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2016.01.01

2016年の課題

無人島をどう生き延びるか?

國分 功一郎

無人島をどう生き延びるか?

■三つの奇妙な体験

 幼い頃、とても奇妙な経験をしたのをよく覚えている。幼稚園に入るか入らないかぐらいの年齢であったと思う。一年に数度しか会うことができない友達がいた。家がかなり離れていたのだが、母親同士が仲が良かったのでたまに会って一緒に遊んだ。何をしたのかは全く覚えていないが、おそらく一日中一緒にいて、夕方には「バイバイ」と言って別れた。

 奇妙な経験は毎回その後に起こった。彼はそうして私と別れた後、おそらくは電車で自宅に戻り、そこでいつも通りに生活を続けたはずである。ところが、当時の私には、離れたところでその彼が生きていて、生活を続けていることがどうしても信じられなかった。頭では彼がそうしていることは分かっている。だからまた数ヶ月後には会えるのだ。しかし、どうしてもそのことが信じられない。正確に言うと、自分の見えないところで彼の生活している姿が想像できなかった。自分の目には見えていないところで、彼が存在し続けているということの意味がよく分からなかったのである。

 大学で学生たちにこの話をしたことがあった。学生の一人が、自分にも似たような経験があると言った。中学生の頃の話だというが、彼は夕方暗くなってから団地を眺めている時、明かりがついているそのそれぞれの窓の奥で人が生活しているということがうまく信じられなかったという。団地で明かりがついているのならば、おそらくはそこには人が住んでいるのである。もちろん彼もそのことは頭では分かっている。しかし、それがうまく信じられない。

 もう一つ、こんな話を聞いたことがある。フランスのストラスブールという街に留学した時、最初の一ヶ月、ホームステイをしたのだが、そこで偶然、日本人留学生と一緒になった。彼はもう一年ばかりその家に住んでいたのだが、大変興味深い話をしてくれた。彼はとある事情から、フランス語が全くできない状態でここに来ることになった。家の人が言っていることも、テレビで語られていることも、新聞に書いてあることも何一つ分からない。そんな中で毎日、バスに乗って語学学校に通った。するとどうなるか。「世界が家とバス路と語学学校だけになっていくんだよ」と彼は言っていた。

■「世界のイメージ」はどのように発生し、変化し、崩壊するか

 これらのエピソードに共通しているのは、…

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