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2016.06.08

第三回

誰かを説得したい時は、ネガティブな気分になろう

榎本 博明

誰かを説得したい時は、ネガティブな気分になろう

 イチロー、スティーブ・ジョブズ、羽生結弦……。一流はみな「ネガティブ思考」で成功した! ネガティブ思考がもたらすメリットを、科学研究結果をもとに分かりやすく解説した『一流は知っている! ネガティブ思考力』
 成功している人たちは、常に堂々として説得力に長けているイメージがありますが、いつでもどこでも自信たっぷりでいればいいわけではない模様。第三回は「ネガティブ気分」と「説得力」の意外な関係についてです。

 ネガティブ気分のときの方が説得力が高まるということもわかっている。ネガティブ気分のときはさまざまな情報を注意深く考慮する傾向がみられるが、そのことが説得力につながっているのであろう。

 本章のはじめの方で、ポジティブ気分のときはヒューリスティック処理を用いる傾向があり、ネガティブ気分のときはそれほどヒューリスティック処理を用いないことを指摘した。

 つまり、ネガティブ気分のときは、ポジティブ気分のときよりも、システマティック処理を用いる傾向がある。システマティック処理というのは、入手可能な情報を慎重に考慮し、あらゆる角度からじっくり検討して判断する情報処理スタイルである。

 ゆえに、ネガティブ気分のときは、あらゆる情報を考慮しながら論理構成を慎重に行うことになる。そのために説得力が高いと考えられる。

 ポジティブ気分のときは、ヒューリスティック処理を用いがちであり、ごく一部の情報に単純に反応するため、論理構成が甘くなり、あまり説得力がないということになるのであろう。

 フォーガスは、論争になりそうな意見に関して、賛成意見の文章あるいは反対意見の文章を書いてもらうという実験を行っている。

 その結果、ネガティブ気分の人の方が説得的メッセージの質が高かった。すなわち、ネガティブ気分の人たちは、ポジティブ気分の人たちよりも、説得力のある意見文を書いていた。

 ネガティブ気分の人が書いた説得文の方が、より具体的でリアルな情報が盛り込まれており、調和の取れた内容構成になっていた。これはまさにシステマティック処理を用いていることの証拠と言える。

 さらに、書かれた文章に他人の考え方に影響を与えるほどの説得力があるかどうかを確認したところ、ネガティブ気分の人たちの説得的メッセージの方が、実際に相手の態度変化を引き起こすのに有効だった。

 こうして、ポジティブ気分のときよりもネガティブ気分のときの方が説得力を発揮できるということが確認された。

 ここから言えるのは、相手を説得しようという際には、多少ネガティブになって慎重に論理構成をする必要があるということである。

 

※第4回は6月11日公開予定です。

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