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地方から見えるもの

2013.11.11 公開 ツイート

第1回

30年後、あなたが買い物する場所は… 山崎亮

お爺さん、お婆さんになって郊外に行けるか


 このあたりで僕らは、将来についてよく考えなければならないだろう。郊外に広がった都市が再び小さくなっていく時代がくるわけだ。ところが、いつか気がついたら中心部の商店街が消滅していた、ということになっていいのだろうか。

 そういう時代がすぐにはこないとしても、今30代、40代である僕らが、お爺さん、お婆さんになった時はどうだろうか。30年後、僕らは郊外まで車を運転し、大型ショッピングセンターに行って、カートを押しながら5000㎡以上の広い敷地をぐるぐる回って買い物する、スーパーお爺ちゃんやお婆ちゃんになれるだろうか。

 もしかしたら30年、40年先にはネットが進化していて、ゴーグルのようなものをつけ、目で合図すれば商品が3時間後に届くような世界になっているかもしれない。でも、80代の僕はそんなシステムを使いこなせるかどうか不安だ。

 また、クリックして物が買えるとしても、買い物に行く楽しみはそれだけではない。知り合いと出会えたり、お店の人と世間話をしたりするのが楽しいから、自宅でゴーグルをかければ買い物が完了するとしても、知り合いがいそうな商店街へと買い物に行きたくなるだろう。高齢者がますます多くなる地域においては、知り合い同士が出会い、話をする機会がこれまで以上に重要視されるはずだ。そういう空間としての商店街が見直されることになるだろう。

 だが「商店街が復活できないのは仕方がない」という声は、当の商店街の人たちから聞こえることがある。とある商店街関係の人はこう嘆いていた。「今の年配のご主人は、勉強していない人が多いんです。過去に渡されたカタログだけ見て注文し、売れ残りの在庫をためて、商店街振興が足りないと行政に文句を言うだけ。商店街組合でイベントをしたり、若い人たちの考えを聞いたり、メルマガとかブログについて知ろうとしない。フェイスブックを使っている店主はほとんどいない。郊外の大型ショッピングセンターの店長のほうがよっぽど商売を勉強しています」。

 もちろん、シャッター商店街が元気になれない理由はそれだけではない。若い人が空き店舗で新しい店をオープンできれば少しずつ活気が出てくるのだが、現実には若者が空き店舗を借りて新たな店をオープンさせるのは難しい。そこには、弱った商店街に共通する構造上の問題が2つあると僕は思う。

(次回は12月8日頃公開予定です)

 

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山崎亮

1973年愛知県生まれ。コミュニティデザイナー。studio-L代表。京都造形芸術大学教授。東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科長(2014年4月開設)。地域の課題を地域に住む人たちと考え、解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、市民参加型のパークマネジメントに関するプロジェクトが、日本各地で多数進行中。『コミュニティデザインの時代 自分たちで「まち」をつくる』(中公新書)他、著書多数。現在、NHK総合「NEWS WEB」ネットナビゲーターを務める。

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