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2016.01.07

第6回

放牧教育論

篠原 信一

放牧教育論

 僕が勉強のできない子どもだったということは、これまで何度も書いてきました。

 一応大学まで行かせてもらったんで、ずいぶん長いこと勉強というものが近くにあったわけですが、教室で何かを学んで面白いと思ったことは、ただの一度もありませんでした。

 考えてみれば両親から「勉強しろ」と言われた記憶もない。両親も僕も、学校を勉強するところだと思っていなかったんです。給食を美味しく食べて、友達と仲良く楽しく過ごせばいい。そんな場所だと考えていました。

 そうやって大人になった僕が、自分に子どもができたからといって、急に「勉強せえよ」と言うはずはありません。

 得意科目は給食でよし。友達と元気に遊んでこられたなら、それでオッケー。まあ、帰ってきたら宿題くらいはやれよと言うくらいです。

 大人になってから勉強しておけばよかったと後悔したことがないかというと、こんな僕でも多少はあります。柔道で海外遠征に行った時は、英語をしゃべれたら楽しかったのにと思いましたし、テレビのクイズ番組で漢字問題が解けなかったりすると、国語くらいはちゃんとやっとけばよかったと考えたりします。

 でも普段の生活や仕事においてはまったく困ることはありません。言いすぎかもしれませんが、学校で習った何かが役に立ったこともないんです。

 子どもたちが将来何をしたいかにもよりますが、僕はこの先もうちの4人に「勉強せえ」と言うことはないと思います。

 そもそも子どもに向かって何々をしろという考えが僕にはほとんどありません。

 家の中でワイワイと楽しそうにしている子どもたちを見ていて、僕は子育てって放牧みたいなもんやなと思うことがあります。

 この牧場にはそれなりに美味しいエサを用意してある。食べたい時に食べたらいい。

 そしてお腹がいっぱいになったら遊んでこい。好きなところで好きなように過ごしたらいい。たまには身体も動かした方がいい。

 でも時間が来たら、ちゃんと戻ってこいよ、と。

 野放しと言えば野放しです。放牧ですからそういうことになります。

 でも柵はあるんです。

 普段はことさら柵に注意しろとは言わないし、端っこにあるからよく見えないかもしれないけれど、柵は確実にある。そこから出ることは、子どものあなたには許しませんよということです。その代わり柵の中にいるうちは安全は守りますよと。

 柵に当たるのは我が家で言えば「人に迷惑をかけるな」や「噓をつくな」という、人としての基本的なルールです。

 たとえば息子が人様の家に石を投げてガラスを割ってしまった時のことです。

 その日のうちに息子から「ガラス割った」と聞いた時、僕は怒りませんでした。正直に言ってきたんやから、僕にとっては問題ない。人様の迷惑という意味ではアウトですが、あくまで柵の中の出来事だと捉えます。

「家に投げるのは危ない。次にどうしても石を投げたくなったら川に向かって投げろ」

 そして嫁さんにはすぐにお菓子を持って謝りに行かせたんです。

 息子が自分から言ってくる前にどこかから「ガラスを割った」と聞いた時は、「なんで言わへんねん」と叱りました。そこでごちゃごちゃ言い訳をしようものなら、拳を一発ということもありました。

 ここは柵なんだからお前が越えてはいけないんだということを教えたわけです。

 柵の中でのびのびと元気に育っていったら、そのうち自分が何をしたいか、自分には何が向いているのかは見えてくるはずです。だから僕から将来はこんなふうになってほしいと話をすることも一切ありません。

 男の子は3人とも柔道をやっているのですが、彼に「柔道のことを教えてほしい」と言われても、僕は「道場の先生に聞け」としか言いません。

 僕は息子の柔道をたまにしか見ないけれど、先生は毎日見てくれている。毎日見てくれている人の意見に従う方が絶対に正しいと思うからです。

 自分のようにオリンピックを目指せる選手になってほしいとはまったく思っていないからでもあります。

 子どもたちが成長して、うちの牧場は狭くて邪魔くさいなと思うようになったら、柵の外に出て行きたいと願うでしょう。

 僕としても外に出してももう大丈夫やろうと思えたら、「はよ出てけ」と言うはずです。

 お父さんはこの牧場で楽しくやってるから、たまには遊びに来いよ。

 お前もそのうち自分の牧場を作れよ。

 牧場にはいろんなことが起きるけど、他のどこにもない喜びや楽しみがあるぞ、と。

 子どもに限らず人の育て方というのは、いろんな方法があるんだと思います。

 でも勉強もせずに柔道ばっかりしてきた僕にできるのは、こんな放牧教育です。

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