ベストセラー『感情的にならない本』など多数の著作がある、精神科医の和田秀樹さん。『男という名の絶望~病としての夫・父・息子~』が好評発売中のジャーナリスト・奥田祥子さん。対談も佳境に向かい、話題は、奥田さんが描いた現実を「明日はわが身」と思えない鈍感な人が、「中国・北朝鮮が攻めてきたどうしよう」と心配するアンバランスさへと……。


■「自己責任」と言っているかぎり何も解決しない


和田 男でも女でも、世の中の人々はそれぞれの辛さを背負っているわけですが、日本はそれを社会で引き受ける発想がきわめて乏しいですよね。たとえばアルコール依存症になるのは、本人の自己責任だと思われている。でも、現状では飲酒運転をしてしまう人の8割ぐらいはアルコール依存症だから、事故を減らしたければ、治療施設を増やすなどしてアルコール依存症を減らすことにコストをかけるべきなんです。
 ところが日本では、ただ飲酒運転を厳罰化するだけ。厳罰化する代わりに、お酒を飲んでも帰れるようにマイクロバスなどを用意するという考え方はしませんよね。するとみんな外に出かけず、家で飲むようになるんです。これはますますアルコール依存症を悪化させるんですよ。大勢でワイワイ飲むほうが、依存症にはなりにくい。パチンコなんかもそうですが、仲間と一緒に遊んでいる人は依存症にはなりません。1人でやる人が依存症になるんです。

奥田 それを「病」として治療してあげるシステムをつくらないと、根本的な解決にはならないということですね。

和田 覚醒剤などの薬物依存もそうでしょう。有名人が何度もくり返して逮捕されると「意志が弱い」などとバッシングされますが、そうやって自己責任にしていたのでは、歯止めがかかりません。再犯を防ぎたいなら、治療施設などの充実にコストをかけるべきなんです。

奥田 何でも自己責任で片づけていては、介護や育児の問題も解決しません。みんな「これは自分の責任だ。他人には頼れない」と思い詰めることで、自分自身を苦境に追い込んでいくわけですから。

和田 そういう問題を社会で引き受けて、解決のためのコストをかけない日本社会のあり方が、「かくあるべき思考」に拍車をかけているんです。

*次ページへ続く

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