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2016.06.05

第二回

不安で緊張するほど、パフォーマンスは向上する!

榎本 博明

不安で緊張するほど、パフォーマンスは向上する!<br />

 イチロー、スティーブ・ジョブズ、羽生結弦……。一流はみな「ネガティブ思考」で成功した! ネガティブ思考がもたらすメリットを、科学研究結果をもとに分かりやすく解説した『一流は知っている! ネガティブ思考力』
 第二回は、リラックスしすぎるより緊張状態のほうが成果が出せるというお話。ポジティブ思考がパフォーマンスを下げてしまうとは一体?

 

 何とか自分の限界を突破しようと苦しんでいる人、逆境の中で必死に頑張りながらもがき苦しんでいる人に対して、

「少し力を抜いてみたら」

「もっと気楽にいこうよ」

 と励ましの声をかける。あまり無理をしすぎると潰れてしまうから、少しは力を抜いて気楽になろうと励ますのである。

 ところが、ポジティブ信仰が世の中に広まってしまったため、全然無理していない人、限界まで頑張り抜こうとして苦しむといった姿勢とは無縁の人までが、「無理するのはよくない」「気楽にいくのがいい」と思い込んで、頑張るという心の構えを取れなくなっている。

 気楽な状態、いわゆるリラックスした状態というのは、弛し緩かんした心の状態を指す。そうした緊張感の欠如した状態では、力を出し切ることは期待できない。緊張感がモチベーションを高め、その結果としてパフォーマンスを高めるのである。

 スポーツのようにパフォーマンスが端たん的てきに目に見える形でとらえられるものを思い起こせばわかりやすいだろう。たとえば、フィギュア・スケートの選手の本番直前の張りつめた様子。それがあるからパフォーマンスが上がるのだ。緊張感がなく、リラックスした状態だったら、最高のパフォーマンスは期待できない。

「リラックスしていこう」というような言葉は、緊張しすぎのときにかけるものであり、「無理せずに気楽にいこう」という言葉は、無理しすぎて頑張りすぎて苦しんでいるときにかけるものである。元々緊張感がない場合や、無理して頑張ることがない場合には、逆の声がけが必要になる。

 そこで参考になるのが、エッティンゲンたちが行ったつぎのような実験だ。

 エッティンゲンたちは、ポジティブな空想がパフォーマンスを低下させるかどうかを検討する実験を行っている。

 まず大学生を2つのグループに分けた。第1グループの学生たちは、来週はやることなすことすべてが思い通りに展開すると想像するように言われた。一方、第2グループの学生たちは、来週についてのイメージをどんなことでもいいから想像するように言われた。

 その後、自分がどれだけエネルギッシュだと感じるかを評価してもらい、さらに1週間後に、日常生活の問題にうまく対処できたかどうかについての一連の質問に答えてもらった。

 その結果、ポジティブな空想をするように言われた第1グループの学生たちは、どんなことでもいいから想像するようにと言われた第2グループよりも、エネルギー水準が低いことがわかった。さらには、「自分はエネルギッシュでない」と感じていた学生ほど、その後の1週間に成し遂げたことが少ないこともわかった。

 つまり、ポジティブな空想をすることで、心のエネルギー水準が低下し、パフォーマンスが低下したのである。

 こうしてみると、「リラックスしよう」とか「ポジティブに考えよう」「成功の夢をみよう」などといったメッセージが世の中に溢れているが、ポジティブ信仰によってモチベーションやパフォーマンスが阻害されている面もあることを忘れてはならないだろう。

 心理学者ノレムたちは、うまく成果を出しているのに、この先に対してポジティブになれず、不安の強い人たちを防衛的悲観主義者と名づけている。そして、そのようなタイプを励ましてポジティブな心理状態にすると、かえってパフォーマンスが下がってしまうという。

 防衛的悲観主義については3章で詳しく説明するが、これなどもポジティブな心理状態にさせ、リラックスさせることで、緊張感がなくなり、油断が生じ、モチベーションの低下、ひいてはパフォーマンスの低下が起こることを端的に示すものと言える。

 

※第3回は6月8日公開予定です。

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