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2016.07.05

『日本全国津々うりゃうりゃ』文庫発売記念!試し読み「神津島」パート2

旅の目的は、”砂漠”探し。がしかし、海でぷかぷか、シュノーケルにうつつをぬかす!
《幻冬舎plus限定、カラーも綺麗!特別記念版》

宮田 珠己

旅の目的は、”砂漠”探し。がしかし、海でぷかぷか、シュノーケルにうつつをぬかす!<br />《幻冬舎plus限定、カラーも綺麗!特別記念版》

竹芝桟橋から、夜行船に乗って、砂漠が見れるという神津島へ――。
砂漠って、どんな感じなんでしょうね!? ……われわれ読者はワクワクしてるわけですが、宮田さんと、テレメンテイコ女史は、シュノーケリングにうつつを抜かし、砂漠のことなど忘れている模様。
しっかり頼むぞ、ご一行。

*   *   *

 そんなわけで、さるびあ丸の最終寄港地である神津島に到着すると、われわれはさっそくレンタカーを借りて、赤崎なるシュノーケルスポットへ向かったのである。
 神津島には、西側に前浜、長浜、沢尻湾、東側に多幸湾、北に返【かえ】浜【すはま】と、いくつものビーチがあって、風向きによって遊ぶ場所を選べて便利なのだが、島の北端に近い赤崎という岩礁には木製の遊歩道ができており、ここでは設置された飛び込み台から海に飛び込んだり、岩陰の入り江でシュノーケリングしたりと、ビーチとはまた違った楽しみ方ができるようになっている。
 飛び込み台のある遊歩道は全国でも珍しいのではないだろうか。
 台は3ヶ所に設置され、高いものは海面から5メートルぐらいあった。若者が次々に飛び込んでいたが、中にはさらに高いブリッジの欄干【らんかん】や、もっと高い岩の上から飛び込む猛者【もさ】もいて、見ているだけでも爽快である。
 遊歩道たるものこれぐらいでなくては面白くない。

赤崎の飛び込み台

 わたしも何度か飛び込んで満足すると、引き続きシュノーケリング態勢に入った。
 赤崎の磯は大きな岩礁の内側にあるため、波が入ってこず、それでいて透明度が高いうえ、エントリー用のステップも整備されているので、安全にシュノーケリングを楽しむことができる。水中には珊瑚や熱帯魚も豊富で、複雑な地形になっているところもあるから、どこから何が出てくるかわからない楽しさも味わえ、つまるところシュノーケリング初心者から上級者まで誰もが楽しめるナイスなスポットだった。
 その証拠に、シュノーケリングは初めてというテレメンテイコ女史でさえ、ろくに泳げないといいながら、1時間以上プカプカ海に浮かんで、海の生き物見物を楽しんでいた。
 そうしてそれぞれに赤崎の海を堪能したのであるが、残念ながらこのとき発見できたヘンなカタチの生き物は、小さくて地味なウミウシとウツボぐらいで、案外収穫は少なかった。素晴らしいスポットであっても、いつもいつも面白い生き物に出会えるとは限らないのである。
 そこでいったん場所を移し、今度は沢尻湾で潜ってみたところ、水深5メートルほどの海底の砂地に丸い石がたくさん落ちていて、その真ん中から海藻がチョボチョボ生えている。石から海藻が生えるのは明らかにおかしい。きっと何かの生き物に違いないと思い、潜って拾いあげてみると案の定、石ではなかった。
 タコノマクラというウニの一種で、背中に生えていた海藻は擬態のため、そのへんに落ちているものをくっつけていたのだった。

タコノマクラ

 これまでにもタコノマクラは見たことがあるものの、沢尻湾の海底に棲んでいたのは直径20センチから30センチもある大物ばかりで、いったい何を食ったらこんなに大きくなるのか不思議である。何を食うのか調べるため、ためしにふたつ重ねてみたりしたが、結局よくわからなかった。
 沢尻湾をしばらく探索したが、ここでもそれ以上に変な生き物は発見できず、この日のシュノーケリングは終了。海の透明度が高く、いつまでも飽きることなく潜っていられそうだったけれど、シュノーケリングは見た目の気楽さに反して、結構体力を消耗するので、今日はこのへんにしておく。
 夜は民宿で海の幸を食いつつ、今日見たウミウシについて、テレメンテイコ女史に説明した。だがそれをさえぎり、女史は突然まじめな顔をして言うのだ。
「宮田さん、砂漠はどうなったんです?」
 へ? 砂漠?
 そういえば、もともとは砂漠がどうかしたような話だった気がする。どういった話であったか?
「砂漠見に行くって言ってましたよね。どうなったんですか、あれは」
「砂漠見てどうするんです?」
「東京に砂漠があるのが面白い、って言ったのは、あなたでしょうが!」
 そうだったそうだった。東京の砂漠を見に行くんだった。
 ええと、事前に調べてきた情報によれば、砂漠は神津島でもっとも高い天【てん】上【じよ】山【うさん】の頂上にあるらしい。その天上山は、宿のある前浜地区からどーんと見上げることができて、結構急な山である。高さは572メートル。難しい山ではないが、この暑いなかわざわざ登りに行くより、海で遊んでいたほうが楽しい……と思う。

天上山の眺め

「宮田さん、この連載、海の生き物の話ばっかりじゃないですか。たまには違うことも書いてください」
「海の生き物ばっかり? そうかなあ。それはたまたま2ヶ月続けて海に来たからで……」
「ちがいます。日光でも、パチンコのときも海の生き物の話書いてました」
「そうでしたっけ? じゃあ石の話しましょうか。神津島の浜辺もなかなかいい石がありそうですし。いえ、石も面白いんですよ。いい感じの石をね、拾うっていう……」
「石ももう十分です」
「え、そんなに石の話したっけ?」
「しました。たっぷり。今回は予定通り砂漠でお願いします」
「山登るの面倒くさい……」
「登りなさい!」

*   *   *

ついに、テレメンテイコ氏、キレました。
ようやく砂漠にたどりつけるのでしょうか。次回こそ! 楽しみにしていましょう。
いち早く、先を読みたい方、幻冬舎文庫より、発売中です(^^)

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