「おなかが弱いのは体質だから…」「こんなことでわざわざ病院に行くのは恥ずかしい」など、おなかの不調に慣れてしまい放置している、"おなかの弱い”あなた。
胃がん・大腸がんなど大きい病気を見過ごしてしまうかもしれないというリスクもそうですが、胃腸にトラブルがある・ないでは日々の生活の質も雲泥の差。きちんと治療をすることが大事です。

胃がん発生に重要な働きをしている特定の遺伝子がピロリ菌感染胃粘膜に発現していることを世界で初めて発表し、毎日全国からの患者さんを診察している消化器内科医、江田証さんによる著書『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』より、おなかの不調の原因とその治療法を紹介します。

<過敏性腸症候群を引き起こすのは、糖質「FODMAP」が原因?>

 つらい腹痛や下痢に悩まされる過敏性腸症候群。
 この過敏性腸症候群の最新研究では、炭水化物などに含まれる特定の糖質「FODMAP(フォドマップ)」が注目されています。過敏性腸症候群の人は、FODMAPというある種の糖質を小腸でうまく吸収できない体質と腸内細菌の特徴をもっており、これらを多く摂取したときに症状が悪化する、という考えで、豪州のモナッシュ大学をはじめとする海外で盛んに研究が行われています。
 本来、糖質は消化酵素で分解され、小腸で吸収されます。ところがFODMAPは小腸で吸収されづらいため、小腸から大腸へとそのまま到達します。そして大腸で腸内細菌とFODMAPが異常発酵を起こし、過剰な水素ガスが発生し、腸の働きが不調になるのです。
 現在、欧米・豪州では低FODMAP食が盛んです。FODMAPが多い食品を避け、症状の引き金となる糖質を特定していく方法です。
3週間低FODMAP食にすることで約7~8割の方は症状が改善します。消化器系の医学誌で最も権威の高い「Gastoroenterology」誌の最新号でも、低FODMAP食が過敏性腸症候群に有効であることを証明した論文が掲載されました。最近注目されているグルテンフリー食も過敏性腸症候群に効果が期待されますが、今のところ科学的にその有効性が確認されていません。それよりも低FODMAP食のほうが科学的にも有効性が高いことが論文で確認されています(江田証医師)。

< 特定の糖質「FODMAP」ってなに?>

FODMAPは、炭水化物などに含まれ過敏性腸症候群の症状を悪化させると考えられる特定の糖質の略称。これらの糖質を含む食品をとると、腸の運動が過敏になり、ガスが増える。
 


ガラクタン(ガラクトースの重合体)…レンズ豆、ひよこ豆などの豆類に含まれる。
フルクタン(フルクトースの重合体)…小麦やタマネギなどの果糖に含まれる。
 


二糖類に含まれる乳糖…高乳糖食(牛乳、ヨーグルト)に含まれる。
 


ガラクトース…生物界に広く分布している糖の一種。
フルクトース…果糖。果実、ハチミツなどに含まれる糖の一種。
 



 

ポリオール(ソルビトール、キシリトール)…マッシュルームやカリフラワー、くだもの類に含まれる。

<FODMAP食を食べると、小腸の運動機能が高まりすぎる>

 過敏性腸症候群の人は、FODMAP食に含まれる糖質をうまく小腸で吸収できないため、小腸内の浸透圧が高まることで小腸内に過剰に水分が引き込まれます。その結果、小腸内で水分が過剰に増え、その運動機能が高まりすぎ、腸全体が過敏に。おなかがゴロゴロしたり、痛くなったり、ガスがたまったりします。
 


<過敏性腸症候群の人がFODMAP食を食べると……>


<低FODMAP食 食品OK・NGリスト>
 過敏性腸症候群の人は、まず最初に3週間、高FODMAP食を控え、低FODMAP食をとってみましょう。
 次に高FODMAP食でふだんよくとっていたものを、おなかの調子を見つつ1品ずつとり入れ、自分の体質に合う食品、合わない食品を特定することを目指しましょう。
 オリゴ糖や発酵食品など一般的に「腸にいい」とされトクホに認定されている食品も、過敏性腸症候群の人にはかえって症状を悪化させかねない。腸内細菌は個人個人で指紋のように多様であり、十把一絡げには論じられない。
  過敏性腸症候群の人の腸内では、バイヨネラとラクトバシラスという腸内細菌が多く、これらが作り出すある代謝産物が過剰なほど過敏性腸症候群の症状が悪いことがわかっている。低FODMAP食にするとこの代謝産物が減り、症状が改善することがわかっている。
 ふだんから腹痛などの症状がない無症状の人と、ふだんから腹痛や下痢などの症状がある人では、食事方法が異なることを覚えておきましょう。


 なお、完全にFODMAPを除去できなくても、意識してFODMAPを食べる量を減らすだけでも症状が軽減することが論文で確認されていますので完璧をめざさずにやってみましょう。

残りの食材については、
専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』(江田証著 幻冬舎刊)に掲載されています。

次回「要注意!胃炎放置で認知症に?」は7月14日(木)公開予定です。

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