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2016.08.05

西方の人へ

円城 塔

西方の人へ

■指定図書:「西方冗土 カンサイ帝国の栄光と衰退」中島らも

2016年06月20日の記事で、田辺青蛙さんはこう書きました。
「しかし、本になったところで、手に取ってくれる人がいるのでしょうか……サービスとして円城塔を脱がしてグラビア付録でも付けるのはどうだろう……股間には薔薇の花をコラージュして……ああ、そうだ課題図書に『薔薇刑』はどうだろう……」

2016年07月05日の記事で、円城塔さんはこう書きました。
「セクシャリティの話題はもう少し丁寧に扱って欲しい……というのが本音です」

 2016年07月20日の記事で、田辺青蛙さんはこう書きました。
「円城塔に白衣+眼鏡+ネクタイ姿で、ネクタイ外して美青年の両手を縛って「これからおしおきだ」と言っているところを撮影して載せてみるとか、おまけ案としてどうでしょうか?」

 ……ま、相互理解って何かな、っていう。

 とりあえず書籍化を目指して、僕の分があと二回、妻の分があと一回ということになったので、これまでの連載を読み返してみることにしました。不安だったのは、なによりもまず、

・何度も同じことを言っているのではないか。

 というところだったのですが、

・予想よりひどくなかった。

といったところで、年齢のわりによく頑張った、みたいな感慨がないこともないです。ただ妻が毎度「こんないい加減な自分と一緒にいて夫は辛くないのか」という意味の問いかけを続けているところはなにか、胸にくるところが……ない、かな……。
 共同生活における僕の求めるものって単純で、「共同スペースはきれいに使って欲しい」とか「予定は覚えておいて欲しい」とかそういう類です。
第12回でお願いしたのはこうですね。
「あちこちの明かりを消して歩いたり、ドアを閉めたり、キャップを閉めたり、自立するしゃもじを横に倒したりしないでいてくれたり、洗った皿は大きさ別に積んでくれるくらいで十分なのですが」
 この連載を通じて、このあたりが何か変わったかというと、明かりが消えている頻度と、ドアが閉まっている頻度がややあがったくらいですか。
 わかんないのは、同じ規格品の皿が二枚、お椀が二つあったときに、皿、お椀、皿、お椀と重なった立体構造が出現するのは何故なのかとか、自立するしゃもじを横に倒しておくメリット(位置エネルーギーの節約?)なのですが、でも、理解はしているわけです。
 これは改善されることがない、少なくとも今生では、と。
 それで、連載において僕が求めるものは……やっぱりキャッチボール、というのは高望みなのでドッヂボールでもいいんですが、現状はそれぞれの手持ちのボールを勝手に壁にぶつけたりしている感じでしょうか。不意に頭の後ろからコツリとあたって、あれ、と思うくらいの。
 それでもなんとなく仲がいいのは、お互いに、そういうなんだかよくわからない遊びが好きだからかも、と無理やり理屈をつけてみたり。

 といったところで今回の課題図書は中島らもです。亡くなってもう十二年ですか……。
 中島らもの著作はけっこう読んでいるはずで、そうですねこの集英社文庫に入っている中だと、『愛をひっかけるための釘』『人体模型の夜』『ガダラの豚』『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』『アマニタ・パンセリナ』『水に似た感情』あたりは既読です。
 といった中であえて『西方冗土』か!
 やっぱり、読んだ本ってかぶらないものです。

 本書の「はじめに」で中島らもはこう書いています。
「関西についてとくに語る、という行為自体が、すでに僕にとってはうさん臭いことなのだ。
 この本の出版をもって、関西論や関西の人、風物に関することは以降、一切書かないことにする」
 ということで関西本なのですが、読みすすめるうちに、中島らもは本当にうんざりすることが多かったのではないか、という気分になってきました。故郷へむける裏返しのうんざりとか、笑いのためやポーズとしてのうんざり、教育的配慮を含んだうんざりとかではなくて、ほんとのうんざり。素で読めばそうなるはずなのに、でも、冗談めかしたうんざりとして読まれてしまうことへのうんざり。本当にそれは真面目に考えなけりゃいけないことですよ、と返されるのに、相手の顔が笑っているようなうんざり。
 うんざりしていることが理解されないうんざりにさえうんざり、そこへ続く無限のうんざりの極限としてのうんざりへは行かず、あくまでも、理解されないうんざり、にとどまっているところに緊張感みたいなものがあります。どこまでもうんざりしてしまうことができれば、ごろごろ寝ていればよくて、うんざり感さえどうでもよくなるわけですが、中島らもはそのうんざり感をわざわざ分析していくところがあります。そうした視点が笑いを引き起こすわけですが、ちょっと辛そうかも、とつい思ってしまったりです。

 僕が関西に住んでいて困るのは、関西の人は奈良や京都の歴史を日本の歴史と思っているけど、他の地方では特にそんなこともないっていうのを知らないところで、「えっ。他の地域では違うの」ってやつですね。どこの地域でもその地域の常識ってものがありますが、その常識が日本の歴史なるものとイコールでダイレクトに結ばれていると、ちょっと、えっ、て感じになります。
 たとえば今は、「台風は北海道方面に去りました」ってこの頃は天気予報でも言わなくなったと(北海道の人にしてみればこれからくるから)思うのですが、「アテルイは田村麻呂によって平安京へ連れてこられました」みたいな文章は特に問題とされないはずです。
 でもですよ。アテルイの故地からすれば「アテルイは田村麻呂によって平安京へ連れて行かれた」になるんじゃないのかなあ、と思うわけで、そういう視点のない生活はしんどいわけです。
 中島らもは、そういう視点が欠けていることを指摘すると同時に、視点が固定しているのは何も関西だけのことではないという意味で、「うさん臭さ」を見出しています。
 「広い視点の欠如」は一般的な現象で、関西特有のものではない。
 で、その視点の欠如の仕方に、関西特有のものがありうるのかどうか、というのはかなり厳しい問題設定で、どうも中島らもはその問いに挑戦していたのではないかなあ、と思ったりでした。

 というところで、僕からの課題本は今回で一旦区切りとなるわけですが、そうですね。僕はわりと起承転結なりの形が欲しいほうなのですが、妻の方は、なんとなく目の前にあったものをエイってつかむスタイルを貫いてきたような気がしますね。その両者をうまく接続するようなもの……。ウラジーミル・ソローキン『ロマン』とか?
 いや、あれにしましょう。スタニスワフ・レムの『ソラリス』。ハヤカワ文庫SFに入っている沼野充義訳でひとつ。
 そして今月の体重ですが、75.2kg。……こちらも、オチをつけるのは難しい感じに。

●夫から妻へ
『ソラリス』スタニスワフ・レム (著)、 沼野充義 (翻訳)

 

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