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2016.06.28

『日本全国津々うりゃうりゃ』文庫発売記念!試し読み「妙義山」パート3

死ぬまでに一度は行きたいほどの絶景にたどりついたというのに、弱音を吐く男あり。
《カラーで読める!特別記念版》

宮田 珠己

死ぬまでに一度は行きたいほどの絶景にたどりついたというのに、弱音を吐く男あり。<br />《カラーで読める!特別記念版》

人生、生きてるうちにこんなとこに行けるなら、行っておかないともったいないじゃないか! というくらいの、美しい景色。
……にも関わらず、水を差す仲間がいるのが、宮田エッセイのいいところ!
思い切り笑ってください!

     *   *   *
 第四石門の先に、大砲岩が見えている。そっちも行ってみることにした。
 そこまで行くにはまたしても鎖を伝い、かなり高度感のある岩場を渡っていかなければならない(↓)。さすがにここは、うっかりバランスを崩すと、大変なことになりそうだ。

 鎖場を登り、その先の大砲岩、さらに天狗のひょうてい、胎内くぐりといった岩を慎重に巡る。
 それにしても、そこらじゅう絶景としか言いようがなかった。大砲岩から、今通ってきた第一と第二の石門が見える(↓)。

 これだこれだ、これこそ妙義山だ。こんな景色が見たかった。
 杉江氏が来ないので振り返ると、最初の岩に跨【またが】ったまま、じっと何か考えているようすである。
 結局そのまま岩を渡って来ずに、無言で撤退していった。

 そして10分後、妙義神社へのルートとは反対の、駐車場に戻る山道をスタスタ歩いていたわれわれ星穴アタック隊である。予定の妙義神社まではここから2時間余りだが、駐車場にまっすぐ帰れば1時間とかからない。
「杉江さん、〈本読みの僧〉って石、見に行かなくていいんですか」
「全然興味ありません」
「妙義神社まで歩いてたら、星穴見に行く時間が足りないかもしれないですし……」
 テレメンテイコ女史もすっかりやる気をなくし、だいぶ前から発言が後ろ向きだ。
「さっき、大砲岩に行こうとして、岩の上で気付きました」
 山道を下りながら、杉江氏は言った。
「あ、俺、山嫌いだったって。何が面白いのかさっぱりわかりません。妻より怖かった」
「そんな大袈裟な。いつも、妻より恐ろしいものはない、って言ってるじゃないですか」
「まあ、あれは別の怖さですけど……内なる怖さというか……」
 そう言ってから、自分の言葉にますますうなだれる氏。
 妙義山は、とにかく気に入らなかったらしい。その後も、
「だいたい葉っぱが嫌だ。汚いし、山ってそこらじゅうゴミだらけじゃないですか」と小さな怒りを撒き散らしている。
 氏はどうやら、落ちている木の葉や枝のことをゴミと認識しているようであった。
「なんで片付けないんだ」
 そのくせしばらくして中之嶽神社に出、出発前の駐車場に戻ると、にわかに活気づき、
「いいなあ、アスファルトの上は。こういうところ大好きですよ。風が吹き抜けて気持ちいいなあ」
 とロマンもへったくれもないことを言うのだった。
 結局、2時間かけてもっとも初心者向きと言われる石門ハイキングコースをクリアしただけである。一度来てみたかった山じゃなかったのか。
「いや、もう十分です」
 杉江氏は、さえずった。
 その後、われわれは、車で星穴が見えるという裏妙義の中木【なかぎ】ダムにアタックし、湖畔から空が透けて見えるという星穴岳を見上げることに成功した。季節によっては2つの穴が見えるとのことだったが……、ああん? 穴なんかどこにもないぞ……否、ひとつあった。
「小さっ!」
 それは、めっちゃ小さい穴であった。向こうの空が透けて見えるどころか、針も通さないぐらいに見える。
 んんん、星穴拍子抜け。
 それでも近くまで登れば、かなり大きい穴らしい。
 いつか登ってみますか、と両氏に訊こうかと思ったが、訊くまでもなさそうだった。
「せっかくここまで来たら、軽井沢のアウトレット行きたいですね」
 杉江氏は、星穴には目もくれず、もはや妙義山のことなど1ミリも考えていないようであった。

     *   *   *
おっとっと。気が抜けたところで、「妙義山」の回、これにて終了です。
でも、読めば読むほど、妙義山、一度は行ってみたいですね。

さて次は……。乞う御期待!! 

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