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2016.09.02

東進ハイスクールの真価はカリスマ講師にあらず

鬼頭 政人

東進ハイスクールの真価はカリスマ講師にあらず
「授業を聞けば合格する」は間違い


 世の中には、難関といわれる試験をたやすく突破する人もいれば、何年頑張っても成果の出ない人もいます。この差はいったいどこから出てくるのでしょうか?やっぱり合格する人は、生まれつき優秀だからなのでしょうか?
 開成→東大文Ⅰ→弁護士と、いわゆる難関試験を突破し
結局、ひとりで勉強する人が合格する』を執筆した鬼頭政人さんによると、合格できるかどうかの分かれ道は、「独学のコツ」を知っているかどうかだといいます。ポイントは、いかに効率よく勉強し、それを持続させられるか。この連載では、いちど身につければ一生役立つ、独学のコツをご紹介いたします。

<予備校の合格者数はねつ造されている>

 少し話がそれてしまいますが、予備校が公表する合格者数というのはほとんどあてになりません。作られた数字なのです。たとえば、司法試験の合格率が高いことで有名な予備校では、東大生や京大生の授業料は7割など、かなり割引しています。

 しかも、司法試験を受験する資格を得られる司法試験予備試験を受けてパスすると、授業料が無料になります。その代わりに「合格体験記を書いてほしい」「他の予備校では書くな」、という条件がつくのです。そもそも合格しそうな人を集めているのですから、合格者が多いのは当たり前なのです。

 司法試験を受けるには条件が2つあって、いずれかを満たさなければなりません。1つはロースクール(法科大学院)を修了すること、もう1つは司法試験予備試験(一般に予備試験と言われます)を通過することです。

 ロースクールを卒業しようと思うと、24歳までかかりますから、優秀な人は予備試験を受けます。20歳くらいで合格する人もいます。そうすれば、21歳で司法試験を受けることができるのです。

 過去の合格率を見ると、大学に在学中に予備試験に合格した人が翌年の司法試験にパスする確率は9割を超えています。つまり、予備試験を通過した人は、ほぼ司法試験の合格者になるわけです。

 そういう人を授業料無料で集めて予備校の合格者として公表するのですから、講義がいいとか悪いとか、そういう次元の問題ではないのです。合格者の多い予備校というのは、優秀な人を囲い込むのが上手だという以上のものではないのです。

 私も司法試験を受けるときには、その塾なら合格できるのではないかと思い、講義の内容を確認しました。しかし、授業を受けただけで合格できるとはとても思えませんでした。

<「授業を聞けば合格する」は間違い>

 前述のように最後まで授業を受けたとしても、その理解度は1割とか、よくても3割程度です。その間に自学自習をしていれば、もっと定着していますが、授業だけであれば、非常に低い割合しか理解できないのです。

 しかし、世の中には授業を受ければ、それだけで合格すると勘違いしている人が多くいます。それだけでは無理だということに気づかない人がなんと多いことか。まさに、週に1度ジムに通っていれば、マッチョになれると思っているようなものです。

 とはいえ、予備校のスタイルも古い形のままですから、その中で効率的に学ぶためには工夫が必要になります。大学受験のための予備校と、資格取得のための予備校に分けると、大学受験の予備校のほうが、実は一歩も二歩も進んでいます。

 振り返ってみると、大学受験の分野では、代々木ゼミナール、河合塾、駿台予備学校の3強時代がありました。

 このころは、都市部の大教室で100人、200人の生徒を集めて、講義を受けていました。「カリスマ講師の授業を生で受けるのがいい」と考えられていた時代です。しかし、東進ハイスクールが台頭し「映像授業のほうが効率はいい」と新たな視点を打ち出しました。

<東進ハイスクールの真価は監視システムにあり>

 東進ハイスクールは当初、インターネットで配信して家でもカリスマ講師の授業を受けられることを売りにしていました。ところが、思ったほど効果が現れない。それは当然です。家でいつでも自由に授業が受けられるとなったら、誰しもサボってしまいます。よほど、自律的な人でなければ成果はでません。結局、多くの生徒がやめてしまったようです。

 東進ハイスクールは、どうしたか。各校舎に通わせてビデオ授業を受けさせるスタイルに切り替えたのです。林修先生をはじめとするカリスマ講師の授業がテレビなどでもしばしば話題になるわけですが、東進ハイスクールの本質的な価値はそこではありません。

 生徒がビデオ授業を受けに行くと、アルバイトの大学生が待ち構えています。そして「最近はどう?」などと声をかけます。授業に来ていない生徒には「サボっているんじゃないよ!」と厳しく指導することもあります。まるで体育会系の部活のようです。実はこれでモチベーションが維持できるのです。

 わざわざビデオ授業を見るために通うのは、一見非効率に思えますが、その後ろで監視しているというシステムを取り入れることで、うまく機能させているのです。ウェブの世界で言うと、大学受験の予備校が1・0から、2・0に進化した瞬間なのです。

 さらに3・0に進化しようという動きもあります。いまや全国に1 0 0校に迫る校舎を開講する武田塾は「授業をしないこと」を最大の特徴として打ち出しています。東進ハイスクールの例で見ても、カリスマ講師の授業は本質ではありません。アルバイトの学生による監視システムこそ、成果が出せた理由です。

 次回「やる気が長続きするアウトプット勉強法」は9月6日(火)公開予定です。
 

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