると思うので、そういった人がどうするかという……。

上野 男に必要な承認というのは、女からの承認じゃなくて、実は同性の男からの承認じゃないかしら。

坂爪 あ、それは確実にありますね。そうかそうか……。
 

AVを見せれば介助者が男性でもよくなる?

上野 会場にAV監督の二村ヒトシさんがいらしています。

二村監督の近著は、湯山玲子さんとセックスの絶望と希望について語った

二村 上野さんの「ホワイトハンズは女性を派遣しているけれどもそれは介護か?」という話って、坂爪さんに対する抜本的な問いだと思うんですよ。僕、坂爪さんに「その時に例えばAVは見せないの?」って質問したことあるけど……。

坂爪 見せないですね、はい。

二村 介助される男性が、介助してくれる女性のことを好きになっちゃうことが僕は心配ですけど、そういうことは起きないんだろうか?

坂爪 恋愛感情に発展しやすいのは、傾向的に中途障害の方がなりやすいんですよ。うちはわりと脳性麻痺とか筋ジスとか生まれつきの方が多いので、意外と恋愛感情になることが少ないですね。というか、ケアを受けるのに慣れている方が多い印象があります。

二村 でも、射精介助は男性だと嫌なんだよね?

上野 今の話、よくわかります。やっぱり異性介助であることによって、性的ファンタジー、ファンタジーは妄想と訳せばいいんですが、その力を借りているんですよね。だとしたら、それを増幅して、いっそのことAVを目の前で見せても、どのぐらいの違いがあるんだと、おっしゃりたいのよね?

二村 はい。

上野 ほら。

坂爪 ただ意外と、AVを見ながらするという習慣がない人が多いのかなと。AVが見たいというリクエストはほとんどないですね。

上野 障害者男性だって、とっくにAV見ていますよ。

二村 そりゃそうだ。

上野 発情は脳内妄想だから、AVで発情してもらえば。

二村 逆に言うと、AVをガッツリ見せるのであれば、介助者は男性でもよくなってこないかなって。

坂爪 ああ、なるほど。

上野 あ、それはいいかも。

坂爪 あ、そうか、そうか、それは本当に盲点でしたね。検討してみます(笑)。

二村 いや、なぜ坂爪さんが「ホワイトハンズはAVは見せません」「エロ本も見せません」というところにこだわるのかが分からなくて。僕は性のコンテンツ化が商売だから。

上野 逆に言うと、なぜ「介助」なら同性介助の原則を守らないのか、というのが私のツッコミどころ。だから反対側から同じところに来たのね。素晴らしい、二村さんと意見が一致しちゃった。なんか、地球の反対側から歩いて、同じところに到達したみたい(笑)。
 

「自分が異性から愛されることは“権利”だ」という誤解

(質問者女性)私、全日本クンニ選手権というのに出場して第3位を取ったことがあります。女性が女性にするのが気持ちいいというのがあるので、男性が男性にしたらもっと気持ちいいと思うんです。

上野 ああ、ツボを知っている。

(質問者女性)そう、男性のツボはぜったい男性のほうが知っているから。

二村 仰る通りだと思います。性的な接触は異性から、つまり手コキは女性からしてもらうに決まっているというのは、現代人の常識に過ぎなくて、それこそ戦前の軍隊とか、戦後でも体育会系の部活とかでは、後輩が先輩のちんちんをしごかされていたといいます。それは軍隊的な、男性の男性に対する性的で暴力的ないじめ、もしくは親和のための習慣だったのかもしれないけど。

上野 そう、尺八を吹くのは男の仕事だよね。

二村 はい。疑似恋愛を売っているわけではない介助者を「女性であったほうがいい」というのは、「人間には異性(ゲイであれば同性)の他人と性的な行為をする権利がある」という思い込みです。オナニーをする権利は誰にでもあるから、障害でそれができないなら介助は必要だし、同性の手の感触が好ましくないなら介助者がオナホールを使えばいい。でもオナニーではない性的接触や恋愛関係というのは、その人なりのコミュニケーションによって獲得するものであって、あらかじめ誰にでも平等に与えられているのではない。これは障害のある男性だけの話ではなくて、モテない男性が「恋愛も基本的人権だ」と思ってしまい、それがないと虐げられたような気がして、最悪の場合ストーカー化して女性を殺してしまうこともある。多くの人が「自分が異性から愛されることは“権利”だ」と思ってしまっているとしたら、それはとんでもない誤解ですよ。

上野 二村さんのご提案で、おたくの社団に新しいメニューが……。

坂爪 できるかもしれないですね(笑)。

 今日は長時間どうもありがとうございました。上野さんは、「学問は極道だ」とよく仰っているんですけれども、自分としてはNPOの活動というのも学問に負けないくらい極道じゃないかなとすごく思っています。これまでいろんな人から叩かれたり、突っ込まれたり、あまりお金も儲からなかったりして、そういった点で極道チックだなとはすごく思います。でも、この社会に働きかける……今日、「アクションリサーチ」という言葉をいただきましたけど、それをすることによっていろんなリターンを得ることができるので、ある意味ではすごく面白い極道だなあと。これからもそういった活動が続けていければというふうに思っています。

上野 極道を仕事にして食えるというのは、特権です。

坂爪 特権階級かどうか分かりませんが(笑)。

上野 普通の人は、自分がしたくないことでお金をもらっているわけだから。極道を仕事にしたあなたは、学部の時から本当にコントロールの効かない人でした(笑)。

坂爪 そんなことはないです(笑)。

上野 けっきょく、やりたいことを続けてきて、誰もやったことのないことを開拓しちゃったのね。あなたの本が出るたびに私はぶつぶつ言いながら、全部読んできました。別に、製造物責任を感じているからではありません。上野ゼミという「いびつな」ゼミを選んでくれた奇特な学生さんの、その後に対する関心からです(笑)。だって、上野ゼミを選んで、就活で得することなんて、何ひとつもないもん。

坂爪 そうですね(笑)。

上野 (猫撫声で)その不利なゼミをわざわざ選んで、そこで育っていった若者のその後を、千鶴子はずっと見守っているわ。

坂爪 ありがとうございます!(笑)

(おわり)

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上野千鶴子

社会学者・立命館大学特別招聘教授・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学院大学客員教授等を経る。1993年東京大学文学部助教授(社会学)、1995年から2011年3月まで、東京大学大学院人文社会系研究科教授。2011年4月から認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。『上野千鶴子が文学を社会学する』、『差異の政治学』、『おひとりさまの老後』、『女ぎらい』、『不惑のフェミニズム』、『ケアの社会学』、『女たちのサバイバル作戦』、『上野千鶴子の選憲論』、『発情装置 新版』、『上野千鶴子のサバイバル語録』など著書多数。

坂爪真吾

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗産業の社会化を目指す「セックスワーク・サミット」の開催など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に、『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』、『男子の貞操』、『はじめての不倫学』、『性風俗のいびつな現場』がある。

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