7年間の地獄から抜け出せた喜び

 私個人の2015年の最も大きな出来事は、介護事業から逃げることに成功したことだ。文筆業を諦めて2008年から都内近郊でお泊りデイサービスを運営していたが、奇跡的に譲渡先が見つかり、2015年3月31日付で廃止届を受理されて一切の関係を断つことができた。

 介護にかかわった7年間は、思いだしたくもない生き地獄だった。

 私がそれまで居場所としていたAV業界や風俗業界は社会的に“底辺”と呼ばれる業種であり、私自身も何度か身が危ないことは経験したが、介護業界はその世界を遥か超越する壊れた世界だった。

 結果的にほぼ無傷で誰にも迷惑をかけることなく、介護業界とかかわりを断てたことは、長年の夢であり希望であり、無事に4月1日を迎えたときは歓喜の声をあげた。著書がベストセラーになったことより、30年間以上応援するヤクルトスワローズが優勝したことより、地獄から抜けだしたことの方が嬉しかった。

 幻冬舎plus「ルポ中年童貞」で介護施設を運営する私に降り注いだ災難の一部は書いたが、中年童貞を筆頭に、サイコパス、ヤクザ、精神異常者、ブラック企業、ベンチャー企業が仕掛けるポエム、詐欺的なビジネスの横行などなど、社会から弾かれて生活保護の代替として介護に流れてきた人々や、介護という社会問題に群がって手段を選ばずに売名と儲けに走る悪徳社会起業家や介護ベンチャー企業に毎日振りまわされた。

 2010年頃。深刻なサイコパスのストーカー被害に遭ったことで、選択した道を間違えたと確信した時期は何度か自殺も考えたほど追いつめられた。介護から逃げることを決めて、会社の解散準備をしていた最後の最後にも、ベテラン介護福祉士が地域で売春騒動を起こし、施設の責任者の精神がおかしくなるという有様だった。

 私が介護業界とのかかわりを断てた記念日である2015年4月1日、介護保険法の改正で歴史的な介護報酬減が決行された。限度を超えた人手不足が社会問題になり、介護職の賃金が安いことが諸悪の根源と散々議論されていたはずだが、政府は特養老人ホーム6%、小規模デイサービス9.8%と凄まじい減額を実行している。介護保険事業所を管轄する厚生労働省は荒れ果てる介護現場を知り尽くしているはずであり、いくら財源がないとはいえ、絶望的な状況に拍車がかかるこの政策には正直驚いた。

 介護職は生かさず殺さずどころか、“最低限生存できるくらいの賃金まで下げるよ”という国の意思表示であり、介護職の人たちはおそらくもう人並みの生活ができることはないはずだ。

 そして限界を超えた人手不足はさらに深刻になり、介護業界が長年指標にした2025年問題は目前となっている。人口の4人に1人が後期高齢者となる2025年までに(日本人で)介護職員を100万人増やすことは実質不可能となった。厚生労働省は38万人が足りない、と発表したが、それは都道府県の介護職増員の政策目標がすべて達成された見込みを含んだ数字で、実際は100万人が足りないという危機的な状況が実態なのだ。


国は介護業界と高齢者を棄てた

 2016年に向けて私が言いたいのは、介護という社会保障はもう破綻したということだ。実態のない美辞麗句でごまかすのではなく、…

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