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2016.07.08

『日本全国津々うりゃうりゃ』文庫発売記念!試し読み「神津島」パート3

はるばる伊豆七島までやってきて、本当に砂漠が見たいのか? 見たくないのか? 相変わらずのドタバタ旅。
《幻冬舎plus限定、カラーも綺麗!特別記念版》

宮田 珠己

はるばる伊豆七島までやってきて、本当に砂漠が見たいのか? 見たくないのか? 相変わらずのドタバタ旅。<br />《幻冬舎plus限定、カラーも綺麗!特別記念版》

三度目の正直! 貴重な「砂漠」を見るために、山を登ることになりました。どうやら「天上山」という山の山頂に砂漠があるらしいのです。
がしかし、宮田さん、文句ばかり。
ついに、同行のテレメンテイコ氏、おかんむり。
砂漠に行くまでも、魅惑の大自然がいろいろあって、足はなかなか前に進みません。

*   *   *

 ガイドマップによれば、港から天上山の登山口まで徒歩50分。さらにそこから頂上までも徒歩50分とのことだった。合計1時間40分。余裕みて2時間の登山は、はっきりいって体力的にも問題ないレベルかと思うが、問題は季節がまだ9月ということだった。残暑が厳しい。
 そもそもわたしは砂漠が見たいだけであって、山に登りたいわけではない。砂漠といえばレンタカーで島の東側の多幸湾に行った際、すごい風景を見てしまった。

多幸湾

 山全体が海に向かって崩壊しており、小さな島には有り余るほどの迫力をかもし出していた。
 しばらくこの景色を眺めていて気づいたのは、これをちょっと首を傾けて見てみれば、つまり砂漠じゃないかということだ。みんなもぜひ写真を斜めに見てもらいたい。
 おおお、見たい見たいと思っていた砂漠がこんなところに!
 いやあ、東京にも砂漠ってあったんだなあ、びっくりだなあ。
 ってことで、砂漠終了。引き続き、海の男の話をお届けしようと思います。
 ……いえ……登ります、登りますよってに。
 天上山の登山道は、黒島登山口というところから取り付き、山頂を一周して白島登山口に下りてくるのが一般的らしい。自宅で地図を見ていたときはぺったんこだったが、現場に来てみると港から登山口までかなりの傾斜である。なんというか、聞いてないよってぐらいの傾斜だ。自然のなかの道を登るのは空気がうまいような気がして楽しみもあるけど、町なかの道路を上るのはとくに楽しみもなく、しんどいだけである。しかも山頂から白島へ下りるルートが長くて面倒という噂で、全体としてはなかなか侮れない行程になるようだった。
 そこでわたしは、レンタカーで黒島登山口まで上り、そこに車を停めておいて、また同じ道を下りてくる計画を立てた。そうすれば港から登山口まで車で移動でき、実質の登山は50分だけで済む。ガイドマップ的には、往復違うコースで楽しんでもらおうという趣向だろうが、こっちは行き帰り同じ道で何の不足もない。
 もともと山登りがそんなに得意でないテレメンテイコ女史も、砂漠さえ見られればよいということで、この案にとくに異論はないようす。
 ということで民宿を朝8時に出発。黒島登山口までの急な上り坂を、レンタカーで力強くぐんぐん上っていったのだった。
 道はジグザグに折れ曲がりつつ、とにかく高度を上げていく。天上山はのっけから急峻な山で、途中緩やかな部分はなく、車だからいいが、歩いていたら車道だけでもたっぷり疲れただろう。レンタカーでよかった。
 黒島登山口に車を停め、そこに置かれていた杖を手にして、われわれは登りはじめた。ここの杖は自由に借りていいことになっている。
 標高は登山口に来た地点ですでに山の中ほどに達しており、眼下には前浜の町並みと港、そして広い海が見下ろせる。それはすでにもう東京都とは思えないほどのでっかい景色であった。
 まさにわれわれは、この景色を見るために船ではるばるやってきた。そんな気分だった。
 もう一度繰り返そう。
 まさにわれわれは、この景色を見るために船ではるばるやってきた。
 ……ということで、見るべきものは見た、登山終了。……でいいんじゃないかなあ……なんたって残暑だしなあ……厳しいんだよなあ……残暑厳しき折、みなさまいかがお過ごしでしょうかって、登山だよ登山……ご自愛したいっちゅうねん……だめかなあ……あ、だめですか、そうですか、登りますとも、もちろんですって登山開始。
 とはいえ頂上は見えており、道も一本道で、難しいところは何もない。海風のせいか、木が低く、ずっと海が見えているのも気持ちがいい。そのぶん日差しはガンガンに照りつけているのだが。
 ひたすらジグザグに高度を上げていくと、すぐに二合目、三合目といった標識が出てきて、快調快調。そうこうしているうちに、頂上付近の岩がのしかかるように迫ってきて、気がつくともう九合目である。恐れていた登りも、案外たいしたことはなかった。
 岩の脇をすりぬけるようにさらに登ると、山頂部の比較的平らな場所に出て、そこが十合目。山頂にいきなり砂漠があるのかと思ったらそうではなく、低い灌木【かんぼく】に覆われた別天地といった風情である。
 今、比較的平らと書いたが、斜面から上がってきたからそう思ったので、実際には起伏も多く、ところどころ岩が露出していたりして、起伏の向こうに何があるのかわからない。そんな風景だ。たぶん起伏の向こうも起伏なのだろう。なんとも妙な世界に来たものだ。

*   *   *

文句ばかり言ってますが、どうやら、ほんとに砂漠は近づいてきている模様ですよ。
次回、いよいよ神津島、クライマックス!
待ちきれない方は、『日本全国津々うりゃうりゃ』をお買い求めください。幻冬舎文庫より発売中です!

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