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2016.07.21

「仕事も育児も私らしく」と言えるのは恵まれた人?

香山 リカ

「仕事も育児も私らしく」と言えるのは恵まれた人?

 「ノンママ」とは、いろいろな事情で、子どもを持たない人生を選択した女性のこと。この夏、「ノンママ」をテーマにした書籍と連続ドラマが誕生しました。

 書籍は香山リカさん著『ノンママという生き方~子のない女はダメですか?~』(幻冬舎)で好評発売中。ドラマは『ノンママ白書』。主演は鈴木保奈美さん、東海テレビ・フジテレビ系で、8月13日(土)スタートです(毎週土曜 夜11時40分予定)。

 なぜ「子どものいない人生」を選んだのか。理由はもちろん、ひとりひとり違います。でもその中で、やはり一番多いのは、「仕事を優先してたきから」ということではないかと、香山さんは考えます。

* * *

●いまだに突きつけられる「仕事か子どもか」という選択肢

 現時点ではまだまだ、「子どもを持つと働くのはむずかしい」という雰囲気や仕組みが続いていることはたしかだ。

 さらに、現政権は育児や介護をなるべく「家族」で担ってほしい、と考えているようにもみえる。そうなると、いくら表立っては「ワーク・ライフ・バランス社会の実現で女性も仕事を続けましょう」と言っても、実際には「誰も育児や介護を担ってくれないし、私が退職するしかない」という状況に追い込まれる女性が減るとは考えにくい。

 しかも、現時点でワーク・ライフ・バランスの考え方や制度を率先して導入しようしているのは、官庁、大企業、病院、教育機関など、どちらかと言えば意識が高く、進歩的な考え方の人たちが多くいそうな組織が中心となっている。中小企業や小売店などでは、経営者から「子どもができたら残業したくない? そういう人には辞めてもらわなきゃね」などとはっきり言われている女性たちも、まだまだ少なくないのだ。

 そんな現状では、「子どもができたから退職」という女性と同様、それ以前に「仕事ができなくなったら困るから、子どもを持つことはまだ考えられない」と結婚、妊娠、出産をためらう女性たちが減らないのも、ごく当然のことと言える。

「仕事も育児もどちらも実現してイキイキ自分らしく輝いて生きる!」などと言えるのは、正直、まだごく一部の女性だ。多くの女性たちは、いまだに「仕事か子どもか」という選択肢を突きつけられている。

●「仕事より結婚、出産」と言えちゃう、いまどき20代

 ただそれでも、「これでは労働力人口も減り、少子化も進み、といずれにしてもまずい」と対策に乗り出す企業が増え、以前に比べれば、確実に女性が結婚、出産を選びやすい環境、あるいは選びたくなる環境は整ってきていると思う。

 地域と大学との共生を考える、といったテーマのシンポジウムの席上、学生代表として壇上に座る女子学生に司会者が「10年後、あなたはどうなっていたいですか」と尋ねたら、彼女はにっこり微笑んで「かっこいいママになっていたいです」と答えた。

 以前なら、テーマに即して、「地域に貢献する人材になりたい」とか「国際的に活躍しつつ、地域への目配りも忘れずにいたい」とか、とにかく仕事に絡めた将来ビジョンを語ったのではないだろうか。

 実際には出産、育児を選択した女性たちが、その後、子どもや子育てのストレスや仕事とのバランスに悩んだりする人も多い。とはいえ、少なくとも世間全体あるいはシングルの女性にとって、「仕事よりもまずは結婚、出産」という道を選ぶのは、いまやまったくネガティブなことではなくなっているのだ。

 しかし、いま40代、50代の女性たちが若かった頃はそうではなかった。「仕事」と「結婚や出産」は二者択一であったのだ。

 男女雇用機会均等法が施行された1986年に社会人となった私が若かった頃は、大学を出て仕事についた女性が20代で結婚を考えるのはある意味でタブーであった。私自身、男友だちがいるだけで、両親や先輩から「まさか結婚なんか考えているわけではないでしょうね。やっと仕事についたばかりなんだから、まずはそっちに身を入れなさい」と幾度となく言われ、自分でもその通りだと思った。

 これはとくに私のまわりに無理解なおとなが多かった、ということではなく、いま考えると冗談のようであるが、当時は「結婚、出産は当分はいたしません」と“宣誓書”のような文書にサインしないと採用してくれない、という企業さえあったのだ。それに比べるといまは、「働く女性が出産し育児をすること」をめぐるイメージが大きくプラスの方向に転換したと言えるのはたしかだ。

→次ページに続く

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『ノンママという生き方~子のない女はダメですか?~』香山リカ

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