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2016.06.02

エッセイスト・酒井順子(後編)

「子ナシ女性」を見下すならばマナーを守って

酒井 順子

「子ナシ女性」を見下すならばマナーを守って

女性にとっては、「既婚/未婚」よりも、「子アリ/子ナシ」のほうが人生を大きく左右するという酒井順子さん。「子ナシ女性」を世間が「挫折組」と見なす風潮を認めつつも、でも勝手に他人を見下すときには、マナーがあるといいます。
(構成:須永貴子 撮影:菊岡俊子)

◆人の「挫折」を見て、心の安定を保つ◆

—―自分の生き方を肯定するために、自分と違う生き方の人を「挫折」とみなす手段をどう思われますか?

酒井 見下すのも、見下されて自虐するのも、一種の娯楽ですよね。

—―『下に見る人』という本も書かれていますよね。人を「挫折」と見なす行為は、正しく行えば、心の安定に役に立つ? 高度なスキルのいる娯楽ですよね!

酒井 ただし、その手の行為は、嗜好品の一種。タバコを吸うときは喫煙ルームで吸わなければいけないように、人のことをあれこれ言うときは、自分以外の人たちには見えない、聞こえない、感じさせないことが重要です。そういうマナーを守って初めて娯楽になるのだと思います。

—―『子の無い人生』には、酒井さんが体験された、子供と撮った家族写真を使う年賀状以外に、子ナシの人に送るために家族写真を使わない年賀状も作る「既婚/子アリ」の人たちのエピソードが書かれていますね。

酒井 年賀状を二種類作るのも、子ナシを「挫折組」として下に見てもらうのも、全然構いません。ただ、その話は子持ち主婦の人どうしですればいいのであって、子ナシの私の耳に入る空間でしなくていいのでは? という話です。

—―その人たちに悪意はないのでしょうか。

酒井 私をいじめるつもりはまったくないと思います。子持ち主婦どうしでああいう会話をすることで、子供を産んだ苦労が報われるのでしょうから、してもらって全然構わない。でも、クローズドな環境で行うのがマナーですし、そうすることで初めて娯楽になると思います。


◆いい人のフリをしすぎると身体に悪い◆

—―生き方の指南本などで、「人と比べない」というアドバイスをよく目にしますが、酒井さんは敢えて自分と人、人と人を比べて、フラットな立場から文章を書かれますよね。

酒井 比べること自体は悪くないと思いますし、自分の感情に蓋をするよりも、ちゃんと自覚して、処理したほうが健康だと思います。今、私はフェイスブックだけやっていて、見る専門なのですが、頻繁に書き込む人は、みんないい人。誰かが顔写真を投稿すると、そこに「◯◯ちゃん、お肌つやつやだね!」というコメントがつきますが、どう見てもつやつやじゃないんですよ。たぶん、みなさん「いい人になる10の約束」みたいな啓蒙書がインストールされている気がします。そういう「いつも笑顔で」みたいないい人って、気づかないうちに無理をしているから、意外に身体を悪くしたりするんですよ。

—―酒井さんが文章を書くときに心がけていることは?

酒井 私が特定の人のことについて書く時は、もしも張本人が読んだとしても、その人のことを書いていると思われないようにはしています。

——その方法は?

酒井 個人的な恨みつらみを書いているわけではないので、「こういうことが世の中にはある」ということを、誰が読んでもわかるように一般化、相対化して書いています。私はアーティストではないので絶対論は書けない。物事を表現する時、比較という手法をとることが多いので、比較例として他人のエピソードをお借りする、という感じでしょうか。

——そうすることで説得力も増しますね。その感覚は昔からありましたか?

酒井 高校生や大学生の頃は、まだ私憤を晴らすために書いていたような気がします(笑)。子供の頃から口が悪いと言われていましたが、私は自分を口が悪いのではなく、単に正直で、思ったままを素直に言っているだけだと思っていたんですね。するとあるとき、「人は思ったままを言わないんだ」と気付き、無口になりました。

——そして文章を書くようになったんですね(笑)。

酒井 書くことで、私はかなり救われています。


◆「子ナシ」女性は社会における不良債権になるかも(笑)◆

—―やっぱり「既婚子ナシ」は挫折なのでしょうか?

酒井 その人の性格によると思います。あとは経緯ですかね。欲しくてたまらず、不妊治療などで苦労した上で子ができなかった方は挫折感があるかもしれない。でも、できることをすべべてしつくしたほうが納得がいくし、自分なりの着地点を見つけて諦めたと思うので、ご本人にしてみたらそんなに挫折感はないかもしれない。逆に、我々のような「なんとなく子ナシ」のほうが、あまり考えずにここまで来てしまった分、老後になってから後悔し、挫折感に襲われる可能性はあると思います。これから先の心境の変化はわからないですね。

—―自分で挫折と思えば挫折、挫折じゃないと思うなら挫折じゃないということですね。とはいえ、「なんとなく子ナシ」は、「負け犬」のときと同様に、本人はハッピーなのに、周りから「挫折組」と捉えられる可能性が高そうです。

酒井 そうでしょうね。『子の無い人生』にも書きましたが、挫折というよりも、社会における迷惑な存在、不良債権として扱われるときが来ると思います。だからあまり健康に気をつけず、しょっぱいものを食べて寿命を縮めたほうがいいのかなって(笑)。

—―いや、それはダメです(笑)。これからも、酒井さんのその年齢だから気づいたことを書き続けてほしいですから。

酒井 頭が働くうちは。いつ死ぬかわかれば執筆計画も立てやすいんですけどね(笑)。
(おわり)

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