生きている上で、食べることは大事だ。食べることは生きることと直結する。
 ということに気がついたのは最近で、若い頃は本当に出鱈目な食生活をしていた。主食はクッキーだったし、家で料理することなんかほとんどなかった。料理に情熱を注ぐなどナンセンスだと思っていた。準備と片付けのほうが食事時間よりも長いなんて馬鹿らしい。美味しかろうと不味かろうと、綺麗だろうと汚かろうと、人参が花形にくりぬかれていようと、どうせ一瞬で胃の中に消えてしまうのだ。そう思っていた。

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