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2016.06.12

断食明け、食べる必要を感じない

尹 雄大

断食明け、食べる必要を感じない

断食がとうとう明けました。一週間に起きたカラダの感覚を丁寧に丁寧に解きほぐして伝えてくださった尹さん。食事との向き合い方はどう変わったのでしょうか——?

一週間前の食欲が遠い出来事に思える 

  一週間の断食が明けたとき、やっと食べられるぞ!といった強烈な欲求はまるでなくて、「ひょっとしたらこのまま続けられんじゃないか。むしろ食べる必要ってそんなにあるのかな?」と思えるくらいには、食事に対する関心が変化していました。

 我ながら驚くべき変化です。つい先日までは、お腹は減っていないのに「ちょっと小腹が減っている感じがするからいいよね」と、なんだか言い訳じみたことを思いつつスナック菓子に手を伸ばし、最初はほんの少しつまむつもりが止まらなくなり、結局一袋食べ切ってしまって自己嫌悪に陥る。

 誰かが奪うわけでもないのだから、ゆっくり味わって食べればいいものを、ガツガツと食べてしまう。そしてまた自己嫌悪に陥る。

 あまつさえ満腹になって苦しい状態になってようやっと箸を置き、自分に嫌気がさすといった、さながら餓鬼の貪りのような光景が食事にはつきものでした。それが「ああ、そんなこともあったね」とどこか他人事のように捉える自分が一週間後にはいたわけです。加えて、ものを食べる行為に郷愁を覚えるような感慨が湧いてきました。

 食事について距離をもって眺められるようになったとき、改めて気づいのは、食事に関しては、実にいろんな人がいろんなことを言いたがる、ということです。

「地元でとれた伝統的な食事をとることが健康にいい」
「バランスのとれた食事を三度きちんととるべきだ」
「長生きしたければ肉を食べるな」
「肉を食べれば長生きできる」

 定番から流行りまで、食事に関する情報をほんの少し並べただけでわかるのは、けっこう辻褄は合っていないことです。

 地産地消をよしとする考えがあります。その土地の風土、気候に適応して育つとは偏りが生じるということです。実際、バナナは寒い土地では育たないでしょう。その土地に根ざしたものを食べるということは偏食にならざるをえないわけです。そうでありながらバランスをとるというのはなかなかハードルが高いと言えます。

 それにどこまでが地場のものかというと、よくわからなくなってきます。米も大根もジャガイモも本来はよその土地からやって来たものです。僕らが伝統と呼んでいるものは、単なる生活習慣のことでしかなく、厳密に起源を問うていくとオリジナルでもなんでもないことは割と多いです。

 そう思うと、地産地消はあくまで時間と空間に枠組みを設けたときにしか成り立たない概念でしかなさそうです。

 肉について言えば、食べて健康になる人もいれば、ならない人もいます。そういう現象が起きるのも「その人にとって良い食事は、他の人にとって良いとは限らない」からで、やはり人間は偏食してしかるべきものではないかと思うのです。

 何を食べればいいかは、自身の感覚や経験からしかわからないことでありながら、僕らは知識を参照して正しい食事をしないといけないと思わされています。それは食べ物を食べているようでありながら、実際は情報を食べているだけのことで、自身の感覚をスポイルしているのだと思います。

 正しくバランスのとれた食事などなく、偏ったものを食べることが食事の実際ではないでしょうか。さらに突き詰めていうと、人間にとって「食べること」そのものが偏った行為なのかもしれません。断食後の自分の食に対する欲の薄さからそういうふうにも思いました。

 この連載の初めに「人間は寂しさの埋め合わせのために食べるという行為をしているかもしれない」といったことを書きました。食べる行為が偏りになる源には、寂しさがあるのではないかと思います。

 あらゆる食べ物は人間にとって刺激物です。無色無臭ではなく「甘い・酸っぱい・塩っぱい・辛い・苦い」の五味を口にするのを喜ぶのは、偏りに刺激を感じ、それを摂ることによって生きる実感を得ているからでしょう。生きていることを確認するために、さらに味を整えて調理し、テーブルマナーをこしらえ、誰かと会話を楽しむ場をわざわざ設定しています。

 寂しさを埋めるために刺激を求めるのは、どうあがいても人間は偏在して生きざるをえないことの証のようです。それが食事に端的に表れているようにも思えるのです。

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