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2016.01.05

<領域国民国家システムの問題点>

難民問題が“先進国”に突きつけたもの

中田 考

難民問題が“先進国”に突きつけたもの

命がけの逃避行の前に立ちふさがる国境問題

 2015年の最大の事件は、9月初めにトルコ海岸に漂着した溺死したシリア難民の子供アイラン君の写真が世界の新聞その他のメディアで一斉に報じられたことによる「難民問題」の可視化です。

「難民問題」自体は、それ以前から存在しており、トルコの約200万人を中心にシリア難民だけでも400万人近くが周辺諸国の流出していました。それらの国には既にイラク難民、パレスチナ難民があふれていました。さらに遡るならアフガニスタンの内戦では1千万人に近い難民が発生し、隣国イラン、パキスタンは300~500万人のアフガン難民を抱えていました。

 ですから、「事件」は、「難民問題」ではなく、いわゆる「国際社会」、あるいは欧米における「難民問題」の「可視化」です。実は、アイラン君の写真が一挙に拡散したのには背景があります。

 2015年になって、悪徳業者によって定員をはるかに超える人数を詰め込まれた「難民船」がリビアやアフリカ諸国から地中海をわたってイタリアやギリシアなどヨーロッパに向かう途中で難破し、時には数百人にのぼる溺死者を出す事件が急増し問題となっていたのでした。それに加えてアメリカを中心とする有志連合の空爆開始がシリア情勢を悪化させたことにより、トルコを通って東欧からドイツ、北欧を目指すシリア難民が急増したのが、「難民問題」「可視化」の背景です。

 つまり「難民問題」とは、人間の移動を妨げようとする欧米の視点によるものであり、難民の立場からすると、戦乱を逃れての命がけの逃避行の前に国境が障壁として立ちふさがっていること、すなわち「国境問題」に他なりません。人類が平等であり、人間の移住が基本的人権であると信ずるなら、どちらの視点に立つべきかは、自明でしょう。
 

“国際秩序”の矛盾を見つめ直すとき

 西洋はこれまで、…

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