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2016.04.02

『神様のコドモ』試し読み第3回

「運命の赤い糸」が、
余命わずかな人に繋がっているとしたら?

山田 悠介

「運命の赤い糸」が、<br />余命わずかな人に繋がっているとしたら?
山田悠介『神様のコドモ

前回の物語にあったように、神様には、人間たちの「運命の赤い糸」がすべて見えています。
しかも自由自在です。
しかし、見えているからこその、悲しみもあるのです。
――どうして、この二人が赤い糸で結ばれてしまっているのだろう。
ふたりをつなぐ時間は、もうほとんどないのに――。
「神様の子」が、余命わずかな人間のために下した、心優しき決断とは?
今回は、涙を誘う物語です。
 

*  *  *

アカン糸

 運命、とやらは相当残酷なものらしい。

 なぜ僕は彼女の存在を知ってしまったのだろう。

 場所が場所だ。彼女との出会いは偶然ではなく必然だと思った。

 彼女の名は皆藤美里。二十九歳。北海道の阿寒という小さな町で暮らしている。

 彼女は末期のガンらしい。身体のあちこちにガンが転移しており残り僅わずか三ヶ月の命だそうだ。

 彼女は宣告を受けたばかりである。その場面を僕は見てしまった。

 病室に戻ってきた彼女はベッドの上で外の景色を眺めている。

 庭の木が風で大きく揺れる。

 ユラユラとダンスする緑の葉が一枚ヒュルリヒュルリと飛んでいった。

 あくまで僕は神様ではない。神様の子供だ。

 神は残酷なんだなあとつくづく思った。

 彼女はまだ二十九歳だ。死ぬにはあまりに早すぎる。

 もっと残酷なのは赤い糸だ。

 彼女の赤い糸が僕を悩ませる。

 彼女に与えられた時間は残り僅かであるが、彼女の小指には確かに一本だけ赤い糸が存在する。

 僕はすでに彼女の運命の人を知っている。糸を辿ると、隣町に住む野村正という人物に行き着いた。

 長身痩軀の真面目そうな男だ。

 彼は偶然にも彼女と同い年。

 どうやら彼は看護師として働いているらしい。

 僕は彼の職業を知って合点した。

 僕は未来のことは分からないけれど、彼が彼女の病院にやってくるのではないだろうか。

 僕は、二人を出会わせてしまっていいのだろうかと悩んでいる。

 実は野村正は彼女とは違って、小指には二本の赤い糸が存在するのだ。

 もう一人の運命の人物とは、札幌市内で保育士として働く二十五歳。

 僕はあえてそれ以上知ろうとは思わない。

 確かなのは、その彼女は病気ではないということだ。

 皆藤美里と野村正は確かに赤い糸で繫がっている。故に出会えば結ばれる運命だ。

 しかしその先に幸せはない。

 出会えば確実にお互い傷つく。そして苦しむ。

 皆藤美里はどちらを選択するだろうか。

 彼が運命の人だと知れば出会いたいと思うだろう。

 でも出会わない方を選択するのではないかと僕は思う。

 出会った直後に別れが訪れるなんてあまりに不幸だ。運命の人にそんな辛い想いをさせたくないと彼女は思うのではないだろうか。

 僕はハサミを手に取った。

 僕に迷いはない。

 はずだったが、なかなか糸を切ることができない。

 僕は最後まで迷った末、皆藤美里と野村正の運命の糸を切った。

 これでよかったんだと僕は思う。僕の選択に間違いはない。

 しかし僕には責任がある。彼女から運命の人を奪ってしまった責任を果たさなければならない。

 僕は彼女を見守ろうと思う。

 最期の瞬間を、看取ろうと思う。

 

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