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2016.06.13

「何かを残したい」。48歳独身でAV女優デビュー

アケミン

「何かを残したい」。48歳独身でAV女優デビュー

親が応援するAV女優、「カラダを売る仕事」をめぐる社会の価値観、親子の関係を探ってきた連載のなかで、今回は少し異色です。48歳デビューという大人の判断に対して父親の反応はどんなものだったのでしょうか——。

<今回の女優>  
長峰京子(ながみね きょうこ:仮名)
52歳 独身 埼玉県出身
父、母の3人家族 
165センチ スリーサイズ B86(E) W60H84


52歳の人気AV女優が父親に打ち明けた理由

 現在発売されているアダルトコンテンツで最も人気があるジャンルの一つに「熟女もの」がある。「熟女」といってもその幅は広く、主に30代以上の女性を指すことが多い。時には25歳以上の「アラサー女子」も熟女として扱われる。

 AVメディア研究家の安田理央氏は、著書「痴女の誕生」(太田出版)で「大手通販サイトDMM-R18で2015年3月中に発売されたAVのは2087タイトル」、その中で「『熟女』もしくは『人妻』のタグがつけられた作品は653タイトル。つまり全体の30%以上が熟女・人妻をテーマにした作品ということになる」とその人気の高さを述べている。

 これまで当連載では主に20代前半の女優とその親との関わりに触れてきたが、アダルトメディアを全体から眺めると「熟女もの」のカテゴリーは避けて通れない。確かに30歳近くになるとどんな仕事であれ、親の承諾などは必要ないし、たとえ親に反対されたからといって辞める必要もない。特に性風俗に関する仕事についてはあえて親と話す必要性も低いだろう。筆者の同業者の中には「きっとAV業界なんて田舎の両親には想像がつかない世界。下手に心配されても困るので最初から仕事に関してはあまり話をしない」という向きも少なくない。一方で血の繋がった肉親に自らの仕事をどんな風に説明するのか、どんな対話を重ねていくのか、という点に関しては年齢の上下は関係ないようにも思える。

「この仕事をしていることを親に打ち明けたのは2本目の撮影が終わったころですね。いろいろタイミングを見計らっていたんですけど、父親がほろ酔いで応援している野球チームが勝って機嫌がいいときに面と向かって切り出しました」

 そう語るのは人気熟女女優の長峰京子(仮名)だ。現在52歳の彼女は、4年前に大手メーカーからデビューした。ハリのある肌とハツラツとした笑顔、中年太りとは無縁の引き締まったボディは30代前半と言われても納得してしまう若々しさだ。彼女が陽気な笑い声を上げるたび、カールした艶やかな黒髪が肩の上で揺れ、タイトスカートから覗く美脚は同性の目にも眩しく映る。きっと京子のような50代を世間一般では「美魔女」というのだろう。とはいえその姿には「若作り」といった印象や「イタさ」はない。

「撮影の日って朝は早いし、帰りは深夜になるしどうしても家を空けることが多くなるじゃないですか。毎回『女友達と旅行』というのにも限界があるので言いましたね」

 京子は独身、現在は70代の父母と3人で暮らしている。

「周りの友人は結婚したり、子どもを育てたり、会社を作ったりと色々やっているし、そういうのを見ていると私もいい歳になったし、なにか残したくて。そんなときにふと『女性ならではの職業をしてみたい』と思ったんです。最初は水商売も考えたけど、それって形に残るものでもないし、そもそも私、お酒を飲めないし。そこで浮かんだのがAV女優だったんです。この話、デビュー作のインタビューでも言ってるんですけど、親にもまったく同じことを話しましたね」

 娘の告白に父親の動きは一瞬、止まった。

「なにより誤解してほしくないのは決してメーカーや事務所も変なところじゃない。私が大人の判断でやっているから信用してね、ということも言いました。未成年じゃないけれどそこはきちんと知っておいてほしかったから」

 それを聞いた父親は京子にこう告げた。

「いい大人だから自分の責任が持てる範囲で任せる」

 しかし同時に条件を課せられた。

「体に傷をつけないこと、家で泣き言を言わないこと、イヤだと思ったら辞めること、この3つが条件でした。どんな仕事でもお金をもらうって多少のつらいことはつきものだけど、なにせAVは特殊な世界。『生活のためでもないし、親に頼まれてやっているものじゃないから、お前が耐えられないと思ったら、そこまでしてやるな。我慢して鬱になったりすることがないように、その線引きは自分でしっかりしろ』そう言われましたね」

 父親は終始冷静な様子だった。

「賛成はもちろんしない、けれどこの歳になって首根っこ掴んで辞めろといったところで私は辞めないわけだし。ただメンタルの心配はされましたね。芸能界って人を蹴落として自分が上がっていく、というイメージがあるじゃないですか。私は別に過去に女優やタレントを目指したりしていたわけじゃないし野心があるタイプじゃないから…(笑)。そしてこの仕事に関しては後ろ指差す人もいるだろうから、それに耐えらえなくなったら辞めろとも言われましたね」

ずっと真面目に生きてきた。20代のころはAVなんて考えられなかった

 京子は会社員の父親と専業主婦の母親の間に一人っ子の長女として生まれた。金銭的にも何不自由なく育ったが、彼女が小学校5年のとき、母親が脳腫瘍で倒れた。すぐに救急車で運ばれ、九死に一生を得たものの後遺症は残った。

「後遺症も半身麻痺というほどのものじゃないけど、体の力がうまく入らなかったり、バランスが取れなかったり…家のことはそれまで通りにできなくなりました」

 この頃から京子も積極的に家事に参加した。

「元からお料理に興味あったし、頻繁にお手伝いをしていたのであくまで『その延長』って感じです。学生のころは祖母や叔母も来てくれたのでそこまで大変じゃないですよ!」

 健気な様子で京子は語る。中高は私立の一貫校に通い、卒業後は短大に進学した。

「本当〜に普通の子だったんです。周りは女の子ばっかりだったし真面目ちゃんでした! 生徒会の役員をしたり、皆勤賞を狙っていましたね。母が大変な時期というのもあって反抗期に反抗していないのかも。そのころは親にウソをついたことなんてなかったなあ〜。歴代の彼氏はほぼ全員、知っているし、なんなら処女喪失した日もその日のうちにバレましたし、うふふ」

 京子の初体験は17歳、相手は当時付き合っていた1つ上の彼氏。ラブホテルに行き、なに食わぬ顔で自宅に帰ってきた京子を待ち受けていたのは母の尋問だった。

「私の様子がおかしかったから気づいたんでしょうね。あまりに痛くてガニ股になっていたし、あはは。しかもこの日、母はなにを勘違いしたのか、そこでお赤飯を炊きだしたの! 当然、父親にもバレますよね…まったく初潮じゃないのに…ねぇ!」

 京子が短大時代には、世は空前のバブルブームを迎えていた。普段の授業は真面目に出ていた彼女も時にボディコンをまとい、ディスコに通った。

「家ではそんな格好にはなれないから、友達の家で着替えてから遊びに行ってました。母は厳しかったですね、その頃の門限は10時でしたし、少しでも遅れると締め出される。『コンサートでアンコールを見ていて時間が過ぎた』とかいくら説明してもそんなの一切お構いなし。…でもねえ、親がそんなこと言っても誰もが門限を破るときがくるんですよね〜。私も初めて門限を破ったとき…それは彼とのお泊まりだったんなぁ〜うふふ」

 当時の思い出を楽しそうな表情で京子は語る。

「今の子ってケータイがあるからいいですよねぇ〜。LINEで『今日は泊まりいってくる』ってちょっと言えば済むでしょ、羨ましいなあ〜。昔なんて彼氏と電話するのも『8時半に電話するから出てね!』って言ってるのに家電にお母さんが出ちゃったりして! 長電話になるとあからさまに後ろで咳払いされたりしたもんねえ〜!」

 陽気なおしゃべりは続いていく。

「そもそも私、20代のころ、AVなんて考えられなかったなぁ。その頃はAVってすっごく影の仕事っていうイメージもあったし、『AVに出る』という以前に働くってことを考えたことがなかった。結婚願望が強かったし、若いお母さんに憧れていましたね。手縫いのスモックを子どもに着せて、手作りのおやつを食べさせる…みたいな。私自身一人っ子というのもあって子どもは2、3人ほしいな〜なんて思っていたし。でも『最低、2年〜3年でも社会経験をしないとダメだ』『社会人として企業に勤めてお金を稼ぐ経験をしろ』というのが我が家の考えで。特に父は『これからの時代は女性も社会進出していくからキャリアになる仕事に就いたほうがいい』と厳しく言っていましたね。父自身、箱入り娘の母親をもらったから私には違う風になってもらいたかったのかもしれない。そういう私自身は就職といってもあくまで腰掛けで、すぐに結婚する気満々だったんですけど(笑)」

結婚話は破談。10年間、家事とボランティアの毎日

 京子は正社員としてデパートに就職した。数年後に転職し、受付嬢として勤務、着実に社会経験を積んでいった。そしてやがて彼女が夢抱いていた結婚が現実味を帯びてくる。27歳のときだった。

「相手は15歳年上の人でした。その人は一人っ子でしかも地方の地主! ひろ〜い土地と母屋があって、同居がマスト。私が『嫁に行く』って感じだったんです」

 しかし結婚話はあえなく破談となった。

「マリッジブルーになっちゃって。その彼、相当押しが強くて、気づいたらいつの間にか結婚話が勝手に進んでいった感じで。しかもこの時期にちょうどうちの母が倒れたんです。あちらのご両親も気遣って『お母さんが大変だったらうちに越してください』とも言ってくれたけど、そんなに簡単にいかないわけですよ! お金とかそういう問題じゃなくて!」

 一息ついて京子はゆっくりとこう述べた。

「たとえ母のことがなくてもその彼とは別れていたと思う。そのときの自分の気持ちがまだ結婚に向いてなかったと思うし、親のことは単なるきっかけ。遅かれ早かれマリッジブルーにはなっていただろうし。親のせいには絶対にしたくないんです」

 その後、勤めていた会社を辞めた京子は家の近くの養護施設でボランティアを始めた。家事に関しては、ここ10年ほどは炊事、洗濯などほぼ全てを請け負っている。

「休みないですよ〜!」

 そう語る彼女に一日のタイムスケジュールを聞いた。

「朝6時半に起床してお洗濯して、朝ごはん作って父を仕事に送り出します。その後、母親を病院に連れて行ったり、家事をしたり。大きな病院って待ち時間も長いから半日がかり。私がボランティアに行くのはお昼過ぎから19時くらいまで。そのあとは帰ってお夕飯の支度をして、夜はアイロンがけしたり、自分の作業をしたり…。なので5時間以上寝られる日はないんです。撮影の前の日は次の日のご飯を作り置きするので徹夜です。だから私、どこでも寝られるの〜あはは!」

 当然、弱音を吐いたこともある。

「私、不器用なのでイッパイイッパイになることもあります。昔『ボランティアもやめて家のことだけをちゃんとやりたいーっ!』って父に愚痴ったんです。そしたら止められました。父は『大変かもしれないけど外に出たほうがいい』って。最近ニュースでも聞くじゃないですか、介護うつになったり、それで親を殺しちゃうとか。一生懸命な人ほどそうなるし、家の外に逃げ道を作っておいたほうがいいって。父もワックスがけやサッシや水回りの掃除をしてくれますし、最近、サラダくらいは作れるようになったかな〜! いかんせん母が他人様を入れるのを嫌がるから仕方ないですよね」

 思わず私が「苦労しているんですね」と言うと、

「お金の苦労はしていないけど私生活はそこそこ…苦労してますよ!」

おどけたように京子が返した。

「でも今の私の生活ペースだと男の人、要らなくないですか?」

 京子は語る。

「孫を見せてあげられなかったのは両親に対して申し訳ないな〜って思いますね。いっときは卵子を凍結保存しようかなとも考えたこともあるなぁ〜(笑)」

 20代のころに抱いていた結婚願望は今は影を潜めている。

「もちろん『誰かいい人がいればな〜』とは多少は思っていますよ。確実に女性としての価値は年々、目減りしていくのは分かっている。でもだからといってそこで焦って婚活パーティーに行く、とかは嫌なんですよ。だからそこで私も何かを残したかったんですよね。そういう意味で一番嬉しかったのは写真集を出してもらったときだな。家族の間で撮影の話は御法度ですけど、これは堂々と言えるし、両親も喜んでくれました。AVに出るのって普通は逆だって言われますよね、なるべく形は残したくないって。もちろんお金目的で始めたら、残したくないと思うのだろうけど。そもそも40過ぎてからなにか新しい仕事をやるってあまりないことだろうし、事務所にも親にもなにかと心配されるけど、とりあえず今のところ…残せていますね」

 軽やかに京子は話し続ける。

「そうそう、ここ数年、毎年父の日には人間ドッグをプレゼントしているんです。会社で受けるものだけじゃ検査項目、少ないでしょ? 最初は嫌がっていたけど一度やって結果が良好だと喜んで行ってるんです。やっぱり元気でいてくれないと私が困っちゃう! 両方、私ひとりで看るとか、無理だからぁ〜! あはは」

 今年も、もうすぐ父の日がやってくる。
 

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