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2016.04.30

『資本論』はまず序文が長い

宮沢 章夫

『資本論』はまず序文が長い

カール・マルクスの大著『資本論』を読んだことはありますか? 一度は読んでみたいと思ったことはありませんか? GWに『資本論』に挑戦してみるのも一興です。劇作家の宮沢章夫さんは仕事の力を借りて、『資本論』に挑戦しました。ウェブ日記と原稿による『資本論』を読むドキュメントを「『資本論』も読む」から抜粋してお届けします。

***

二〇〇〇年六月二二日  東京
 毎日新聞、NHK、実業之日本社と、三人の方に連続して会いひどく疲れた。七月から毎日新聞の夕刊で連載。NHKでは『茫然とする技術』をアナウンサーが朗読する番組。『実業の日本』という雑誌は来年からリニューアルするそうで、連載を依頼される。「資本論を読む」というものすごい連載を提案。

 二〇〇〇年一一月二日  京都
『実業の日本』という雑誌がリニューアルになり、そこで連載することになったのは以前も書いたが、その締め切りの日だと編集者のメールで知った。
 なにしろ、「資本論を読む」という連載である。
 読まなくてはいけない。ところがまだちっとも進まないのだ。なにしろ「第一版序文」とか、「英語の序文」など、「序文」がしばらく続いて、本文にたどり着けない。まあ、そんなことは高校時代から知っていたが、当時、クラスではちょっとした「資本論ブーム」がありみんな挫折したのだった。わたしも挫折した。それからかれこれ二十数年、その後も何度か挑戦したが挫折だ。どこまで読んだかも忘れた。だが、今回は仕事だからなにがなんでも読まなければいけない。
 朝日新聞社が出している、『一冊の本』では、横光利一の『機械』を読む連載を続けているが、あれは短い小説をいかにしてゆっくり読み進めるか、つまり「いかに読まないか」というコンセプトだが、『資本論』はそういうわけにはいかない。読むのである。最後まで読み進めてこその連載だ。
 いったい、いつまで続くんだろう。もしかしたら、死ぬまでやり通さないといけないのではないかと考えていたら、気が遠くなりそうだ。でも面白いからやる。面白そうだったらなんでもやる。そのための苦労だったらなんてことはない。昼間、自転車を走らせていた。雨が降ってきたのであわてて家に帰ろうと、二条通りを走ったら、二条通りのある一角だけお祭りだった。小規模なお祭り。いったいどういうことだろう。
(次回は、「第一回 せめて『資本論』を読んでから死にたい』をお届けします) 

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『資本論』も読む  目 次

第一回 せめて『資本論』を読んでから死にたい
第二回 「なんだこれは」とマルクスは驚いた
第三回 この栓抜きを作るのに四十年かかった
第四回 むさぼり食う主人は「商品」は作らない
第五回 誰も「クイズ王」とは呼ばれたくない
第六回 わかる瞬間がわかりたい
第七回 人はときに「価値魂」に侵される
第八回 リンネルのやつは思想まで持つ
第九回 重量、ちゃんと磨いとけよ
第十回 マルクスは汗にロマンを見いださない
第十一回 ときに『資本論』の読みは妨げられる
第十二回 体力あってこその『資本論』だ
第十三回 大きな字になっても難解さに変わりはない
第十四回 ともかくもようやく「貨幣」の登場である
第十五回 「わからない」を「わからない」として味わう
第十六回 わからないと格闘する作家の姿を見てほしい
第十七回 ただの「紙」や「金属」がなぜ「貨幣」になるのか?
第十八回 「共同体の果てるところにいる女たち」が気になる
第十九回 なんと、「貨幣」には魔術があるらしい
第二十回 「批判する意志」を注釈に吹きこむマルクス
第二十一回 貨幣名とは、「観念上の錯誤」そのものだ
第二十二回 「わかってくるという快楽」が心地よい
第二十三回 「市場」という名のアウェーで闘う
第二十四回 それにしても「金」はまぎらわしい
第二十五回 『資本論』を読める幸福
第二十六回 マルクスの言葉を感じて『資本論』を読む
第二十七回 貨幣が身につける「国家的制服」とは?
第二十八回 四十年間も考えていた人
第二十九回 私は、砂漠を歩いているのではないか
第三十回 「ジャンプしろ」とマルクスは言う
第三十一回 「可能性としてのテクスト」として読む
第三十二回 働くことのよろこびはきっとある
第三十三回 文筆業者にとっての「労働」を考えてみる
第三十四回 「マルクスの姿」を感じる快楽
第三十五回 容赦なし。感傷おかまいなしのマルクス
第三十六回 アクティヴィストとしてのマルクスを思う
第三十七回 『資本論』の旅はほんのとばくちにすぎない

◆あとがき
◆文庫本のためのあとがき
◆解説 的場昭弘
 

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