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2006.09.01

最終回

“イイ女”の生き方

壇 れみ

“イイ女”の生き方

  今回で、この「銀座、イイ女入門」もいよいよ最終回を迎えることとなりました。
 皆さん、今まで読んでくださって本当にどうもありがとうございました。
 短大を卒業し、さまざまな社会経験を経て、銀座のホステスになったのは、三十一歳の時のことです。あれから二年の月日が流れ、私、じつは現在三十三歳になるのであります。
 いやぁ~、結構、いい歳ですみません。銀座では二十八歳でずっと通していましたが、罪ではありません。銀座法では五歳までサバをよんでいいことになっているのです。
 私はもともと、年齢なんて偽る気持ちはありませんでした。だけど、周りのホステス達に、「私、二十歳ですぅ」とか、「私、あまり言いたくないけど、結構いってて……二十六歳なのぉ」なんて、隣で言われてしまうと、思わず息を呑んでしまうのです。お客サマの酔いを冷まさないための配慮は、ホステスの義務かとも思った。郷に入っては郷に従え、という言葉もあったなぁ。
 実際、三十一歳の新人ホステスなんて、ほとんどと言っていいほどいないわけです。
 初めて銀座のクラブを訪れた時のことは今でもはっきりと憶えている。豪華なインテリアとピアノの音色のなかで、瀟酒なスーツ姿の客と着飾ったホステス達が高級な酒を飲み、会話を楽しんでいる光景は、あまりにも華やかで、まさに別世界を見たといった感じだった。ドア一枚を隔てた向こうに、こんな場所があったのだと知り、私は単純に、その華やかさに魅かれてしまったわけです。
 あれから二年――。連載の最終回にあたり、これまでの銀座ライフを振り返ってみると、楽しいことや嬉しいことはじつに沢山ありました。でも、それと同じくらい失敗や嘆きや悲しみがあり、その度に悩み、挫折感を味わったことも多々あります。
 またそれは、銀座のクラブを訪れるお客サマにも言えることなのです。人生には、誰しも躓くことがあるもので、二年間を過ごすあいだには、環境が変わったり、姿を見かけなくなる方も少なくはなかった。
 銀座のクラブは華やかであればあるほど、悲しみもまた、深く感じられる場所のように思うのです。
 だけど、悲しみとは結構味わい深いもので、あの時、立ち止まって考えたことが、この幸せをもたらしているんだなぁ、と後になってつくづく感じることがあったりする。
 倒れては立ち上がり、立ち止まっては歩き出す――。私にとって夜の銀座は、そんな日々の繰り返しでした。
 今、これまで失敗や挫折から立ち直ったことは、すべて自信につながっているように感じられています。楽しかったことよりも、むしろそのことのほうが、私にとっては生きていく力になっているのかもしれません。
 人生は、何が起こるかわからない。私も、いつまで銀座にいるのかは、わかりません。
 でも、どこへ行っても大丈夫かな、と思えるのは、失敗がチャンスでもあるのだということを知ったからなのです。へこたれていては、勿体ないのだということを、私は銀座で学んだように思う。
 この先、何があっても、強く、逞しく、明るく生きていきたい。転んでも、ただじゃ起きない意気込みで? それこそ、“イイ女”の生き方だと、私は思うのであります。
 

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