毎日を1%ずつ新しく生きる! 刺激と感動のマガジン&ストア

★がついた記事は無料会員限定

2016.04.25

不倫する有名人に
激怒りする世間の心理

片田 珠美

不倫する有名人に<br />激怒りする世間の心理

 乙武洋匡さんに、川谷絵音さん&ベッキーさん、宮崎謙介元議員、米米CLUB石井竜也さん、桂文枝師匠、とにかく明るい安村さん等々、2016年明けから続き、一段落した著名人の不倫報道。
 不倫は倫理上・法律上の問題があり、当人たちが怒るのはもっともなこと。でも実際、当事者以上に反応し、バッシングしたのは世間のほうかもしれません。ですがホントのところ、みんなどこまで不倫を悪いと思っているのか? 世間が怒る心理に何があるのか? 精神科医の片田珠美先生にうかがいました。


バッシングの奥底に潜む“羨望”

 最初に断っておくが、不倫を擁護するつもりは毛頭ない。夫婦間の信頼関係を損なう行為であり、人としてあるまじきことだとは思う。ただ、最近は、有名人の不倫報道に対する世間の反応に違和感を覚えることが少なくない。

 何よりも違和感を覚えたのは、ベッキーさんとの不倫が報じられた「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音さんが「みんな謝れって言うけど、世間の誰に謝ればいいの?」「内輪での話だから関係ないじゃん」などと発言したとかで、激しい批判を浴びたことだ。というのも、この発言には何となく開き直っているような響きがあり、反省のかけらもないように聞こえるが、それでも一理あると個人的には思うからだ。

 たしかに、川谷さんの奥さんは今回の不倫で相当傷ついただろうし、ベッキーさんも10本あったCMをすべて降ろされ、活動中止に追い込まれたのだから、彼はきちんと謝罪して、できるだけの償いをしなければならない。しかし、そういうことはあくまでも当事者同士の話し合いに任せるべきであり、赤の他人がとやかく言うことではないというのが私の持論である。

 そこで、不倫の直接の関係者ではない世間が怒るのは一体なぜなのか?このような怒りの根底に潜んでいるのは一体なぜなのか?について分析したい。

 まず、「けしからん」「許せない」と声高に叫びながら、一緒になって叩く人の心の奥底には、羨望が潜んでいる可能性が高い。「羨望というのは、他人の幸福が我慢できない怒りなのだ」と言ったのは、17世紀のフランスの名門貴族、ラ・ロシュフコーだが、まさにその通りである。

 川谷さんは才能に恵まれたアーティストであり、紅白歌合戦にも出場したうえ、売れっ子の美人タレントを口説き落とした。そういう幸福が我慢ならないという羨望なんか自分にはないと、バッシングしている側は胸を張って断言できるだろうか。

 川谷さんほど有名でもないし、才能に恵まれているわけでもない人の不倫を攻撃する場合も、羨望がからんでいることが多い。自分がやりたくてもやれないこととか、やりたいのに我慢していることとかを他の誰かが易々とやってのけると、他人の幸福が我慢できない怒りを抱くのが人間という生き物なので、これは当然だろう。ただ、未婚者と既婚者では、その心理に少々違いがあるように見受けられる。

 未婚者、とくに結婚できない未婚者が既婚者の不倫を叩く場合は、自分は一度も結婚していないのに、向こうは少なくとも一度は結婚しておきながら、そのうえ他の異性とも関係を持つなんてけしからんという心理が働きやすい。

 もちろん、「自分は結婚できないのではなく、結婚しないだけ」と主張する未婚者も少なくないだろう。たしかに、お互いに不平・不満を募らせている夫婦は結構いるし、現在の婚姻制度が本当にそれぞれの個人に幸福をもたらすシステムなのかどうか、はなはだ疑問なので、あえて結婚しないという選択肢もあって当然だと思う。だが、そういう選択を主体的にしたにせよ、結婚しないことで周囲から責められているような未婚者からすれば、いったん婚姻制度の枠組内に入り社会から承認を得ておきながら、その一方で他の異性とも肉体関係と持つという既婚者の「享楽」は許しがたいのではないか。
 

大衆が「裁判官を装った復讐の鬼」と化す時

 既婚者が他人の不倫を徹底的に攻撃する場合は、羨望だけでなく自己正当化の欲望もしばしばからんでいる。夫婦生活において大切なこととされている誠実さが絶え間ない誘惑をしりぞけて初めて守られることは、既婚者であれば誰でも多かれ少なかれ経験しているはずだ。だからこそ、不倫願望を心の奥底に秘めていながら、我慢せざるを得ないとか、実行に移せないという人ほど、他人の不倫を激しく叩く。また、不倫という他人の「悪」を徹底的に攻撃することによって、自分にはそんな「悪」などないかのようなふりをすることもできる。とくに誠実であるべき責任を分かち合う配偶者の前で、他人の不倫を攻撃すれば、自分には不倫願望のようなやましい欲望などないのだと自己正当化できるわけである。

 ここで見逃せないのは、「不倫は悪」という正義を振りかざす大衆が、哲学者のニーチェが『道徳の系譜学』で指摘しているように「復讐を正義という美名で聖なるものにしようとしている」ことだ。彼らはまさに「裁判官を装った復讐の鬼」であり、「『正義』という言葉を、毒のある唾液のように絶えず口の中に蓄えている」。

 一体、何に対して復讐しようとしているのか?羨望の対象である有名人が手にしている成功、名声、富などを自分は手に入れられなかった過酷な運命に対してである。だからこそ、有名人の不倫が報じられると、これでもかというくらい激しく叩き、引きずりおろさないと気がすまない。

 ベッキーさんは活動休止に、宮崎謙介氏は議員辞職に、乙武洋匡氏は出馬断念に追い込まれた。このように引きずりおろしたいという欲望が満たされると、さすがにバッシングはおさまるようだ。川谷さんへの攻撃がなおも続いているのは、初の日本武道館公演を成功させ、ツアーも大盛況ということで、いまだに引きずりおろせないという不満が大衆の側にくすぶっているからではないだろうか。

 

★がついた記事は無料会員限定

記事へのコメント コメントする

コメントを書く

コメントの書き込みは、会員登録とログインをされてからご利用ください

おすすめの商品
  • ピクシブ文芸、はじまりました!
  • 文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作!
  • 無理しないけど、諦めない、自分の磨き方
  • 時短、シンプル、ナチュラルでハッピーになれる!
  • ビジネスパーソンのためのマーケティング・バイブル。
  • 有名料理ブロガー4名が同じテーマでお弁当を競作!
  • ドラマこそ、今を映すジャーナリズム!
  • 砂の塔 ~知りすぎた隣人[上]
  • 小林賢太郎作品一挙電子化!
  • あなたがたった一人のヒーローになるためには?
朝礼ざんまい詳細・購入ページへ(Amazon)
文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作!
ピクシブ文芸、はじまりました!
エキサイトeブックス
今だけ!プレゼント情報
かけこみ人生相談 お悩み募集中!