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2016.03.16

「憂国の少年」が節約の原点

中川 淳一郎

「憂国の少年」が節約の原点

「見栄を捨て、自分だけの幸せを手に入れる。」のキャッチコピーとともに、3月10日に発売された、中川淳一郎さんの『節約する人に貧しい人はいない。』。「節約とは他人と比べないこと」と繰り返し説く、異色の節約本は、いかに生まれたのでしょうか? そして、中川さんの考える「節約道」とはどんなものなのでしょうか? 短期集中連載でお届けします。 


中学時代の水不足の恐怖で培われた「今あるものを守る」思想

 節約は、昔からの金銭感覚や、モノを大切にする気持ちから生まれるものである。私にとって一つの契機となったのが、1987年、中学2年生の夏の大渇水である。連日、「東京の水がめ、○○ダムの貯水率がついに10%を切りました」といった報道がされ、給水車が出た地域もあった。

 その時、私はこのままでは日本がおかしくなってしまうと考え、小さなところから節水を心がけなくてはいけないと思っていた。当時の中学生は水道水を飲むことが大好きだった。少し喉が渇けば水道水を飲み、体育や部活が終われば蛇口の前に行列を作り「早くしろよ!」なんてやっていた。

 私の通った中学校では、1階の外にある蛇口の水がなぜかウマいということになっていた。今から考えると学校全部で同じ水を使っているのだから特定の場所の水にウマいもマズいもないとは思うのだが、外にあるため、もしかしたら冷えていたのかもしれない。あと、夏であれば暑い中、まずは頭から水をかぶってから水を飲んでいたので、よりおいしく感じられたのだろう。

 当時、私は生徒会の会計担当だった。学校の水道代を下げなくてはいけないという誰からも頼まれていない使命を遂行するとともに、東京を渇水から守ることこそ重要だと考えた。そこで、この水道にプラスチック製のコップをヒモでつけることを提案した。そうすれば、水を飲むにしてもジャージャーとこぼれる水の量を減らすことができる。しかし、「他人が飲んだコップを使いまわすなんて汚いだろうが、バカ」と役員会のメンバー全員から言われ、あえなくこの案は実現の目を見なかった。

 また、自宅の風呂に水を張っていたところ、気付いたら水がジャージャーと溢れていた。慌てて蛇口を止め、少しでも有効活用とすべく、私は水面に口をつけ、水を飲み始めた。1リットルほど飲んで気持ち悪くなり、泣く泣く上から15cmほど分を排水したのだった。

 この時の感覚が、私の中で今に至るまで続いているのだろう。水がなくなるという恐怖体験をし、少しでも今あるものは守らなくてはいけないという考え方の基礎が生まれ、カネとモノに対して臆病な人生が開始したのである。


「いい年して」の「いい年」とは何歳なのか?

 昨今「タレント医師」として知られる脇坂英理子がホストクラブで一晩900万円を使ったとかいう話にはバカだな、としか思わないし、私はキャバクラにすら行かない。ホストクラブ好きやキャバクラ好きの皆様方を否定するわけではないのだが、どう考えても素人の美人とサシで飲む方が楽しいと感じてしまうのである。

『節約する人に貧しい人はいない。』の最後には、小学生時代から大学にかけて培った金銭感覚について記した。その時に培われた感覚は一生ものだからである。また、本書で私が述べている「収入が上がったとしても金銭感覚は変えなくてもいい」「別にいいものを身に付けなくてもいい」という考え方は、一部の人からは反発を持たれているようである。曰く「いい年して安い服着てるのはみっともない。他人はアンタのことをせせら笑ってるよ」や「教養がないと思われる」「舌は肥えていくもの。ある程度の年齢で食事にカネを使わないのはみっともない」といったことである。さらには「女は細部を見ているよ」といった意見もある。

 しかし、私はこれらの意見すべてについて、「別に本人がよければそれでいいんじゃないの」としか言うことはない。私が普段から安い格好をしていることを陰で揶揄されているのであるなら、それは構わないし、揶揄するような人とは別に付き合わなければいいとも考えている。だからこそ「いい年して…」みたいな話をされると、まさに「『いい年』とか勝手に基準を作ることがムダなんだよ」と感じてしまい、ここで話は噛み合わなくなる。

 なぜ、「いい年して」という言葉はあるのか。そもそも「いい年」とは何歳なのか? 「いい年してアイドルファンでいて」「いい年して安いメシばかり食べて」「いい年して家の一つも持っていなくて」「いい年して結婚もせず」――いずれも批判的な文脈で使われるとともに、「ある年齢に到達したらこのように行動せよ」という規範大好きニイチャン的風情がプンプンただよってきて、そういう人とはあまり付き合いたくないな、なんて思ってしまうのだった。

 ここまで見てきたように、金銭感覚とは、議論を巻き起こす。恋人同士、夫婦間でも金銭感覚が違い過ぎるとロクなことにならない。「相性がいい」とは、往々にして「金銭感覚が合う」でもある。飲み会で選ぶ場所にしても、一緒に行く旅行で選ぶホテルにしても、互いに心地の良い金額であれば楽しい時間になることだろう。いちいち「えっ、このホテル高過ぎ……」や「えっ、こんな安っぽい店に行くの……」みたいなことを考えていては飲み会も旅行も楽しくならないものである。幼少期から培われた金銭感覚を見ることにより、相性の良いパートナーを見つけられることだろう。

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関連書籍

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