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2016.01.04

3・11から5年目にやるべき仕事

『福島第一原発廃炉図鑑』が埋める「空白」

開沼 博

『福島第一原発廃炉図鑑』が埋める「空白」

◆原子炉建屋も周辺グルメも放射線も全て入った「批評」の本

 いま一冊の本を作っている。それは「福島第一原発の廃炉」についての本で『福島第一原発廃炉図鑑』というタイトルにする予定だ。3・11から5年たった2016年に成し遂げなければならない仕事だと思っている。

 この本は批評の本だ。政治批評であり、社会批評であり、文化批評であり、他の様々な分野における「いま、そこに存在する言葉のあり方について考える」ことを目的とする。

 そこには「福島第一原発廃炉」の現状が描かれる。事故を起こした原子炉建屋、汚染水が入ったタンク、労働環境、あるいは、福島第一原発周辺地域のグルメ案内やサーフィンスポットといった町の状況。当然、放射線のことも。

 これのどこが批評と結びつくのだろうかと、疑問に持つ人がいるのは当然だろう。そして、なぜあえていま「批評の本を作る」などと宣言してみるのか分からないという人が大部分だろう。

 そこには3・11から5年が経つ現在における、私自身の問題意識がある。批評の言葉や批評的な態度がなければ社会は健全なダイナミズムを失い、新たな世界観を作り続けることが困難になるのではないか。この危機感が私の問題意識だ。

 狭い意味での「批評」は、「もはや誰にも読まれていない」と形容しても過言ではないくらい、限られた媒体において展開される、間口の狭い読者に向けたものとなっている。かつてのような文芸批評の本などほとんど刊行されない状況があるし、00年代に活気づいたコンテンツ批評にも一時期ほどの勢いはない。また政治なりなんなりの時事的な批評も、どれだけ求められているのか。「批評家」や「評論家」という言葉自体が、「あいつは批評ばかりだ」とか「評論家みたいな人はいらない」といった、ネガティブな文脈で使われるようになっていることに見られるように、多くの人にとって「批評など不要なもの」になっているのは事実だろう。

 しかし、それでいいのか。

 批評の言葉や批評的な態度が必要なのは、それが様々なところに存在する「言葉の空白地帯」を埋め、あるいは、放っておけば固定化する言葉を解きほぐし、社会にダイナミズムをもたらすからだ。語られるべきなのに語られていない言葉の空白地帯が目の前に現れたり、同じような話・ステレオタイプなものの見方の中で言葉が固定化したりして膠着状態になったとき、批評は既存の秩序を刷新し、隘路に陥った私たちの認識や社会のあり方を刺激し、変化を促す力を持つ。

 それは、「周縁にあるとされているものを中心に位置づけ直す作業」だとも換言できるだろう。言うまでもなく、批評とは何かを否定して潰し再起不能にする作業ではない。存在意義を認められていなかったり、一段下のものと思われていたりするようなものにこそ価値があることを示し、新たな世界観を提示する。その創造的な側面にこそ批評の真髄はある。例えば、音楽批評はジャズを、コンテンツ批評は萌え系アニメを中心に位置づけ直し、それまで無視されたり、蔑まれたりしていたものの中にこそ社会の先端があることを示し、これらはいまや周縁にあるものではなくなっている。私たちの多くは、批評の力による「世界観の転覆」の中に、知らぬ間に巻き込まれながら生きていくことを免れえない。

◆言葉が溢れかえる中で語られない「空白」

 だが現在、批評の力が失われている。それは先に述べたような狭い意味での批評だけではなく、広い意味での批評の言葉や批評的な態度においてもだ。

 3・11以後の思想と向き合ってきた私は、

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