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2016.07.11

楽しい絵で死因や人生を彫る、世界一陽気なお墓

ネイチャー&サイエンス

楽しい絵で死因や人生を彫る、世界一陽気なお墓

 お墓といえば静謐で、殺風景で、ちょっと怖い場所、そんなイメージがあるかもしれません。しかし世界に目を向けてみると、民族ごとに弔いの仕方が大きく異なり、お墓の風景は驚くほどさまざまです。『世界のお墓』(構成・文/ネイチャー&サイエンス)では世界中から厳選した52か所のお墓を美しい写真で紹介し、その文化的・宗教的背景をたっぷりと解説しています。

今回はその中から「ルーマニアにあるサプンツァ村の陽気なお墓」を試し読みとして公開します。死因や人生が絵で刻まれる楽しい墓標。あなたの死後には何が書かれるでしょうか?


人生を楽しく語りかけてくる墓
 

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R.CREATION/SEBUN PHOTO/amanaimages

 
 花模様が刻まれた屋根付きの青い十字架の墓標。十字架の下には生前の職業や趣味、あるいは死因が一目でわかるどこかほのぼのとした絵柄が彫られている。小さな教会の敷地にそんな墓標がいくつも並ぶ、ここは世界でもっとも陽気な墓地といわれている。

 ルーマニアは、南がドナウ川、東が黒海に面した東欧の国。国民の大半が東方正教会に属するルーマニア正教を信仰し、死者は棺に入れて土葬される。この墓地があるサプンツァ村は、ルーマニア北西部の平原に位置する小さな村だ。道路の多くが今でも未舗装で、明るい日差しが似合うのどかな田園風景が広がる。

 今から80年前のサプンツァ村。一人の木彫り職人が、親しい人を失った悲しみを癒すような、明るい墓標を作ることを思い立ち、色鮮やかな肖像画と故人の人生を綴った詩を彫り上げた。職人の名は、スタン・イオン・パトラシュ。当時27歳の青年だった彼は、村人のために色鮮やかな墓標を生涯にわたって彫り続ける。これが世界一陽気な墓の始まりである。

 高さ2mほどの墓標は木製で、石にはない温もりがある。彫られている絵柄は料理をしている女性やリンゴを収穫する農民、子どもに勉強を教える教師など一枚一枚どれも違う。パトラシュは、一番その人らしい姿を絵と詩で表現した。詩は、「私は木こりで、木を切ることにかけては私の右に出るものはいません」、あるいは、「医者の私は多くの命を救ったが、自分の命は救えなかった」など、どこか洒落が利いている。ルーマニア語の詩が読めなくても、肖像画を見ればその人となりを楽しく知ることができる。ここには、墓地特有の重苦しさがまったくない。
 1977年にパトラシュが亡くなった後も仕事は弟子に引き継がれ、この小さな村には、年間3万人もの観光客が訪れている。

◎墓地から歩いて5分ほどの場所にあるパトラシュのアトリエは、現在博物館になっている。
◎墓地は村の観光資源になっていて、ささやかな入場料が必要。村の土産物店では墓標のミニチュアが購入できる。

 

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