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2016.06.17

『日本全国津々うりゃうりゃ』文庫発売記念!試し読み「日光」パート2

クラゲを見つけるのはあきらめた!? 日光で水陸両用バスに乗る。
《オールカラーで読める!特別記念版》

宮田 珠己

クラゲを見つけるのはあきらめた!? 日光で水陸両用バスに乗る。<br />《オールカラーで読める!特別記念版》

前半では、クラゲを見つけることができなかったことを、ひたすら悔やんでいた宮田さんでしたが、気持ちを入れ替え、水陸両用バスに乗ることに。はたしてその先で見つけた、びっくりするものとは!?
人気の旅エッセイ『日本全国津々うりゃうりゃ』文庫本発売記念の、試し読み、続々続きます。

*  *  *

 さて、日光は日本でも有数の観光地であり、東照宮のほかにも輪王寺【りんのうじ】や、二荒山【ふたらさん】神社、大猷院【たいゆういん】など見どころは多いが、翌日は、なんかもういいや、って気分になり、趣向を変えて、水陸両用バスに乗りに行った。
 日光と水陸両用バス。なんとも一貫性のない観光旅行であるが、「見逃せません」ばかり見るよりましである。
 水陸両用バスとは何か。
 それは一見普通のバスかと思いきや、ひとたび水辺に到着するや、突然ウイーンとかいいつつスクリューが現れ、唖然とする追っ手を尻目に水の上をスピードボートのように走り去る……というジェームズ・ボンドな乗り物だ。これまでその名は耳にしていたが、実際に乗ったことがなく、一度体験してみたいと思っていた。日光の少し奥にある湯西川というところで運航されている。
 さっそく集合場所へ向かうと、道の駅に、どーんと件【くだん】のバスが待っていた。
 これか! これがジェームズ・ボンドな水陸両用バスか!
 ……。

 んんん、なんかイメージと違う。ボンド感ゼロ。あるのはむしろズンドコ感というか。
 先のイメージでいう、一見普通のバスかと思ったら……、という前段からしてすでに違っていた。見るからに何か事情のありそうなバスなのだ。悪い予感がし、裏に回ってみると、水辺に来たときだけウイーンと出てくるはずのスクリューが、最初からモロ出しだった。
 ま、水陸両用に違いないが、できれば、ええっ、これがどうして水の上を? というスマートな見た目であって欲しいじゃないか。いざというとき颯爽とトランスフォームするのが、水陸両用マシンの魅力ではないのか。
 だがまあ、つべこべ言ってもしょうがない。出発時間になったので乗る。
 走り出すと、めっちゃ揺れた。通常の舗装道路なのにボヨンボヨン座席から跳びあがる。
 実はこれ、もともとはバスではなく、トラックの車体に椅子乗っけて、ボディ被【かぶ】せたものだそうである。乗り心地なんか知ったこっちゃないのだ。
 んんん……。
 まあ、地上では今ひとつアレだが、水中に突っ込む瞬間は面白そうだ。
 川治ダムのダム湖で、湖畔に一旦停車し、そこから一気に水へ突入する。
 ドバーン!
 んんん、なんかこれどこかで味わったことがあるような、と思ったら遊園地のウォーターシュートである。そりゃそうか。
 しかもひとたび水に入れば、強力な推進力でぐいぐい湖上を駆け巡るかと思ったら、スワンボートのようなのどかな乗り心地で、普通の遊覧船だったのだった。
 この水陸両用ツアーには、ダム見学もセットでついていて、ヘルメット被って巨大なダムの壁面にあるキャットウォークと呼ばれる通路を歩かせてくれる。高さ140メートルあるダムの地上60メートル部分を歩いて、ダムの異様な大きさを実感するというわけで、バスよりもこっちのほうが面白かった。
 坑道の途中で、長い廊下が分岐していて、そこで手を叩くと、パチイーーーーーンインインと遠い反射音がし、おおお、これは鳴龍じゃないか! 人生20回目ぐらいの鳴龍を体験した。鳴龍は常にそこにある。
 こうして念願の水陸両用バスを味わい、あとは帰るだけかと思いつつ電車に乗って、なにげなくテレメンテイコ女史が図書館で借りてきた東照宮の写真集を見ていたところ、
 むむ!
 むむむむ!
 なんということであろう。
 これは……、ここに写っているのは……、クラゲじゃないのかあ!
 じっくり見たはずの廻廊の彫刻に無数のクラゲが彫られている。
 どうしてなんだ。なぜちゃんと見なかったのだ。いや、ちゃんと見たんだが、昨日はそれがクラゲだとは思わなかったのである。
「まだ最終の特急に間に合いますよ。もう一度見に行きませんか」
 テレメンテイコ女史が言い、再度東照宮へ向かうことにした。
 ここにきて予想外の展開である。本当にクラゲがいたとは!
 そうしてあらためて日光東照宮に到着し、彫刻群を丁寧に見ていくと、なんと東照宮には、ここは竜宮城かと思うぐらい海の生き物が満ちあふれていたのであった。昨日はまったく見つけられなかったのに、不思議なこともあるものだ。
 さっそく紹介していこう。たとえばこれ(次頁上)。
 明らかに海の中である。タコの触手のようなものが見えている。ただ色が青いので、タコではなくウミシダか何かの水中無脊椎生物であろう。そして、その横に、見よ!
 はっきりと、クラゲが写っているではないか。

  さらにさらに、ピエール・ロチが〈金のくらげがその触手を金の藻の中に伸ばしていたり〉と書いていた第三番目の囲み、おそらく陽明門横の廻廊の墻壁と思われるが、そこで発見したのがこの彫刻である(↓)。

  夥しい数のクラゲと、左下にはうねうねとのたうつ金の触手が見える。実に圧巻だ。これほどの彫刻を昨日はなぜ発見できなかったのか理解できない。おそらく見えていたのに何か別のものと勘違いしたのにちがいない。きっと「見逃せません」の呪いにかかって、真実をまっすぐに見る目を失っていたのだ。
 さらに詳しく見ていくと、他にもハゼのような魚が顔をのぞかせていたり(↓)、

  蟹も発見した(↓)。

  ピエール・ロチのいうようなハサミは確認できないが、甲羅の形から見て、これはまず蟹の後ろ姿であろう。
 ヒトデも見ることができる(↓)。

  なぜ脚が3本なのかという疑問は残るが、あとの2本は千切れたのかもしれない。
 あとイバラカンザシを知っているだろうか。岩に住みついて、水中に小さくてカラフルならせん状の触手をひろげてプランクトンを食べる、一見、小さな傘のような生物なのだが、これはそれを表現していると思われる(↓)。

  それから、ピエール・ロチが〈平べったくて鱗の生えている長い青虫の先〉と表現したものも発見した(↓)。

  上から垂れ下がっているものを見れば、これが〈平べったくて鱗の生えている長い青虫の先〉とロチが表現したものだとわかる。しかし残念ながらこれはアオムシではないのだ。正体は、ミノウミウシである。ウミウシのなかでも体中にトゲトゲがついているタイプで、その証拠に、上のほうに、うねうねした雲状のものが見える。ウミウシの卵と思われる。
 気がついてみれば、そこらじゅうが海の中であった。
 いやあ、謎が解けてさっぱりした。たとえガイドブックに書いてなくたって、探せばちゃんとあるのである。
 ちなみに昨日は全然気がつかなかったが、《三猿》の横にもクラゲがいた(↓)。

  なぜ猿が海の中にいるのか。海猿というやつであろうか。ちょっと理解に苦しむが、きっと何かいわくあってのことだろう。
 興奮するわたしのそばで、それまでニヤニヤしながら聞いていたテレメンテイコ女史が、
「あそこにホタテもいっぱいいますよ」
 といってある彫刻を指差した。ホタテ? 見ればそこには、おお、すごい数のホタテが!

  って、何言ってるんですか。あれは松ですよ、テレメンテイコさん。ホタテなんてあるわけないじゃないですか。ふざけないでください。
 註1………(おうおう、デタラメ書いたうえにこっち振んなよ)

*   *   *

なんという感激! これはまるで竜宮城。日光には、ほんとうにクラゲがいたんですね!…え? ほんとに…クラゲ!? これは……。
みなさんの頭の中に浮かんだ「?」は、それぞれのお力で熟成させてください。
いずれにしても、キレイな写真とともにお届けできてよかったです!
ご興味を持たれた方は、ぜひ、幻冬舎文庫『日本全国津々うりゃうりゃ』をお買い求めください。
次回は、緑麗しき妙義山への旅をご案内します。

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