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2016.04.10

小説で学ぶ営業マネジメント、組織で働く喜びを改めて実感(杉山大二郎『ザ・マネジメント』)

渋谷 和宏

小説で学ぶ営業マネジメント、組織で働く喜びを改めて実感(杉山大二郎『ザ・マネジメント』)

『営業を仕組み化し、部下のやる気を最大化する、最強のチーム創り ザ・マネジメント』杉山大二郎
小社刊/1400円(税別)

 

 私事で恐縮だが、若手向けのビジネス誌『日経ビジネスアソシエ』の創刊を準備していた頃、僕は折に触れて「人は何のために働くのだろう」と思いめぐらしたものだった。「お金のため? それだけではないだろう」「社会に居場所を見つけるため? 他にもまだ目的があるはずだ」。

 自問自答を繰り返し、見つけた答えは「なりたい自分になるため」だった。顧客に感謝される人材になる。部下に必要とされるリーダーになる─そんな風に未来の自分をイメージし、日々、成長を実感できたら仕事は喜びに変わるはずだと考えたのだ。

 そしてこうも思った。だとすれば組織の役割は個々人の成長を促すことにあるのではないか、個々人の成長が組織の飛躍につながる、それこそが社員と企業の理想の関係ではないか。ビジネスパーソンの成長に軸足を置いた『日経ビジネスアソシエ』のコンセプトはこうして生まれたのだった。

 いきなりこんな私事を書いたのにはもちろん理由がある。『営業を仕組み化し、部下のやる気を最大化する、最強のチーム創り ザ・マネジメント』を読了し、僕は久しく忘れていた当時の想いを再び実感できるようになったのだ。

 本書は、中小企業のマネジメント改革に尽力する主人公の視点を通して、営業マネジメントやリーダーの役割などを学べる小説仕立てのビジネス書だが、魅力はそれだけではない。働く喜びとは何なのかを改めて思い起こさせてくれる爽快な物語でもある。

 大手IT機器メーカーの販売代理店、ハピネスコンピュータの五十嵐卓也(東京営業部部長、40歳)は、社長の福永英治から、同社の有力な卸先で、先代からの付き合いがある大村事務機への出向を打診される。トップセールスマンだった五十嵐は部長就任後も予算を達成し続け、今や名実ともにハピネスコンピュータのエースだ。その実績と能力を活かして大村事務機の経営を立て直してほしいというのが福永の願いだった。

 大村事務機は従業員約50人の中小企業で、地域密着型の経営が強みだったが、創業者の三代目にあたる大村弘明専務が事実上のトップとして采配を振るようになってから業績が急速に悪化しており、もはや一刻の猶予もならないという。

 五十嵐は難しい仕事になると直感する。出向者の立場は微妙だし、パソコンなどIT機器の需要も低迷している。

 迷いを振り切り、大村事務機に出向した五十嵐は、時に大村専務に意見し、時にメーンバンクから送り込まれた財務部長とぶつかりながらも改革を進めていく。

 五十嵐が打ち出す取り組みは営業マネジメントの教科書でもある本書の読みどころの一つだ。部下を厳しく叱責するリーダーたちの言動を改めさせ、営業担当者一人ひとりに責任者としての仕事を割り振り、萎縮した空気に活力を吹き込む。顧客への提案内容や営業担当者の活動履歴などの営業プロセスを「見える化」する一方、攻略すべき顧客の優先順位を明確にしていく。「売れる営業マンを作るのではなく、営業マンが売れる仕組みを作る」五十嵐の改革は実践的かつ合理的で、示唆に富んでいる。

 加えて五十嵐の口を通して語られる、組織や仕事への深い洞察に満ちた言葉が「その通り」「なるほど」といちいち膝を打ちたくなるほど腑に落ちる。「営業マンにかぎらず、見せかけの仕事をさせられることほど、意欲を削ぐことはない」「営業マンの見るべき方向は、お客様のほうではなく、『お客さまが見ている方向』なんだろうな」。リコージャパンで営業マネジャーや人材開発部門などの統括責任者を務めた著者の豊かな経験に基づく言葉に、多くのビジネスパーソンは溜飲を下げるに違いない。

 物語終盤、大村事務機は存亡の危機に直面する。大村事務機の最重要顧客に対して、経営体力では大村事務機をはるかに上回る業界大手の事務機器販売会社が採算度外視の営業を仕掛け、最重要顧客を奪われかねない事態となったのだ。五十嵐たちの脳裏に倒産の二文字がよぎった時、これまで成果を上げられないでいた若手女子社員の秋元香乃が胸に温めていた画期的な営業提案のアイデアを披露する。それは顧客への価値提案を超えた、顧客との価値共創型の提案だった。五十嵐の改革によって香乃は働くモチベーションを取り戻し、成長を遂げていた。何よりも彼女は「なりたい自分」を見つけていたのだった。

 最後の一ページを読み終えた僕は爽やかな読後感を味わいながら「組織で働くのも悪くはないな」と改めて実感した。それは三十年勤めた出版社を退職して以来、久しく忘れていた思いだった。

『ポンツーン』2016年4月号より

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