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2016.02.15

第3回

イケメンは尻で箸を割るか

瀧波 ユカリ

イケメンは尻で箸を割るか

「たけなわ期」を生きる全ての女性必読! 瀧波ユカリさんの文庫最新刊『女もたけなわ』(2月9日発売)より、試し読みをお届けします!


 私はイケメンにとんと興味がない。むしろ、顔のいい男なんか相手にしたくないとまで思っている。
 昔は違った。20歳のころまでは、街を歩けばすれ違う男の顔をくまなくチェックし、電車内で好みの顔を発見したら「声をかけようか……」と悶々としたものであった(声をかけてどうするつもりだったのか……かけなくてよかった)。友達の彼氏のチェックポイントも、まずは顔だった。顔のいい男を落とした者こそ勝者であった。
 しかし、変化は徐々に、思わぬところから訪れた。イケメン自体が身の回りから減っていったのだ。ある者は急に太りだし、ある者は就職活動のために髪型を改めたらただのオッサンになり、またある者はヒゲが濃くなるのに反比例して髪が薄くなった。彼らはイケメンとしては死んだも同然となり、その悲劇が起きるたびに私と友人は嘆き、失望し、時に腹を抱えて笑った。落ち武者ならぬ落ちイケメンたちは、自分がもうかっこよくないことにうすうす気付いていても「イケメン然」とした態度はなかなか抜けていなかったりして、それがまた痛々しかった。そのように絶対数が減少したので、顔がいい男にこだわろうにもこだわれなくなり、顔が別によくない男にも目を向けるようになった。みんなが日本米をあきらめてタイ米を選んだ、昔のコメ不足のときのように。
 そしてイケメンから興味を失う決め手となったのは、「イケメンは面白くない」という事実だった。彼らは場を盛り上げるために、尻で割り箸を割ったりしない。口で食べたうどんを鼻から出したりもしない。別にそんな汚い芸をする男に惚れる趣味はないが、いざという時にそういうことをできる男の器の大きさや面白みを知ってしまうと、観客にまわって笑っているだけのイケメンたちが心底つまらない人間に思えてしまう。しかしそれも詮ないこと。彼らは幼少のみぎりから、ニコニコと笑っているだけでもてはやされて生きてきたのだ。周りが当然のように自分を好きになってくれる環境で育ったせいで、わざわざ面白い人間になろうなどと思う必要がなかったのだろう。
 言ってみれば、尻で割り箸を割っている奴は、人々に愛されるために尻で割り箸を割るしかなかったのだ。見かけだけで勝負できなかった男が身につけた愛され術なのだ。どちらの人生にも哀しみがあるが、顔がいいせいで面白くなれなかった程度の哀しみに同情するほど、私は優しくはない。かくして、私はいざというときに尻で割り箸を割れる系の男のほうに惚れるようになった。
 だったら、尻で割り箸割っちゃうイケメンがいたらどうなのよ?ということになると思うが、それこそ勘弁してほしい。かっこいい顔で生まれてきたことだけで十分だろうに、かっこよくない男たちのシマまで荒らそうとするのか。欲深いにも程がある。しかもその心がけは「俺って顔でばっか判断されがちだけど、こういうこともできちゃったりするんだよね」ってアピールしたいだけのライトなものであったりするのだ。それはちょっと、ずるいじゃないか。結局、「顔もいいけど面白い」になりたいのであって、ただの「面白い」になりたいわけではないのだ。そんな奴を認めるわけにはいかない。どうしても尻で割り箸を割りたいなら、顔をかっこ悪く変えてからにしてほしい。
 そんなわけで、私は今後もイケメンと距離を置いて生きていくだろう。と言っても、周りにいた同年代のイケメンはほぼ絶滅してしまったのだけれど。「顔がよくないと付き合わない」とか言ってる恋活・婚活中のアラサー女子は、稀少なイケメン探しに疲れてしまう前にぜひ「尻箸系男子」や「鼻うどん系男子」にも目を向けてみてくださいね!
 

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長い女の一生で、恋に仕事に遊びに全力で取り組む時間と体力があり、最高に盛り上がっている時期が、女の「たけなわ」。でも「たけなわ期」は、恥をかいたり、後悔したり、落ち込んだりの連続。そんな茨のたけなわ期を滑って転んでを繰り返しながら突っ走って見えてきたのは……。煩悩を笑い飛ばす、生きるヒント満載の反面教師的エッセイ。

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