毎日を1%ずつ新しく生きる! 刺激と感動のマガジン&ストア

★がついた記事は無料会員限定

2016.08.04

後編

世の中はわからないことだらけ。
それを知ろうとしないのは罪だ。

青木 俊/清水 潔

世の中はわからないことだらけ。<br />それを知ろうとしないのは罪だ。

尖閣ゲーム』(青木俊・著、幻冬舎刊)の刊行には、ジャーナリスト清水潔さんが大きく関与する。
桶川ストーカー殺人事件』や『殺人犯はそこにいる』などの著書があり、卓越した取材力で知られる清水さんと、
元テレビ東京北京支局長で『尖閣ゲーム』で作家デビューを果した青木さんによるフィクション・ノンフィクション談議。

………

青木 僕は過去や未来より、わりと生々しい「今」を小説にしたいという思いがあって。そもそもそれは清水さんから受けた影響です。清水さんの『桶川ストーカー殺人事件』や『殺人犯はそこにいる』『騙されてたまるか』といった著書から受けた影響が大きい。それほど力のある現実があるとするなら、現実を凌駕するフィクションを書きたいと。それで清水さんに何でも相談してるというわけです。

清水 僕は大したことはしてない。ただ、ノンフィクションには事実であること、あるいは真実を描くという絶対的制約がある。それこそが価値で、それを飛び越えることはできない。だからなぜ今こんな事件が起きてるか、なぜ捜査がうまく進んでないかといった時に、半分は裏付けできておそらく事実だろうけど、絶対的な事実でない以上、書けないこともたくさんある。実はそういうことってすごく多い。さらに、書けないことのなかに、重要なことも往々に含まれているものなんです。

青木 清水さんの実績はすごくて、桶川事件はストーカー規制法に結びつき、足利事件だってそうです。もちろん清水さんの力だけで動いたわけではないけど、確実に清水さんの取材やアウトプットが大きな力となって法制化を進め、現実を動かしている。そんな取材者ほかにいませんよ。とにかくダントツ。

清水 僕がやってる調査報道は、記者が、警察情報を元に書くのではなくて自分で調べて書く。このように調べたらこういうことがわかったということを書く。その際に事実であることは絶対条件だけど、ストーリーとして読みやすいかも重要で、だから僕は一人称で、僕が出会った様々な人を僕目線で描くわけです。

青木 たくさん取材をして、人格的にも清水さんはとても立派だから、取材先の人たちともその後も仲良くお付き合いをされているわけで。そうした事件関係者の目線も、小説のメソッドなら書けるな、と。ジャーナリズムの手法で掬い上げることができないものも小説という形で世に問えるわけです。

清水 ノンフィクションは書けないことがたくさんあって、でも立証できないけど、本当は皆が知った方がいいこともある。例えば『殺人犯はそこにいる』では、僕が犯人だと思うルパンという男がいます。なぜ彼が捕まらないのかとよく聞かれる。僕は捜査している人間ではないからわからないけれど、おそらく「こういう理由だよね」というのはわかる。ただそれを報じることはできない。それでも、その構造は、本当は世の多くの人が知っておくべきだと思っている。憶測も混じってるけど、なんらかの形で世に発したいし、そのことを諦めたくない。青木さんが小説を書くなら、そうしたギリギリのところを目指したらいいんじゃないかって思いがあります。それをできるのが小説なんだろうと思うわけです。

 

起こった現実を報じるジャーナリズム。
今静かにどこかで起こりつつある、
または起こるかもしれないことを描くのが小説

青木 出せない・出さない情報が、出す情報より遥かに多いからテレビも新聞もつまらないと言われることもあるけど、それはしょうがない。ただ、一人の記者によって伝え残したものが必ず残る。特に清水さんのように膨大な取材をしてると、残されるものも膨大。ご自分で小説をお書きになるといいと思いますけど、僕は清水さんの寄生虫みたいな感じかな。

清水 寄生虫はちょっと酷いでしょう。コバンザメくらいでいいんじゃないですか(笑)。

青木 結果おもしろいものができて何らの形で人の役に立てればなんでもいいです。

清水 10レベルの10まで裏付けが取れれば仮説は証明されるけど、6か7しか裏付けが取れない場合、仮説で終わる。つまり仮説といっても、裏付けがゼロというわけではない。相当やるんです。ただ、それでも6か7までしか裏付けがとれなければ、報じることはできないので青木小説にふんだんに盛り込まれる、と。

青木 清水さんのすごいところは、半分裏付けできて、半分は想像の段階で、その想像部分の裏付けをものすごい力でやるところです。それがものすごい精緻。清水さんが立てる「たぶんこうだろう」という仮説は、そもそも極めて精度が高い。

清水 ジャーナリズムが起こった現実を報じるのに対して、小説は、今どこかで静かに起こりつつある、もしくは起きているかもしれない、もしくはこれから起きるかもしれないことを描くことができる。例えば原発に関して、「○○してます」が報道。だけど、本当にそんなにうまく進んでるのか、実はもっと悪くなってないか、「○○」なんて本当はムリなんじゃないのという部分は報道しにくいわけです。10の裏付けがないと報じられない。だけど、報じないからといって起きてないといえるのか?? とね。そこを「もしこんなことが起きていたら我々はどうすればいいか」と具体性を含めた可能性を小説で検討できるといい。皆が考えるトレーニングの材料になればいいなと思います。

青木 現実が先か小説が先かというものを書いていきたいです。

清水 わからないことって、わからないから仕方ないねって切り落としがちなんだよね。そして、この世の中、わからないことだらけなんだよ。複雑になればなるほどそうで、僕たちは、それをわかろうとしないといけない。僕がよく若い人に言うのは、「知ろうとしないのは罪だ」と。わからないからいいや、じゃなくて、少しでも知ろうとしようぜということをやっていかないとジャーナリズムはおしまい。

『尖閣ゲーム』でオスプレイが墜落するシーンが出てくる。もちろんすごく危険だし、オスプレイが現実に墜落するなんてことは起きてもらったら困る。それでもリアルに普天間で落ちたときにどうなるかを考えてみてもいいんじゃないか。そのうえで対処の方法を考える。それも「伝える」べきことではないかと思う。

青木 あるニュースが報道されたあと、そのニュースはそこで終わらないと思うんです。根がどう深いのか、そこにノンフィクションの手法で迫るか、それともフィクションで迫るのか、いろいろなアプローチがあっていい。どんなツールで書いても、とにかく、世に出す、人に伝える。それをこれからもやっていきたいと思います。

 

★がついた記事は無料会員限定

関連書籍

青木俊『尖閣ゲーム』
→試し読み・電子書籍はこちら
→書籍の購入はこちら(Amazon)


清水潔『桶川ストーカー殺人事件―遺言』
→書籍の購入はこちら(Amazon)


清水潔『殺人犯はそこにいる』
→書籍の購入はこちら(Amazon)

記事へのコメント コメントする

コメントを書く

コメントの書き込みは、会員登録とログインをされてからご利用ください

おすすめの商品
  • ピクシブ文芸、はじまりました!
  • 文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作!
  • 無理しないけど、諦めない、自分の磨き方
  • 時短、シンプル、ナチュラルでハッピーになれる!
  • ビジネスパーソンのためのマーケティング・バイブル。
  • 有名料理ブロガー4名が同じテーマでお弁当を競作!
  • ドラマこそ、今を映すジャーナリズム!
  • 砂の塔 ~知りすぎた隣人[上]
  • 小林賢太郎作品一挙電子化!
  • あなたがたった一人のヒーローになるためには?
朝礼ざんまい詳細・購入ページへ(Amazon)
文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作!
ピクシブ文芸、はじまりました!
エキサイトeブックス
今だけ!プレゼント情報
かけこみ人生相談 お悩み募集中!