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2016.02.23

第7回

ニューヨークから世界に広がったクロナッツのブームは、ニッチなターゲティングから始まった。

りばてぃ

ニューヨークから世界に広がったクロナッツのブームは、ニッチなターゲティングから始まった。

人気ブログ「ニューヨークの遊び方」の著者で、マーケティング・コンサルタントの「りばてぃ」さん。今回は「ニッチからマスへ」という成長スパイラルの影響下において、どのような考え方がトレンド拡大のキーポイントになるか、具体例をあげて解説します。

「ニッチからマスへ」という成長スパイラルにおいて、特に重要なのは、いきなり、マス市場を狙わないということだ。そりゃそうだ。これだけ多種多様な人々が集まっている「多様性」の街・ニューヨークで、最初から、みんなに売れるものなんて滅多にない。

赤字を出しながらでもマス市場を狙い続けられるほど、莫大な資本力を持つ超巨大企業なら話は別だが、多くの普通の企業の場合、「多様性」溢れる消費市場では、最初から、マス市場を相手にしようとすると、なかなか期待したほどの成果は出ない。

最初からマス市場を狙おうとすると、誰に向けてアピールしているのか、商品やサービスの何が魅力なのか、さらには、何をやったらいいのか、あるいは何をやっているのかすら、よく分からない状態になったりもする。

だから、それよりもむしろ、最初のうちはニッチな市場に集中し、熱烈なファンや支持者を確実に獲得し、徐々に増やしていくことを目指すことになる。

そして、そのためには、他にはない個性や独創性を磨いて、その魅力をちゃんと伝えていくことが重要になる。

カップケーキにパンケーキ、ハンバーガーにロブスターロール、ラーメン、そして今度はうどん!? あるいは、無数に生まれてくるファッション・トレンド。そして、公園を中心に広がる近年のニューヨークの都市再開発。この連載の第2回目「ニューヨークでは何が流行っているの? 流行がいっぱいのニューヨーク」で例に挙げた衣食住に関わる多種多様な流行も、どれも最初はニッチをターゲットにしたものばかりだ。

「ニッチをターゲットにして、本当にうまくいくの?」とか、「最初からある程度の売上げが見込めないと無理じゃない?」などと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれない。

分かりやすい最新の事例を1つご紹介しよう。クロナッツ®(Cronut®)の例だ。

ドミニク・アンセル・ベーカリーのクロナッツ

クロナッツとは、クロワッサン生地のドーナッツ。クロワッサンのように外側はカリッと、中身はミルフィーユ状になっており、高級ドーナツのコシのあるモチモチ感も楽しめるという新食感のハイブリッド・スイーツ。値段は1つ5ドル。

考案したのは、ドミニク・アンセル(Dominique Ansel)さん。

アンセルさんは、100年以上の歴史を持つパリの老舗「フォション」(Fauchon)に7年、ニューヨークのミシュラン3つ星レストラン「ダニエル」(Daniel)に6年も勤めた達人ペイストリー・シェフ。2009年には業界誌「デザート・プロフェッショナル・マガジン」で「全米トップ・ペイストリー・シェフ10人」にも選ばれている。

そんなアンセルさんは、2011年11月、ニューヨークのSoHoに「ドミニク・アンセル・ベーカリー」(Dominique Ansel Bakery)という、小さなベーカリー・カフェをオープン。ごくごく普通の小さなベーカリー・カフェだが、2013年春頃に、オリジナル商品のクロナッツが大ブレイクする。

朝8時の開店時間の1時間前から、クロナッツを買い求めるお客が、店頭に行列を作るようになり(しかも、一人2個までしか買えないという数量制限もできた)、全米、全世界の各種メディアで大きな話題になった。うちのブログで取り上げた記事*1にも、その後1年ほどの間に写真の使用許可依頼が日本全国の各種メディア数十社ほどから寄せられた。

朝8時のDominique Ansel Bakery前は長蛇の列

2013年夏頃には、ニューヨークに、本人の代わりにクロナッツを買ってくるという代行サービスも登場。その料金は、クロナッツ1つ数十ドルから最大100ドル!!にも達した。

こんな話を聞くと、さぞかし多くのクロナッツが売れたのではないかと思われるだろう。

しかし、この大ブレイク中、ドミニク・アンセル・ベーカリーで1日に作っていたクロナッツの数は、たったの200個だった。小さなベーカリー・カフェのためオーブンも小さく、他の商品も作っていたので、クロナッツは1日200個までしか生産できなかったのだ。

あれだけ売れていれば、どこかのオーブンを借りて生産数を増やすことも、当然、可能だったはずだが、アンセルさんはそうしなかった。

作れる数が少ないということは、必然的に、ニッチな消費市場をターゲットにするという判断になる。

それでうまくいくのか?

うまくいく。ドミニク・アンセル・ベーカリーは、むしろ、ニッチな市場で、熱烈なファンや支持者を増やす道を選択し、その結果、さらに大きくブレイクした。マス市場を狙って生産量を増やすのではなく、自分たちにしか作れない独創的で個性的なオリジナル商品の品質管理や新商品の開発に集中。その姿勢が、このお店自体の評価をますます高めることになった。

しかも、その名声やブランド・イメージは、全米、全世界に広がった。

日本国内にも、その影響は及んでいる。

例えば、2014年4月1日から、日本国内のミスタードーナツが、ミスド版クロナッツの販売を開始すると、わずか6日で100万個を売上げてニュースに*2

さらに、同年5月13日から、今度は日本国内のローソンが、全国の店舗でローソン版クロナッツの販売を開始すると、わずか3週間で累計340万個を突破する爆発的な売上げを記録。これは、ローソンで販売されたクロワッサンとドーナツ関連商品の中で、1975年から歴代第1位の売上げだという*3

まさに「ニッチからマスへ」

こうしてニューヨークの街角にある小さなベーカリー・カフェは、世界の名店の1つになった。一度、これだけの名声やブランド・イメージが確立されれば、その後、何を仕掛けても、がっしりと心をつかまれたファンや支持者はもちろん、各種メディアも注目してくれる。

実際に、ドミニク・アンセル・ベーカリーでは、その後、フローズン・スモア(Frozen S’more)*4 など、いくつもの独創的でユニークな新商品を発表しているが、その都度、各種メディアで話題になっている。

「ニッチからマスへ」という考え方が、ニューヨークのような「多様性」溢れる消費市場では、いかに重要かということが、なんとなくにでもお分かりいただけただろうか?

これでもまだ「イマイチまだピンとこないなぁ」とか、「ニューヨークの市場特性はなんとなく分かったけど、でも、最初から大量に売れないと本社がやらせてくれないんですよ」などという方もいらっしゃるだろう。

なぜなら、日本国内では、ニッチなマーケットを狙うより、大勢の人々が買い求める、大衆ウケする「流行」の品々や「売れ筋」を追随したり、便乗すれば売れるという考え方が昔から広く定着しているためだ。

なぜ、こういう発想になりがちなのか。その点を次回では日本国内の状況とあわせて考えてみたい。

*1 著者ブログ記事 http://nyliberty.exblog.jp/20560071
*2 著者ブログ記事 http://nyliberty.exblog.jp/22486593

*3 著者ブログ記事 http://nyliberty.exblog.jp/22764536
*4 著者ブログ記事 
http://nyliberty.exblog.jp/23008046

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