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2016.04.14

vol.2

ファースト・コンタクト(出産当日 その2)

三崎 亜記

ファースト・コンタクト(出産当日 その2)<br />

 

 なし崩しに緊急帝王切開になった妻ちゃんは、病院内のどことも知れない手術室に連行されていった。夫さんはお義母さんと二人で、病室で待つしかなかった。

「うーん、予想と違うなあ……」

 夫さんは、思わずそうつぶやいた。

 分娩室から赤ちゃんのか細い産声が聞こえてきて、「生まれましたよー」と助産師さんが笑顔で顔をのぞかせる。夫さんは、まだ羊水にまみれた赤ちゃんとファースト・コンタクトする……。

 そんな予想は、まるっきり裏切られた。

「あたしー、パパと、そんなありきたりな出逢いは、したくないのー」

 赤ちゃんが、お腹の中でそう言ってほくそ笑んでるのが見えるみたいだ。

「そんなサプライズ演出は、いらないんだけどなー……」

 夫さんは、ノイローゼになったオランウータンみたいに、狭い病室をぐるぐると歩き回ることしかできなかった。

 

「赤ちゃんだけ、先に戻ってきましたよー」

 看護師さんに声をかけられたのは、妻ちゃんが「強制連行」されていってから、一時間も経った頃だった。

 お義母さんと一緒に、病院の廊下で、赤ちゃんとの初対面を果たす。

「こりゃあ、出て来んばい……」

 それが、夫さんとお義母さんの第一声だった。

 生まれたての赤ちゃんって、触れたら壊れそうな、はかなくってか弱いイメージじゃないか。

 それなのに、目の前の赤ちゃんときたら……。

 夫さんが漫画家だったら、「ババーン!」とか「ドンっ!」とか効果音を入れただろう。どっしりとしていて、落ち着きはらった態度だ。すでに「ベテラン赤ちゃん」としてのオーラがにじみ出まくっている。

 

 3848グラム!

 

 赤ちゃん識別カードには、その数字が燦然と光り輝いている。予想していた3キロ未満という希望的観測とは大違いだった。

 お腹の中から無理やり引き出そうと吸引器を使ったせいで、頭のてっぺんは火山の噴火口みたいになっていて痛々しい。それでも赤ちゃんは、泣きもせずに、のほほーんとしている。

「あたしー、快適なお腹の中にいたのにー、ここはいったい、どこかしらー?」

 そんな様子で、のん気に周囲を見渡して、あくびなんかをしている。

 過積載違反のついでに、細身偽装っていう大罪を犯したせいで、ママは、お婆さんと赤ずきんちゃんを飲み込んだオオカミ状態で苦しんでいたっていうのに……。

 

「のほほんとしてるなあ……」

 

 我が家の娘、ノホホンとの、ファースト・コンタクトだった。

 十三日の金曜日、ついでに大安という、めでたいんだか不吉なんだかよくわからない日に、ノホホンは生まれた。

 

 

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